「コロナ離婚」いったん立ち止まって冷静な判断を

男女問題や離婚を手がける弁護士に聞く(上)

2020.05.22

 新型コロナウイルスによる外出自粛の影響で「巣ごもり生活」が続く中、「コロナ離婚」という言葉を聞くようになりました。弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所(東京都千代田区)にも、「夫婦で過ごす時間が増え、離婚したい思いを抑えられなくなった」といった相談が数多く寄せられているそうです。しかし、人間、追い詰められると正常な判断を下すのは難しいもの。所長の中里妃沙子弁護士は「いったん、冷静に考えて」と、アドバイスしています。コロナ禍での離婚について、その事例や考えてみることについて聞きました。

たまっていた離婚への思い、コップからあふれだした

 関東地方に住む50代の女性からの相談事例です。

 結婚して20年。共働きの夫婦と子どもの3人暮らし。結婚当初から、話が通じない、言外のニュアンスが伝わっていないなど、小さな違和感がたまっていた。いずれ慣れるかもという期待はいつしかあきらめに変わり、ここ数年は、子どもの成長といずれ離婚すれば楽になれる時を待ち望む日々だった。

 通常であれば、朝夕の食事の支度、掃除洗濯と、家のことにいそしみ、目をつぶって生活ができる。生理的に合わない夫でも、家のローンは夫の給料で賄っており、もはや「大家と住人」のような関係。それでも傍からみれば「家族」の体を成していた。

 それが、コロナで一変した。3LDKのマンションの一室のどこかに、夫がいる。子どもの前では普通の親を装わなければならず、「演技」の時間も必然的に急増。これまで味わったことのないストレスを感じた。

コロナ離婚イメージ

 例えば、食事のとき。一切手伝わないうえに、ご飯をつくって、何度呼んでも、ヘッドセットでしゃべっているから気づかない。あげくに「部屋まで呼びに来ないほうが悪い」という。 以前、部屋まで呼びに行った時には、会議中だからと「シー」とされたのに。なんて自己中心的なのか。

 加えて、禁煙しているはずの夫がまだタバコを吸っていたことも、自粛生活の中で判明した。今回のコロナウイルス感染症の重症化リスクは、肺・呼吸器が関係しているともいわれている。ベランダでコソコソ喫煙している姿を見ると、許せなかった。吸っている人間が弱るのは勝手だが、家族を巻き添えにするのかと思うと意識の足りなさに愕然(がくぜん)とした。

 通常なら友人と飲んで騒いでストレスを晴らしていたが、今はそれもできない。このままでは自分が壊れてしまう。

 コップに徐々にたまっていた違和感が、これまではギリギリ、表面張力で保っていた。コップは、最後の一滴であふれ出す、あるいは大きな外的衝撃で割れてしまう。コロナでその両方が同時に訪れたようだった。

本当に離婚の理由になるか、もう一度考えて

 同様の相談が次々と寄せられているといいます。

 「コロナで実家に疎開しているうちに、同居中の生活がストレスに満ちあふれているものと気づいた。このまま自宅に戻らず離婚したい」(50代女性)、「在宅中、夫が私とのコミュニケーションを避けるために部屋に鍵をかけて出てこない姿を見て、前から不満を持っていたが、いよいよ離婚を考えるようになった」(同)、「私の実家に家族で行く予定だったが、母が高齢で、コロナ罹患(りかん)の危険があるため、今回は行くのを止めようと妻に話した。すると妻は、従前から私の実家に気を遣っており、もう疲れたなどと言い出して、口論になり、子どもを連れて自分の実家に帰ってしまった」(30代男性)……。

 普段の生活では、これほどの長時間を夫婦そろって家の中で過ごすことはめったにありません。こうした時期だからこその気づきや不満が出てきているようです。

 中里弁護士は、まず、いま抱えている不満は、ほかの家庭でも多かれ少なかれ起きていることであり、本当に離婚の理由になるのか、冷静になって考えてみる必要があるといいます(ただし、配偶者からDVを受けているなど、緊急性のあるものを除きます)。

 そしてもう一つ、実際に離婚となると、踏むべきステップがいくつもあるといいます。同居をしているうちに準備をしておいたほうがいいことも。また、コロナウイルスの影響で、仮に、所有する不動産価格が下がったり収入が低下したりすると、それは、財産の分与額や養育費にかかわってきます。離婚後に就職する場合は、経済状態が悪化している状況下では、就職が難しいこともあるといいます。

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  • 中里妃沙子
  • 中里 妃沙子(なかざと・ひさこ)

    弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所 代表弁護士

    東北大学法学部卒業、南カリフォルニア大学ロースクールLLMコースを修了した後、都内法律事務所での勤務を経て、平成21年7月に弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所を設立。同事務所は、日本全国から年間400件以上の案件を受任。離婚に悩まれている方が前に進むお手伝いをしている。

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