医学博士がすすめる免疫力を高めて病気にかかりづらい体質に改善する方法

人生100年時代を生きるキーワード・免疫力を高める

2020.06.24
免疫力を高めるイメージ

 テレビやネットなどで「免疫」という言葉をたびたび見たり聞いたりするようになりました。スーパーでも「免疫力アップ」などと書かれた食材を見かけることも多いのではないでしょうか。免疫の働き(以下免疫力という)というのは加齢や生活習慣の乱れにより低下することがわかっています。自覚症状がなくても、自宅にいることが多くなったり、外出時の行動が慎重になったりすることで、知らず知らずのうちに免疫力を低下させていたかもしれません。今回は、免疫に関する基礎知識からお勧めの食材、そして家庭でも簡単にできる免疫力を高める方法について紹介します。

<目次>

免疫力を高めるために知っておきたい「免疫のこと」

 そもそも免疫とはなんでしょうか。免疫とは「細菌やウイルス、がん細胞など身体にとって異物と認識されるものが侵入してきたとき、それを排除しようとするシステム」のことです。通常、細菌やウイルスが体内に侵入すると免疫細胞が働き体内から排除するのですが、何らかの原因で免疫力が低下すると異物を排除しきれず、風邪や感染症にかかりやすくなるのです。

免疫ってなに?

 免疫には「粘膜免疫」「自然免疫」「獲得免疫」があり、それぞれ特有の免疫物質や免疫細胞が働くことによって身体を守ってくれています。

粘膜免疫

 口、鼻、目、腸管などの粘膜から細菌やウイルスなどの異物が体内へと侵入するのを防ぐ免疫です。IgA抗体と呼ばれる免疫物質が粘膜に分泌される働きを持っています。

自然免疫

 体内に侵入した異物に対してすぐに攻撃をする免疫です。もともと身体に備わっている機能で、免疫細胞であるマクロファージや好中球などが異物を食べて分解(貪食〈どんしょく〉作用)する働きを持っています。また、NK(ナチュラルキラー)細胞と呼ばれる免疫細胞は細菌やウイルスに感染した細胞やがん細胞をまとめて破壊することで異物を排除してくれます。

獲得免疫

 一度体内に侵入した異物を記憶しておくことができる免疫です。同じ異物が再び侵入したときに効果的に排除する機能を持っています。この仕組みはインフルエンザなどの予防として行われる「ワクチン」に利用されています。

免疫 3つの防護壁

 これら三つの免疫力により、細菌やウイルスなどの異物が、身体から排除されます。しかし、冒頭でも述べたとおり年齢を重ねるごとに免疫力が低下し、異物を排除しにくくなります。細菌やウイルス、がん細胞に負けないためにも、免疫力を高める方法について、確認していきましょう。

食事で免疫力を高める

 食事は生命維持に必要な栄養素を補給するうえで欠かせないものです。偏った食事は、免疫力を低下させる原因の一つになるため、バランスの良い食事を心がけることが重要です。ここでは免疫力を高める栄養素の役割と代表的な食材を紹介します。

免疫力を高める食材

・ビタミンAが含まれる、にんじん、豚・鶏レバー、ホウレンソウなど
 ビタミンAは低下した粘膜内のIgA抗体を正常量に回復してくれるので、粘膜を正常に働かせる効果が期待できます。また、βカロテンが多く含まれる食材もよいとされています。なぜならβカロテンは体内に吸収されるとビタミンAに変換されるからです。

・ビタミンCが含まれる、ピーマン、キウイ、ブロッコリー、レモンなど
 ビタミンCは、免疫細胞の働きを強化し、免疫力を高めることがわかっています。免疫細胞内のビタミンC濃度は、血漿(けっしょう)中のビタミンC濃度に比べて高く、活性化するとさらに上昇します。

・ビタミンEが含まれる、かぼちゃ、アーモンド、胚芽(はいが)油、せん茶など
 ビタミンEは活性酸素を抑制する抗酸化作用を持ち、免疫力を高める効果が期待できます。活性酸素とは身体に取り込んだ酸素のうち、数%が変化したものと考えられており、この活性酸素が過剰になると、細胞を傷つけたり免疫力を低下させたりします。

・発酵食品として、納豆、キムチ、みそ、漬物、ヨーグルト
 免疫細胞の6~7割が腸管に集まっているといわれています。腸管は粘膜免疫としても重要な場所であり、免疫力を高めるには腸内環境のバランスを整えることが大切になります。発酵食品には、納豆菌、麹(こうじ)菌、乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌が含まれており、摂取することで善玉菌を増やす働きがあります。

栄養成分 代表的な食材
ビタミンA にんじん、豚・鶏レバー、ホウレンソウなど
ビタミンC ピーマン、キウイ、ブロッコリー、レモンなど
ビタミンE かぼちゃ、アーモンド、胚芽(はいが)油、せん茶など
発酵食品 納豆、キムチ、みそ、漬物、ヨーグルトなど

免疫力を高めるビタミンを摂取する際のポイント

 ビタミンは「水溶性」と「脂溶性」の二つに分かれており、それらは調理法によって身体へ取り込まれる量が変わります。

 水溶性ビタミンには、ビタミンB群やビタミンCなどが該当します。ゆでるとビタミンが水に溶けてしまうため、蒸したりスープにしたりするのがお勧めです。

 脂溶性ビタミンはビタミンA、D、E、Kが該当します。油に溶けやすい性質があるため、油で炒めたりドレッシングをかけて食べたりすると吸収が良くなります。

 このように、ビタミンは調理法を工夫することで効率よく摂取できるようになります。

免疫力を高める食材

発酵食品を摂取する際のポイント

 発酵食品を食べるときは、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌の餌となる食材を同時に摂取するようにしましょう。善玉菌の餌となる食材のことを「プレバイオティクス」と呼び、オリゴ糖や食物繊維がそれに該当します。発酵食品とオリゴ糖や食物繊維が含まれる食品を摂取することで、善玉菌の増殖を促進する効果が期待されます。

 ただし、善玉菌を増やすためにと、過剰摂取をしないように注意しましょう。「腸内細菌の多様性を保つ」と言いますが、毎日ヨーグルトばかり食べるのではなく、野菜や果物など他の食べ物とのバランスを考えた食事をすることで腸内の健康を整えていくことも、大切なポイントです。

 野菜や果物を摂取する頻度を上げることで精神的幸福感が高まるという研究結果もあります。「オーガニックな野菜からしっかりビタミンをとる」「繊維質の野菜をよくかんで食べる」といった食事は、免疫力を高めるだけでなく、幸福感も高めることでストレスを軽減してくれるのです。

家庭で簡単にできる免疫力を高める方法

 日常生活の中で、食事以外でも免疫力を高めることができます。「睡眠・運動・笑う・温める」の四つについて紹介します。

しっかりと睡眠時間をとる

 睡眠中、体内では多くのホルモンやサイトカインと呼ばれる免疫を活性化させる物質が分泌され、身体の回復を早めようとしてくれます。睡眠時間は人それぞれで異なりますが、まずは6~7時間ほどを目安に睡眠時間を確保してみましょう。

 また、睡眠時間が6時間未満の人は6時間以上睡眠をとっている人に比べて、肺炎のリスクや死亡率が高く、唾液(だえき)中のIgA分泌量が低いなどの報告もあります。健康維持のためにも睡眠はとても大切な行動なのです。

適度に運動をする

 60分程度の中強度な運動をすることで、免疫力が高まると言われています。

 反対に、激しい運動を行うと、免疫力が低下して感染リスクが高まるといわれています。マラソンなど強度の高い運動をすると、風邪やインフルエンザに感染しやすくなるのは、そのためです。日頃運動をしていない方は、まず60分以内で、はや歩きのウォーキング、犬の散歩など、中強度な運動を行うことから始めてみましょう。

たくさん笑う

 笑うことで免疫細胞であるNK細胞が増加することがわかっています。人の身体では毎日5000個ほどのがん細胞が発生するといわれていますが、すべての人ががんを患っているわけではありません。それは、体内にがん化した細胞ごと攻撃し消失させるNK細胞がいるからです。細菌やウイルスでも同様の働きをNK細胞は担ってくれます。気の合う仲間や家族との会話や、バラエティー番組をみるなど、笑うことを見つけていきましょう。

身体を温める

 身体を温めることで身体の血流が良くなり免疫力が高まるといわれています。身近にある身体を温める方法といえば入浴です。シャワーを浴びるだけでなく、湯船につかって疲れを癒やしながら、身体を温めましょう。

免疫力を下げる行動をしていませんか?

 免疫力を高める食事や運動を意識して行っていても、免疫力を低下させる行動をとっていると本末転倒です。以下の行動に当てはまらないか確認してみましょう。

慢性的にストレスがたまっている

 慢性的なストレスは自律神経のバランスを乱し、免疫細胞の働きを低下させる原因となります。知人や親戚などの人間関係、夫婦間、身内の介護、自由な時間のなさ、健康面や財政面の心配など、ストレスは至るところに潜んでいます。

 また、ストレスを解消するためにと、飲酒や暴飲暴食、喫煙をしている場合は、さらに免疫力が下がってしまうことも。スポーツや趣味で身体を動かしたり、人と話をして笑ったりするストレス解消法を取り入れるようにしましょう。

生活習慣の乱れ

 偏った食事や運動不足、睡眠不足が原因で免疫力が低下することがわかっています。好きなものだけを食べてしまう、調理法がいつも同じである、加工食品や添加物が多く含まれたものをよく食べるといった食習慣をしていませんか? また、いつも部屋にこもっている、夜更かしをしてしまう、昼夜逆転しているなどの行動をとっていませんか? 規則正しい生活を送ることがストレスの軽減にもつながるため、できるところから改善してみましょう。

喫煙習慣

 喫煙も免疫力を低下させる行動の一つです。肺には肺胞マクロファージと呼ばれる特有の免疫細胞があります。喫煙をすることで肺胞マクロファージの働きが低下することがわかっています。また、喫煙者の唾液(だえき)中のIgA抗体の量が低下することも報告されており、喫煙されている方は禁煙をお勧めします。もし一人で禁煙できないという方は、禁煙外来を設けている医療機関もありますので、利用してみてはいかがでしょうか。

 この他、行動とは異なりますが、がん治療などの副作用により免疫力が低下している場合もあります。一部の抗がん剤はがん細胞の増殖を抑制するとともに骨髄での免疫細胞の増殖も抑制するため、風邪や感染症にかかりやすくなります。

生活習慣を見直して免疫力を高めましょう

 今回は、免疫が体内で働く機能と免疫力を高めるために簡単にできる方法について説明してきました。免疫力は、加齢や生活習慣の乱れにより低下していきます。免疫力を高めるためには、日常生活の中の問題点を改善していくことが必要です。とはいえ「免疫力を高めるため」と難しく考えることはありません。

 もしも食事が偏っているならバランスの良い食事へ変えていく、運動不足なら適度に体を動かす、睡眠が足りなければしっかりと眠る。といったことに気をつけることです。規則正しい生活を心がけ免疫力を高めていきましょう。

(取材・文 小村 稜)

監修:白澤卓二

  • 白澤卓二
  • 白澤 卓二(しらさわ・たくじ)

    白澤抗加齢医学研究所 所長 医学博士、お茶の水健康長寿クリニック 院長

    1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。東京都老人総合研究所老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダーを経て、2015年まで順天堂大学大学院加齢制御医学講座教授。専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝学、アルツハイマー病の分子生物学、アスリートの遺伝子研究。日本アンチエイジングフード協会理事長、Residence of Hope 館林 代表、千葉大学予防医学センター客員教授。著書に「100歳までボケない101の方法」「『砂糖』をやめれば10歳若返る!」「認知症生還者の証言」など。テレビ出演多数。

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