「ホットフラッシュ(のぼせ・ほてり・発汗)」女性の更年期によくある症状とは?

人生100年時代を生きるキーワード・更年期

2020.03.27
ホットフラッシュイメージ

 「なんでこんなに顔がほてるの?」「暑くないのに汗が止まらない…」こんな症状を感じたことはありませんか?
 湯あたりしたわけでもないのに、突然のぼせやほてりを感じると、なにかの病気なのかも?と不安になってしまいますよね。もしかすると、ホットフラッシュの症状かもしれません。
 更年期障害の一つであるホットフラッシュ。今回は、その原因や症状、予防・改善方法を解説します。

<目次>

ホットフラッシュとは?

 ホットフラッシュとは、のぼせ、ほてり、発汗の症状がみられる更年期障害の一つで、具体的には次のような症状があります。

  • ・上半身が暑くなり、のぼせたり、ほてったりする
  • ・急に顔が熱くなる
  • ・滝のような汗をかいて止まらなくなる

 ホットフラッシュは更年期障害の代表的な症状です。『更年期』とは閉経前後5年の約10年間を指し、その間に起こる様々な症状を『更年期症状』、その症状がつらくて日常生活に支障が及ぶほどになる状態を『更年期障害』といいます。日本人女性の閉経平均年齢は50歳ですので45歳~55歳あたりを更年期と呼びます。

ホットフラッシュ以外の更年期症状

 ホットフラッシュ以外に更年期に起こる症状にはどのようなものがあるのでしょうか。下記のチェックリストで今のご自分の状態を知っておくことをお勧めします。

簡略更年期指数(simple menopause index)

簡略更年期指数

0~25点:問題ありません
26~50点:食事、運動に気をつけ、無理をしないようにしましょう
51~65点:外来で、生活指導カウンセリングなどを受けた方がよいでしょう
66~80点:専門医に治療開始について相談しましょう
81点以上:各科の精密検査をお勧めします

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ホットフラッシュの原因は?

 ホットフラッシュが起こる原因は、卵巣から分泌される女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌量が減少することに関係しています。

 エストロゲンは脳の視床下部と下垂体からの指令で卵巣から分泌されますが、卵巣に寿命が来ると、エストロゲン分泌ができなくなり閉経を迎えます。閉経前後はいわゆる卵巣機能が揺らぐナイーブな時期。脳からの指令に卵巣が応えることができずにいると、脳からのホルモンは過剰に分泌されてしまいます。脳視床下部ホルモンは血管、体温、発汗などの調節をつかさどる自律神経をコントロールしているので、この脳ホルモンの乱調が自律神経を失調させ、ホットフラッシュの原因になると考えられています。

更年期以外のホットフラッシュを引き起こす原因

 ホットフラッシュは更年期障害の症状の一つとお伝えしましたが、次のような場合、更年期以外の理由で男性や若い女性でもホットフラッシュの症状が起こることがあります。

・ストレス

 過度にストレスがかかると交感神経が常に優位な状態になり、副交感神経とのバランスが崩れ自律神経失調となるため、体温調節がうまくいかなくなります。

・バセドウ病

 甲状腺機能亢進(こうしん)症の症状の一つに発汗、動悸(どうき)があり、更年期に好発するので、更年期障害との鑑別が必要です。

・出産(産後1カ月くらいの時期)

 産後1カ月くらいの時期は、妊娠中の高エストロゲン状態から分娩(ぶんべん)によって急激にエストロゲンが減少することでホットフラッシュが起きることがあります。

ホットフラッシュを改善する治療や薬

 ホットフラッシュは適切な治療を行うことで症状を改善することができます。

ホルモン補充療法

 ホルモン補充療法(HRT)は、不足している女性ホルモンを補充する治療方法です。HRTはホットフラッシュに効果的な良い治療法ですが、使用できない禁忌の方もいるので、専門医の診察を受けて処方してもらいましょう。内服薬、貼り薬、ジェル剤などの投与方法がありますが、貼り薬やジェル剤は肝臓代謝がなく、副作用を軽減できるので、第一選択として選ばれることが多くなっています。子宮がある方の場合、エストロゲンを単独で補充すると、子宮体がんになるリスクがあるため、それを防ぐプロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンを併せて使用する必要があり、貼り薬やジェル剤に併用する場合があります。副作用として、血栓症のリスクが若干上昇することが知られています。喫煙者、肥満の場合は血栓リスクがもともと高いため、HRTができないことがあります。

 更年期症状は多かれ少なかれ更年期になると誰にでもある症状です。ただ、その症状が辛いのに日々我慢しながら過ごすよりも、HRTで上手にホルモンケアすることで、生き生きとした時間に変えることができることを知っていただきたいです。また、HRTには更年期障害の治療以外に骨粗しょう症(こつそしょうしょう)予防、高脂血症予防などの効果もあり、長期的なヘルスケアの視点で多くの利点があるといえます。

漢方薬

 「ホットフラッシュに効く漢方薬」というエキス剤の選び方ではなく、気・血・水の漢方学的観点で、のぼせている状態を患者さんの「証」を診ながら判断します。ホットフラッシュが気の不調(気滞、気虚)からくる場合は加味逍遙散(かみしょうようさん)、お血からくる場合は桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などの処方で効果をみます。

 更年期女性にホットフラッシュがある時、多くの方は他の症状も併発しています。漢方薬は患者様の心身全体を整える作用があるので、実証・中間証・虚証のどれなのか、気・血・水のどこに問題が生じているのかによって、個々の患者様に合うものを探します。

 ちなみに、ほてった身体を冷ますといわれる漢方に「白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)」という漢方があり、即効性があるため頓用で服用するようにお勧めしています。

抗うつ薬

 SSRI、SNRIなどの抗うつ薬はホットフラッシュに効果があることがわかっています。HRTが適応にならない場合や、うつ症状を伴っている場合は処方されることもあります。

非薬物療法

 臨床心理士や心理カウンセラーによる心理療法やカウンセリングを行い、ホットフラッシュを引き起こす根本的な原因を探し出します。詳しい問診によって、個々の生活習慣の改善、運動療法などを取り入れることで、ホットフラッシュを軽減させるよう取り組みます。

すぐに始められるホットフラッシュの予防と対策

 ホットフラッシュの予防策や、発生した時でも症状を軽減する対策について紹介します。

予防

・食事のメニューに気をつける

 大豆を積極的に摂取しましょう。大豆はイソフラボンという女性ホルモンに似た成分を含有しており、エストロゲンと似た働きをします。大豆イソフラボンは食べてから約1〜2日で体外へ排泄(はいせつ)されるため、毎日取り入れるようにしましょう。

・自律神経を整える

 自律神経を整えるように心がけましょう。ストレスを発散することや、リラックスできる時間を作ることで副交感神経が働き、自律神経のバランスを整えてくれます。
 辛いことを家族や友人に相談したり、日常のたわいのないことをおしゃべりしたり、好きな音楽を聴くことや、深呼吸や胸郭ストレッチ、軽めの運動、ラジオ体操など、ご自分なりに楽しめることを行ってみましょう。心身の解放感を感じられると自律神経が整いやすくなります。

・負荷をかけた筋肉トレーニングをする

 2019年に発表されたスウェーデンの研究では、週3回ほどの筋力トレーニングを行うと、中程度や重症のホットフラッシュの頻度が減ると報告されています。筋力トレーニングを積極的に行ってみましょう。

対策

・発症時を記録する

 ホットフラッシュを引き起こした日時やシチュエーションを記録しておくことで、再発するタイミングを予測することができます。発症後、すぐ忘れないようにスマートフォンや手持ちのメモ帳に記録することをお勧めします。発生状況を残しておくことで、医師に相談する時に症状を説明しやすくなり、原因を判明しやすくなるでしょう。

・脱ぎ着しやすい服を着る

 ホットフラッシュが起こると熱を外に逃がそうとして汗をかきます。しかし、服の中で熱がこもると、汗が引かなくなります。通気性の良い服や着脱しやすい服装がお勧めです。

・暑さ対策・汗対策グッズを持ち歩く

 ホットフラッシュは、熱がこもっている状態なので、暑さ・汗対策グッズで体温を冷やしましょう。保冷剤や冷感スプレー、汗拭きシートなどが効果的です。

ホットフラッシュかも?年齢問わず、まずは医師に相談を

 ホットフラッシュが発症する主な原因はエストロゲンの減少によるものですが、その他にも様々な要因が考えられます。また、ただのほてりと放置していると、甲状腺疾患などの病気の見逃しや、症状が悪化するおそれもあります。突然のほてりやのぼせ、発汗が1度や2度で治らず、予防法、対策をしても改善が見られないときは、まず病院で医師に相談してみるのも、改善の方法の一つです。

 原因がわからない時や少しでも不安に感じることがある時、自己判断が難しいときは、医師に症状を伝えて正しい治療方法を相談しましょう。

(取材・文 小村 稜)

  • 善方裕美
  • 善方 裕美(よしかた・ひろみ)

    よしかた産婦人科院長、横浜市立大学産婦人科客員准教授

    医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医。日本骨粗鬆症学会認定医。更年期障害について、ホルモン治療のみならず、カウンセリング、漢方薬、食事、運動、代替医療など多方面のアプローチで治療を行う。著書『最新版 だって更年期なんだもーん 治療編』(主婦の友社)

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