<連載> 高齢社会2.0

排尿のタイミングを「見える化」してトイレの不安解消 おでかけも介護も安心に

【テクノロジーが変える暮らし(12)トリプル・ダブリュー・ジャパン】実際の尿の量がわかるウェアラブル機器

2020.05.20

 「トイレが近い」「トイレが間に合わない」など、排尿トラブルを抱える人は、年齢が高くなるにつれて増えている。ベンチャー企業「トリプル・ダブリュー・ジャパン」(東京都千代田区)の調べでは、女性は30代から、男性は50代から3割以上が尿漏れを経験し、「頻繁にトイレに行くのが恥ずかしい」と外出を我慢して生活している。排尿のタイミングが事前にわかって不安なく生活できる人を増やしたいと、同社はトイレの不安を見える化するウェアラブル機器「DFree(ディーフリー)」を開発した。同社社長の中西敦士さんに話を聞いた。

トリプル・ダブリュー・ジャパン社長の中西敦士さん
中西さんは「少しでも安価で高品質な商品を届けたい」と話す(小川純撮影)

超音波センサーが膀胱の変化をキャッチ

 排泄予測デバイス「DFree」は、下腹部に名刺を半分に折ったより少し小さいサイズの超音波センサーを装着する機器。膀胱の大きさの変化をとらえて尿の溜まり具合を0~10に数値化し、Bluetooth(ブルートゥース)でスマートフォンに送られてくる。利用者は尿がどのくらい溜まっているか確認できるうえ、「まだ大丈夫」「そろそろ」と排尿のタイミングを知ることができる。日々のデータが蓄積することで、自分の排尿パターンをより正確に把握できるようになる。

トリプル・ダブリュー・ジャパンDFree
購入にあたっては事前のカウンセリングも受けることもできる(トリプル・ダブリュー・ジャパン提供)

 「DFreeは、世界初の排泄予測ウェアラブルデバイスです。排泄でお困りの方は『年齢のせいで仕方ないか』とあきらめがちですが、このデバイスを使って、実際の尿の量を知ればトイレの不安がなくなります」

 膀胱の状態を知って排尿パターンをつかむことで、尿意が不安からくるものか、本当に尿が溜まっていることによるものかを確認できるため、尿もれの不安が解消される効果があるという。

 「トイレを心配することなく行動できるので、生活の質の向上にもつながります」

  DFreeのネーミングは、「おむつ」=英語「diaper(ダイパー)」の頭文字「D」と「自由・解放」=「Free」を合わせたものだ。

 機器開発に至るきっかけは、中西さんの実体験だった。中西さんは著書『10分後にうんこが出ます~排泄予知デバイス開発物語』(新潮社刊)で、開発のきっかけや開発までの経緯を克明に綴っている。その中で、自らがアメリカ留学中に街なかで大便を漏らしてしまった経験を記し、「排便時間を事前に知らせてくれるデバイスを作ろうと思った」という。

 「『排便時間を事前に知らせる装置の開発』というアイデアだけで、事業を立ち上げました。でも、データはどこにもないので、開発メンバー自らが実験台になってデータ集めから始めました。資金もなく、調達するためにクラウドファンディングも行いました。そこで多くの支援と応援メッセージから、排泄の悩みを抱えている方々が多く、この開発に対する期待の大きさを痛感しました」

排便予測も「2〜3年で製品化」

 開発当初は排便の予測を目標にしていたが、いくつかの介護施設で実証実験をしているうちに、1日6~8回の排泄介助のうち、圧倒的に尿の回数が多いことを知った。そこでまずは尿のことで困っている人のための製品開発をすることにした。

 2017年に介護施設向けのサービスを開始し、18年7月より個人向けのサービス「DFree Personal(ディー・フリー・パーソナル)」の提供も始めると、利用者からの反応があった。

 ある介護施設からは、「脳梗塞で下半身の感覚が鈍くなりおむつをつけて生活していた方が、1年半ぶりにトイレに行くことができました」。障害があって尿意を認識できなかった7歳の子どもに、トイレトレーニングのきっかけになったという連絡もあった。

 「父親を自宅で介護している男性からは、トイレに連れていくタイミングがわかるので、夜間の介護が楽になったという声もいただきました」

 認知症の人にとって、夜間のトイレは転倒の原因にもなる。しかし、介護する側が排尿タイミングの通知を確認できれば、トイレにいくのを手助けできる。介護施設では、DFreeを活用して、おむつゼロを目指しているところもあるという。

 「排便が予測できるデバイスも2~3年で商品化できるよう開発中です」と中西さん。排泄の自立支援サポートは、利用者の健康や尊厳を守り、高齢者を介護する人たちの排泄介助の負担を減らすことにもつながる。

 排泄の悩みは世界共通の課題だ。ヨーロッパやアメリカではすでに売り出しており、中国からも問い合わせがきているという。

 「このDFreeは、日本だけでなく世界中の人々の役に立てるデバイスです」

 DFreeのセンサー技術は体内の液体を補足できる特性があるため、膀胱だけでなく、他の臓器のモニタリングもできる。ヘルスケアの多くの課題解決に向けて、その可能性は広がっている。

(取材・文 小出広子/テックベンチャー総研)

  • この連載について / 高齢社会2.0

    高齢化先進国である日本。からだの衰えを補い、より豊かに暮らすため、テクノロジーを活用した商品開発が進んでいる。「テクノロジーが変える暮らし」をテーマに、高齢社会の課題解決に取り組んでいる企業を取材し、の最先端の動きを紹介します。

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