<連載> 高齢社会2.0

IoT活用で日常は「ゆるく」、緊急時は「ガッチリ」老親見守り

【テクノロジーが変える暮らし(5)セコム】「ほどよい距離感」の見守りサービス

2020.04.17

 最新テクノロジーを用いたシニア世代の見守りサービス開発に注力しているセコム。今年1月には、高齢者宅の状況をセンサーで感知し、離れて暮らす家族に情報を伝える新サービスを、ITベンチャーのチカク(東京都)と共同開発して提供し始めた。同社は、センサーで感知した情報を活用した見守りサービスを多様化させている。その商品開発の背景と動きを、同社のオープンイノベーション推進担当リーダー、沙魚川久史さんに聞いた。

ほどよい距離感のほうが心地いい

 超高齢社会になって、老親の見守りサービスに対し、見守る側の子ども世代が求めるニーズは多様化している。沙魚川さんによると、ここ数年、「離れて暮らす親のことが心配。でも、いざというときの救急対応までは必要ないんだけど……」という声が増えてきているという。

 「ライトな見守りニーズの高まりに、緩やかにつながるコミュニケーションで応えられないだろうか。そうした思いから生まれた新たなサービスが『まごチャンネル with SECOM』です」

まごチャンネル with SECOM セコム

 「まごチャンネル with SECOM」は、ITベンチャーのチカク(東京都渋谷区)と、セコムが協働で開発し、今年1月からサービス提供を始めた。コンセプトは『たのしい、みまもり。』だ。

 3万円の受信機をテレビに接続するだけ(別途利用料が月額1680円)。スマホなどで子ども家族から送られてきた日常の写真や動画をテレビの画面で楽しめるところが、高齢者に喜ばれているという。

まごチャンネル with SECOM セコム
テレビの横に置いても邪魔にならない「まごチャンネル with SECOM」の受信機

 こだわりは、「ライトな見守りニーズ」に応える、ちょうどいいあんばいの通知機能だ。実家のテレビと接続する受信機には「みまもりアンテナ」というセンサーが搭載されており、温度や湿度、照度などを感知。離れて暮らす子ども家族はアプリを通じてデータをいつでも閲覧できる。ただ、見守り家族側のスマートフォンに通知されるのは基本的に「起きたようです」「寝たようです」という情報だけ。それ以外の通知は、温度や湿度が急激に変化した際の注意喚起などに限られる。

 「約1年の実証実験を通じ、センサーデータやその通知のパターンを試しました。その結果、起床と就寝を知らせるくらいの情報量、『障子のむこうで行灯がついた、消えた』と実感できるくらいの距離感が、見守る側にも見守られる側にも心地いいという結論にたどり着きました」

加速度センサーが異常事態を察知

 高齢者の見守りサービスとして、セコムは2017年から「セコム・ホームセキュリティ」のオプションサービスとして「セコム・マイドクターウォッチ」の販売も始めている。リストバンド型ウェアラブル端末を用いて、救急対応と健康管理サービスを提供するサービス(月額900円=税別。別途「セコム・ホームセキュリティの月額料金も必要)だ。

まごチャンネル with SECOM セコム
「マイドクターウォッチ」は腕時計型になっている

 同社のマーケティング部次長、パーソナルマーケット推進室長の佐藤弘樹さんは、従来の救急対応サービスとの一番の違いをこう説明する。

 「従来、救急の信号を送るには、ボタンを押す、ひもを引っ張るなど、お客様自身のアクションが必要でした。『セコム・マイドクターウォッチ』にもお客様自身が異常を知らせるボタンが付いていますが、それに加えて、突然意識を失って転倒した場合や、一定時間以上動かなくなった場合などに、自動で救急信号を送る機能を搭載しています」

 端末の加速度センサーが、転倒などの異常を検知して救急信号を送る。端末は、自宅に設置するホームセキュリティのコントローラーや、スマートフォンアプリと連携させているので、自宅にいるときだけでなく、屋外にいるときでも救急対応ができ、健康に不安を抱える高齢者には心強い。また、その活用の幅も広い。

まごチャンネル with SECOM セコム
左から、まごチャンネル with SECOM担当の沙魚川さんと、マイドクターウォッチ担当の佐藤さん(撮影・小川純)

 「加速度センサーで得た情報を健康管理に活用できるのも、このサービスの特長です。例えば、端末が検知した歩行量や運動強度、睡眠時間などは、『セコムあんしん健康アプリ』を通じ『もう少し早歩きを取り入れることをおすすめします』などの健康アドバイスとともに、ユーザーへフィードバックされます」(佐藤さん)

 アプリにその日食べたものを記録するとカロリー計算ができる機能も付いている。

 多様化する高齢者のライフスタイルや、家族の在り方に寄り添える見守りのかたちを探すことは、時代の課題だ。「楽しさ」と「ほどよい距離感」がキーワードになるかもしれない。

(取材・文 片山幸子)

関連記事

あわせて読みたい

おすすめ記事

PAGE TOP