感染症専門医が教える「うがい」や「手洗い」の予防効果

人生100年時代を生きるキーワード・うがい

2020.07.29
うがいイメージ

 「うがい」や「手洗い」は、風邪などの感染症の予防につながるから、外出から帰った時などは特にやったほうがいいといわれ、習慣として身についている人も多いでしょう。この習慣は、長い目で見ると風邪予防だけではなく、感染症全体の予防につながってきます。
 特に今のような時期だからこそ、正しい「うがい」「手洗い」の知識や、やり方を知って感染を予防し、感染症を広げない生活習慣を身に付けましょう。

<目次>

「うがい」が感染症を予防する理由

 うがいに強力な感染予防効果はありませんが、菌やウイルスを洗い流したり、のどの乾燥を防いだりする効果があるので、うがいをすると感染症を予防することができます。口の中をきれいにして滑らかにする「良い習慣」として身につけておくとよいと思います 。

粘膜に吸着する菌やウイルスを洗い流す

 「うがい」は、菌やウイルスが粘膜から侵入する前に、外へ洗い流す効果があるため、感染予防につながります。口や鼻から侵入した菌やウイルスは、まず粘膜に付着します。のどの奥や鼻の奥の粘膜には異物を吸着させる粘液と、さらにそれを体外へ運び出す粘液の流れを作る繊毛という毛の生えた細胞(繊毛細胞)があり、体内に侵入しないようにする防衛機能が備わっています。この粘液や繊毛にキャッチされた菌やウイルスが粘膜から侵入しないように、より早く外へ洗い流すためにはのどの奥でのうがいが効果的と言えます。

うがいの効果

のどの乾燥を防ぐ

 気温が低く空気が乾燥すると、繊毛に付いた異物を押し流す機能が弱まることで、異物に対抗する防衛機能も弱ってしまいます。繊毛細胞による防衛機能を正常に働かせるためにも、うがいをして乾燥を防ぎ、防衛機能を守るようにしましょう。

正しい「手洗い」はうがいよりも感染予防の効果がある?

 粘膜に付着した菌やウイルスは、数分から数十分程度で体内に侵入してしまいます。このため、うがいで侵入を防ぐためには、相当な回数が必要になってしまいます。

 一方、手に付着している菌やウイルスは、顔や口に触れる前に正しく手洗いをすることで、高い確率で感染を予防することができます。

 飛沫(ひまつ)感染・接触感染や経口感染の予防には、うがいよりも手洗いの方が確実に感染予防の効果があると言えるでしょう。

正しい手洗いの方法

(1) 手をぬらしてせっけんを泡立てる (2) 手の甲を伸ばしながら洗う
(3) ツメの間を洗う (4) 指の間を洗う
(5) 親指の付け根を洗う (6) 手首を洗う

正しい「うがい」で感染予防

 菌やウイルスの侵入を防ぐための正しい「うがい」のやり方を知っていますか?手洗いと合わせて、正しいやり方と手順で、しっかり感染を予防しましょう。

正しいうがいの方法
正しいうがいの方法
正しいうがいの方法

ブクブクうがい

 口の中の汚れを洗い流します。どのうがいをする時も、まずはブクブクうがいから始めます。口臭予防にも効果的です。

  • (1) 口に水を含みます。
  • (2) 右側のほおを膨らませて3~4回ブクブクと動かします。左側のほおも同じようにブクブクします。
  • (3) 鼻の下、上唇と歯茎の間を膨らませて3~4回ブクブクと動かします。
  • (4) 口全体を膨らませて3~4回ブクブクと動かします。

ガラガラうがい

 のどの奥の汚れを洗い流します。のどに潤いを与え、風邪予防に効果的です。

  • (1) 口に水を含みます。
  • (2) 上を向き、のどの奥に水が当たるように意識して「あー」「うー」と発音しながら15秒うがいをします。
  • (3) 新しい水を口に含み、もう一度同じようにうがいをします。

ヨード液を使用するうがい

 殺菌作用のある薬品は、のどへの刺激が強い場合があります。日常的に予防対策としてうがいをする場合は、水道水のうがいで十分効果が得られます。必要に応じてヨード液のうがいをするようにしてください。

  • (1) コップの中に、規定量に薄めたヨード液でうがい液を作ります(約60㎖)。
  • (2) ブクブクうがいをします。
  • (3) ガラガラうがいを行います。

うがいのタイミング

  • (1) 帰宅時
  • (2) 人混みから出た後
  • (3) のどが乾燥していがいがする時
  • (4) 空気が乾燥している時

ウイルスはどこから感染するのか

 習慣的に毎日うがいや手洗いをすることは感染予防に効果的ですが、その他にも菌やウイルスの感染経路を把握することで、感染リスクを避けて行動できるようにしましょう。

感染経路

・空気感染

 感染者からのせきやくしゃみなどにより、細かい唾液(だえき)や水滴が外に飛び出します。この水滴が蒸発し、菌やウイルスだけが空気中に漂い、このウイルスを吸い込むことで感染します。水分をふくまないウイルスは軽いため、長い時間、遠くまで飛ぶことができます。
(空気感染する主な感染症:はしか、水ぼうそう、結核 など限られている)

・飛沫感染

 せきやくしゃみなどにより、細かい唾液や水滴が外に飛び出します。この水滴に菌やウイルスが含まれていた場合、水滴を吸い込むことで感染します。
(飛沫感染する主な感染症:コロナウイルス、インフルエンザ、百日せき、風しん、おたふくかぜ など多くの感染症)

・接触感染

 菌やウイルスが皮膚・粘膜から伝わり直接接触することで感染します。また、菌やウイルスは、手すりやタオルなどあらゆる物体の表面を介した間接的な接触でも感染します。
(接触感染する主な感染症:コロナウイルス、インフルエンザ、おたふくかぜ、咽頭(いんとう)結膜熱 など多くの感染症)

・経口感染

 病原体を含む水や食べ物を口にするなど、間接的に病原体が口に侵入することを経口感染といいます。菌やウイルスに汚染された食べ物を、生または十分に加熱しないで食べた場合に感染します。また、感染した人が調理した汚染食品を食べたり飲んだりした場合にも感染します。
(経口感染する主な感染症:ロタウイルス、ノロウイルス、食中毒菌 など)

感染リスクが高まる行動

 日々の生活や行動で、感染リスクが高まることがあります。普段の行動を振り返ってみましょう。

  • ・人混みに長時間滞在する(空気感染・飛沫感染)
  • ・人と人との距離が狭い時にマスクをつけない(空気感染・飛沫感染)
  • ・帰宅後にうがい手洗いをしない(接触感染・経口感染)
  • ・手洗いをせずに顔を触る(接触感染・経口感染)
  • ・目をよくこする(接触感染・経口感染)
  • ・トイレで正しい手洗いをしない(接触感染・経口感染)
  • ・食事の前に手洗いをしない(接触感染・経口感染)

「うがい」「手洗い」以外にも日常生活でできる感染予防策

 日常的にできる感染予防対策は、うがい、手洗い以外にもあります。生活の中に取り入れて、感染症にかかるリスクを最小限に抑えましょう。

免疫力を高める

 免疫力は、外から侵入した菌やウイルスなどを撃退する防衛機能です。身体の中に侵入した菌やウイルスを毎日監視し、攻撃することで身体を守ってくれます。この免疫力が低下すると、抵抗力が弱まり、感染症にかかりやすくなってしまうのです。免疫力を低下させないためにも、特定の栄養食品ばかりを摂取するのではなく、日頃から栄養バランスを意識した食事をとり、感染症にかかりにくい身体を、保つことを心がけましょう。

健康状態を維持する

 体温が下がりすぎないよう、適度な運動や入浴で身体を温めたり、身体を清潔に保ち、リラックスした状態を維持したりすることが大切です。元気な人でも感染することもありますが、心身ともに快適な状態でいることが、感染予防で大切なことの一つといえます。

人混みの多い場所は避ける

 人が多い場所にいると、空気感染や飛沫感染をする感染力の高い菌やウイルスの侵入を防ぐのは困難です。できるだけ人混みを避け、感染を予防しましょう。また、仕事が始まる前、帰宅した時には、なるべく手洗いうがいをすることも、予防につながります。

適度な湿度を保つ

 空気が乾燥していると、のどの防御機能が低下してしまいます。空気が乾燥する季節は特に、加湿器などで室内の湿度を保ち、のどの乾燥を感じたらあめをなめる、水分補給をするなど潤いを保つようにしましょう。

いつでも「うがい」「手洗い」で、正しい予防と安全な生活

 なんとなく習慣化していた「うがい」「手洗い」ですが、菌やウイルスがどのように身体に侵入してくるのか、感染症の特徴を知った上で正しく行えば、予防効果がより大きくなるでしょう。

 日常的にできる「うがい」や「手洗い」について正しい情報を知り、予防のためのよい習慣として取り入れ、感染症にかかりにくい生活を送りましょう。

(取材・文 原幸代)

監修:岡部信彦

  • 岡部信彦
  • 岡部 信彦(おかべ・のぶひこ)

    川崎市健康安全研究所所長

    1971年東京慈恵会医科大学医学部卒業後、小児科で臨床医として勤務。1978年米バンダービルト大学小児科感染症研究室研究員、1991年 世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局伝染性疾患予防対策課課長、1995年 慈恵医大小児科助教授、2000年 国立感染症研究所感染症情報センター長。2009年の新型インフルエンザでは厚生労働省の専門家会議と内閣府の有識者会議委員を務める。2013年から川崎市健康安全研究所所長。

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