<連載> 高齢社会2.0

家の不用品が資産に変わる!シニアに広がるフリマアプリ

【テクノロジーが変える暮らし(1)メルカリ】単なる売買ツールでなく…

2020.03.27

 家に眠っている不用品を、PCやスマートフォンで簡単に出品できることから、フリマアプリの利用者が日々増加しています。2018年度の市場規模は6392億円と、16年度と比較して約2倍に成長しています。利用者の多くは若者ですが、終活や生前整理のために利用するシニア層が増加しているようです。
 「もう自分は使わないけれど、思い出のつまったモノだから、大事にしてくれる人に譲りたい」――そうした気持ちを受け止め、アプリをより使いやすくする施策に注力しているメルカリに、話を伺いました。

メルカリ韓さん
今回取材に答えてくれた韓昇勲さん。新型コロナウイルスの影響で、取材はパソコンを介したテレビ会議形式で行われた(メルカリ提供)

年をとるほど「かくれ資産」価値アップ

 国内のフリマアプリの代表的存在「メルカリ」は、月間利用者が1500万人を超える。アプリをスマートフォンにインストールして商品を撮影し、価格や商品の説明などを入力するだけで出品が完了。売買が成立すると、販売代金の10%が手数料としてメルカリの利益になるが、利用プロセスが簡単なため、利用者が増えている。不用品だけでなく、手作りの小物や雑貨など、出品される商品の種類も多岐にわたる。

  利用者を年代別に見ると、50代以上は全体の1割程度だが、PRグループ・プロダクトPRの韓昇勲さんは「シニア世代はフリマアプリ利用のポテンシャルが高い」と指摘する。

  シニア世代は家の中に、不用品、いわゆる「かくれ資産」を数多く保有しているからだ。民間企業などでつくる「みんなのかくれ資産調査委員会」の調べによると、かくれ資産の流通想定額(不用品の二次流通想定額)は、日本全体で約37兆円と推定される。

  「保有不用品の金額は、年代に比例して上がる傾向にあります。最も多くのかくれ資産を保有しているのは60代女性で、49.8万円という調査結果が出ています」(韓さん)

「終活」「生前整理」での利用が約10

  メルカリのシニア利用者の動向について韓さんは次のように話す。

 「2017年と2019年の年間比較では、『終活・生前整理』というキーワードでの出品数が約10倍に増えています」

メルカリサロン
メルカリサロンは各地域で開かれ、利用者が集い売れるような商品紹介や体験などが語り合われている(メルカリ提供)

 実際、メルカリのサイトで「終活」「生前整理」などのキーワードで商品を検索すると、ブランド品や着物、ゴルフ用品や時計などが数多く出品されていることがわかる。

 シニア世代は、商品説明欄に商品の状態のほか、商品にまつわる思い出や、出品の経緯などが記入している。 

 ブランド品の出品の中には、大事に買い集めたものなので捨てるのはしのびないが、娘や孫に譲ろうとしても「趣味が合わない」「自分も同じようなものを持っている」などの理由で受け取ってもらえず、出品に至ったという経緯が記されている例もあった。

 「フリマアプリの場合、オークションサイトと違って出品者自身が価格を設定できるので、納得のいく売買ができるという利点があります。売買を通じて出品者と購入者の間に生まれるコミュニケーションに価値を見いだすシニア利用者も多いです」(韓さん)

 売買をする過程で、購入者である新米ママがこぼした子育ての悩みに対し、出品者であるシニア世代が「子育ての先輩」としてちょっとしたアドバイスをすることもあるという。自分の思い出の詰まった商品を大事にしてくれる人に商品を届けるだけでなく、自分の経験や考えを今後の人生に役立ててくれる人に出会える。そうしたことが、シニア世代がメルカリを利用する動機にもなっているようだ。

 「お金を得るだけでなく、社会とのつながりを実感できるマーケットプレースとして、メルカリを利用するシニア世代が増えていることを、日々実感しています」(韓さん)

利便性や認知を向上させ、多くの人に メルカリを楽しんでもらえる導線を引きたい

 メルカリは、商品発送の手間を省けるサービスを拡充することで、利用者の拡大を狙っている。

メルカリポスト
商品を梱包して、スマホのQRコードをかざすだけで発送できる「メルカリポスト」は20年夏からメルペイ加盟店に順次設置が進められる計画だ(メルカリ提供)

 「今後、発送や梱包(こんぽう)の作業をスタッフにおまかせできる『あとよろメルカリ便』や、商品を専用のボックスに投函(とうかん)するだけで出品が完了する『メルカリポスト』などのサービスを展開し、利用のハードルを下げたいと考えています。また、自分にとっては『不用品』でも、『メルカリに出品したら価値を見いだしてくれる人に出会える』ということを多くの人たちに知ってもらって、もっとメルカリを楽しんでもらうための導線を引きたい」(韓さん)

メルカリ教室
登録から出品方法などをリアルな場で教えてもらえる「メルカリ教室」(メルカリ提供)

 同社は、出品などを促す新聞の折り込みチラシを配ったり、アプリの使い方をスタッフが直接リアルな空間で指導する「メルカリ教室」を実施したりするなどして、若者ばかりでなくシニア世代にもサービスを普及させようとしている。

(取材・文 片山幸子/テックベンチャー総研)

  • この連載について / 高齢社会2.0

    高齢化先進国である日本。からだの衰えを補い、より豊かに暮らすため、テクノロジーを活用した商品開発が進んでいる。「テクノロジーが変える暮らし」をテーマに、高齢社会の課題解決に取り組んでいる企業を取材し、の最先端の動きを紹介します。

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