”コロナ後”の家計が心配な人へ 『定年後』の著者が30年続けるカンタン家計管理法

作家・楠木新さんに聞く(後編)

2020.05.27

 前編では、ベストセラー『定年後』の著者・楠木新さんに、第二の人生を生き生きと過ごすための「定年後のお金」の基本的な考え方を聞きました。後編は、楠木さん自身が30年間実践してきたという簡単な家計管理法を教えてもらいます。年2回、慣れれば30分。新型コロナウイルスの影響で、将来の家計に不安を感じている人にもお勧めです。

作家の楠木新さん
作家の楠木新さん

90歳まで生きると、財産はどうなった?

 私は定年退職した2015年、証券会社で財産のシミュレーションを受けてみました。90歳時点での財産はマイナス。これを体験し、老後のお金が不安になる原因は、定年後にどれだけお金を使うか分からないことだと感じました。
 試算の前提は60歳以降に働かず、60歳と80歳の生活費が同じというもの。私の周りでも、60代で働いていない人は少数派です。60歳以降、月8万円でも働いたら年間100万円、10年間で1千万円になるでしょう。夫婦でともに働けば2千万円になるわけです。
 私はファイナンシャルプランナーではないので、細かいお金の計算までは示しません。ただ、定年前後の人に取材をしてきた中で、「老後のお金が不安だ」と口にする人ほど、自分の家計を管理できていない人が多いと感じます。今の財産をきちんと把握してから未来に目を向けることは、頭の中だけで「30年先」に飛んで逆算して不安がるよりも実用的でしょう。

今の自分の家計を「見える化」してみよう

 「家計管理」というと、家計簿を思い浮かべる人がいるかもしれません。工夫されている市販の家計簿も多いですが、手間がかかる割に家計の全体像は見えにくいと思います。何より続かない人が多いでしょう。家計の状態を大まかに「見える化」するだけで十分だと思います。私は30年間、家計に企業のバランスシートの考え方を採り入れた「財産増減一括表」を作ってきました。会計上の知識や専門用語は必要ありません。半年ごとに資産の増減を見る方法です。

<家計の「財産増減一括表」に書き込む項目>

  • 【資産】
  • ・現金および預貯金
  • ・株式、投資信託など
  • ・保険
  • ・住宅・土地
  • ・自家用車
  • ・年金資産など
  • 【負債】
  • ・住宅ローン
  • ・自動車ローン
  • ・カードローン
  • (楠木新著『定年後のお金 貯めるだけの人、上手に使って楽しめる人』より)

 手順はシンプルです。大判のノート(A4判を推奨)に、見開きで左に3月末、右に9月末を書きます。そして「資産」の項目には、現金や銀行預金の残高を書きます。株式や投資信託を持っていれば、その通知を書き写します。会社員の家計では、減価償却が必要なのは建物か車がほとんどなので、そこから減価償却の年数で割った額をマイナスして計上します(償却期間は、建物20年、車6年)。
 一方、「負債」の項目には、住宅ローンや自動車のローンなどの負債額を書き込みます。最終的に「資産-負債」の引き算をすれば、本当の財産額を算出できます。その上で、資産の各項目に半年前との増減額を入れれば、一目で比べられます。半年ごとの増減が分かれば、自分の財産の変動やお金の使い方の傾向が見えてくるでしょう。もし純資産額がマイナスなら、原因をきちんと押さえておきましょう。

年2回、慣れれば30分で家計を把握

 大まかに自分の財産を把握するには、毎日家計簿をつけなくても、年2回、財産増減一括表を作れば必要十分だと思います。慣れれば30分もあればできます。だいたいの資産額やお金の使い方を把握しておけば、固定費の見直しや、何歳まで働くのかなどの対応策を具体的に考えられます。自分や家族の「終活」にも役立つはずです。

 新型コロナウイルスの影響で、生活も働き方も大きく変わりました。今は問題がない人でも、今後家計に大きな変化が起こりえます。「コロナ後」に備えて自分の財産を把握しておくことは、どの世代にとっても必要だと思います。

(聞き手・見市紀世子、撮影・山本友来)

 ※前編では、「定年後のお金」をどう考えたらよいのかを楠木さんが解説しています。

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  • 楠木 新(くすのき・あらた)

    作家、神戸松蔭女子学院大学教授

    1954年神戸市生まれ。京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。 人事・労務関係をはじめ総合企画、支社長などを経験。会社勤務と並行して「働く意味」「個人と組織」をテーマに取材を続け、執筆、講演などに取り組む。 2015年3月に定年退職。現在、神戸松蔭女子学院大学教授。『定年後』『定年準備』『定年後のお金』など著書多数。

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