最後をどこで、誰と暮らす? 「ついの住まい」早めの対策を

読者会議メンバーのご自宅を専門家が診断

2020.03.21

 人生の後半を誰と、どこで過ごしますか? 団塊世代が後期高齢者となる2025年以降には、病院や施設に入れず自宅で暮らさざるを得ない「介護難民」が増えるとも言われています。自分に合う住み方を探すことは、生き方を決めること。朝日新聞Reライフプロジェクトは、「終の住まい」について、読者と専門家とともに考えました。

 近年、老人ホームやサービス付き高齢者住宅など「高齢期の住まい」のあり方は多様化している。一方で今も、高齢者の9割は自宅に住む。要介護認定者でも在宅が8割を超えるほどだ。そこで今回、専門家に2人の読者モニター宅を訪問してもらい、「長く住み続けるために、どこを改善・改修すればいいか」の診断をしてもらった。

 「診断」を委託したのは、介護・医療コンサルティング会社「メディヴァ」(大石佳能子代表)の理学療法士、鈴木勝也さんと三浦貴子さん。鈴木さんにポイントを解説してもらった。

 一口に高齢者と言っても、元気な人から要介護の人まで幅広い。鈴木さんによれば、高齢期を大きく3段階で考えると良いという。「アクティブ期(1日1回外出し、仕事や趣味に取り組む元気がある)」「フレイル期(疲れやすく、歩く速さが遅くなった)」「要介護期(要支援、要介護認定を受けている)」。「各段階で必要な、予防・快適・自立の措置をとることが重要」と鈴木さんは説く。ポイントは「判断力や対応力がある元気なうちに住環境と生活習慣を見直すことで、要介護状態になっても対応しやすくなる。早め早めの対応が、できる限り自宅で快適に住み続けるコツ」。「いつまで自宅に住めるか、考えることが重要。様々な制約があるが、できること・できないことは何かの見極めを早い段階で行うと、より選択肢が広がる」という。

住まいに対するアプローチ|インフォグラフィック

 では、具体的にどういった点に注意すればいいのか。読者モニター2人の自宅を訪問した。

【ケース1】集合住宅

和田有紀さん
読者会議メンバーの和田有紀さん

 1軒目は、神奈川県内の公団の集合住宅に住む和田有紀さん(60)。子どもが巣立ち、義母や両親をみとった後は1人で暮らしている。10年前に、段差をなくすことを意識してトイレや浴室を改修したが、古い団地ならではの構造的な限界も感じている。

 三浦さんは脱衣所や浴室に6cmから12cmの段差がある点に着目。「今は問題なくても将来、足腰が弱くなった時に出入りが困難になる」と指摘。高さを調整できる浴室用すのこの設置を提案した。また脱衣所の寒さは「ヒートショック」の危険性があり、「早急な対応が必要」と判定した。ぬれた体に風が当たらない、放射式の暖房器具を薦めた。

 和田さんは「段差は『削るだけでなく、高さを足す』解消法もあるんですね。脱衣所の寒さも自覚していたが……。筋トレは続け、健康の維持を心がけたい」と話した。小型ヒーターや温度計の設置を考えるという。

 さらに、三浦さんは「集合住宅の場合、玄関までの共用部分は改修できないケースがほとんど。いつまで住み続けられるかを前もって考えておく必要がある」と付け加えた。

【ケース2】戸建て住宅

 小川裕子さん
読者会議メンバーの小川裕子さん

 木造2階建て住宅に1人で暮らす代の母を心配し、モニターに応募した小川裕子さん(58)。母は毎日外出し、自立した生活をしている。室内をフラットにするなど先を見据えて、30年前に建てた家だ。

 だが、三浦さんは生活動線や適正照度・温熱環境など複数の改善点を挙げた。ゴミを捨てるため毎日使う庭側の窓は、地面まで20cmの段差があり、形も大きさも不ぞろいのブロックを階段状に並べて利用している。これが「きわめて危険」と判断。手すり付きステップ台の導入を勧めた。

 また、洗濯物を干すベランダが2階にあり、ベランダへ出る窓と室内にも段差がある。2階への階段の照明も暗い。三浦さんは「1階で日常生活が完結するように、コンパクトな住み方も考える必要がある」と指摘した。

 小川さんは「母も私も、家の中に実は気になっていた所が多くあり、ゾッとした。一方、ステップ台や石油ストーブに代わる暖房器具など、便利で快適な商品も出ているとわかった。利用してみたいと思う半面、導入に伴う出費や工事の負担を思うと二の足を踏む部分もある。母の体調を考慮し、何を優先すべきか考えていきたい」と語った。

 三浦さんは「『まだ大丈夫』と無理をしている事例がよくある。人が物や住まいに合わせて暮らし続け、事故が起きてしまう。転倒経験をしてからでは遅い。周りが声をかけてあげることも大事」と話した。

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