免疫力にも影響?外出自粛による「巣ごもり便秘」に注意!

「運動と食生活が予防のカギ」帝京平成大学教授・松井輝明さん

2020.04.24

 新型コロナウイルスによる外出自粛が続く中、運動不足などによって別の病気のリスクが高まる「二次健康被害」が危惧されています。消化器病専門医で帝京平成大学教授の松井輝明さんは、外出自粛により便秘のリスクが高まると話します。便秘が体に悪い理由や、予防のための生活習慣についても聞きました。

運動不足は便秘を招く

 外出自粛が続くと、運動不足になったり、ストレスを抱えたりしがちです。一般的な便秘を指す「慢性便秘症」は、運動不足や腹筋力の低下、ストレスなどを原因に発症しますので、今は「巣ごもり便秘」ともいえる症状が出やすい状況です。

 「便秘くらい放っておいても」と思うかもしれませんが、侮ってはいけません。便秘は老廃物のかたまりであるうんちが大腸の腸管に押しつけられ続けている状態です。腸管は毒素にさらされ続けることになりますから、大腸がんや炎症性腸疾患などのリスクを高めるほか、悪心や食欲不振を招いたり、肌荒れなどにつながったりするケースがあります。気持ちや集中力にも悪影響を及ぼすことがわかっていて、兵庫医科大学の2019年の研究では、慢性便秘症の人はそうでない人に比べて、欠勤率が高いなど生産性が低下し、年間約122万円の損失につながっていると指摘されています。

 便秘は今まで関係ないと思われていた病気とも関係しています。例えばパーキンソン病は、便通が1日1回未満の人は、2回以上の人に比べて4倍以上も発症確率が高いことがわかっています。

帝京平成大学教授・松井輝明さん
帝京平成大学教授で消化器病専門医の松井輝明さん。「たかが便秘、されど便秘」と話す

免疫力にも悪影響

 便秘は、細菌やウイルスなど外敵と戦う「免疫力」の低下につながる可能性もあります。腸内では、善玉菌が酢酸や酪酸といった「短鎖脂肪酸」をつくりだし、腸壁にあるムチンという粘液を増やしながら腸の上皮細胞を覆っています。このバリアーが、病原菌が腸壁から内部に侵入するのを防ぐなど、感染症予防の役割を果たしてくれているのですが、便秘が続いて腸内環境が悪くなると、このバリアーが弱まってしまうのです。

 善玉菌のひとつであるビフィズス菌は、体の粘膜を外敵から守るたんぱく質「IgA(免疫グロブリン A)」の産生を促す働きがあることが、動物実験でわかっています。腸内細菌は免疫力を高め、感染症にかかったり、重症化したりするリスクを下げる役割の一部を担っていることになるわけですが、便秘が続けばこうした機能も弱まってしまいます。

運動不足を解消するには?

 このように体に悪影響をあたえる便秘の解消には運動が効果的です。スクワットや、からだをねじる体操、腹筋運動などは、便の排出に必要な腹筋や腸腰筋(ちょうようきん)を鍛えます。強度の高い運動が苦手な方は、おなかを「の」の字のようにマッサージするだけでもやってみてください。

 ウォーキングなどの有酸素運動も血行がよくなり、腸が動きやすくなります。早足ならいっそう効果的。買い物の際に少し遠回りするなど、毎日30分程度のウォーキングを目指しましょう。

 運動は体温をあげることで、免疫力をあげます。外に出て日光を浴びれば、骨を強くするほか免疫力にも関係があるといわれるビタミンDが体内で合成されます。外出自粛といっても、外出自体がだめなわけではありません。人混みを避けて、間隔を5m以上あけたりマスクをしたりと工夫しながら、できるだけ外で散歩やウォーキングなどの運動をしましょう。

室内でストレッチ

食生活の注意点は?

 食生活は腸内環境を左右します。様々な食材をバランスよく食べるのはもちろん、ヨーグルトや漬物、納豆などの発酵食品を上手にとり入れましょう。ビフィズス菌などの善玉菌がエサとする水溶性食物繊維やオリゴ糖、ラクチュロースなどもよいと思います。水溶性食物繊維はわかめやひじきなどの海藻や、りんごやらっきょう、大麦などに多く含まれています。

 発酵食品は免疫力を高める面からも重要です。人間の免疫細胞の約7割は腸、とくに小腸に存在し、粘膜の下にある「パイエル板」という免疫細胞の詰まった組織に集中しています。発酵食品に含まれる乳酸菌の中には、このパイエル板に取り込まれると、免疫細胞の数や動きを高めるものがあることが知られています。

 ただ、発酵食品に含まれているビフィズス菌や乳酸菌は、ほとんど腸に定着せずに体の外に排出されてしまいます。できるだけ毎日とり続けるようにしましょう。

ストレス解消も大事!

 規則正しい生活も大事です。外出自粛は生活リズムを崩しがち。毎日できるだけ同じ時間に寝て、同じ時間に起き、3食とるようにしてください。睡眠時間は6時間以上、できれば7時間が理想です。

 朝起きたら、コップ一杯の水と朝食をとりましょう。「胃・結腸反射」といって、眠っている大腸を起こして、便通を促してくれます。朝食後には必ずトイレに行く「トイレタイム」を毎日の生活リズムに取り込むのもコツです。

 腸と脳は、迷走神経やホルモンを通じて密接にやりとりをしています。ストレスを感じたり、不規則な生活で睡眠不足になったりすると、交感神経が優位になって腸の動きが悪くなってしまいます。好きな音楽を聴く、テレビをみて笑う、電話やSNSで誰かとコミュニケーションをとるなど、ストレスをためない生活は便秘予防にも効果的です。

書籍「大腸活のすすめ~腸は自分で変えられる」

  • 大腸活のすすめ書影
  • 松井輝明(著)
    出版社:朝日新聞出版

     消化器病専門医として長年、大学病院で患者と向き合ってきた松井輝明さん(帝京平成大学教授)が、近年注目を集める「腸内フローラ」の基本的な情報や、全身の健康との密接な相関関係など最新研究をわかりやすく紹介。「2週間で腸は変えられる」と話す松井さんが考案した大腸を元気にする食事、運動のポイント「大腸活十カ条」も必見です。

  • 松井輝明
  • 松井 輝明(まつい・てるあき)

    帝京平成大学教授・医学博士

    日本大学医学部卒業。医学博士。日本大学板橋病院消化器外来医長、日本大学医学部准教授を経て現在、帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科 健康科学研究科 健康栄養学専攻長 教授。日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、消化器一般、機能性食品の臨床応用を専門に研究。著書に「大腸活のすすめ~腸は自分で変えられる」(朝日新聞出版)など。

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