<連載> ありがとうの手紙

あの日、あの時も葛藤していた 苦労をかけた子どもたちへの「ありがとう」

渡辺えりさんからのメッセージ 「ありがとうの手紙」を読んで

2020.07.02

 今だからこそ「ありがとう」を言葉にしよう。感謝をつづった手紙を募集したところ、読者会議メンバー・田畑純子さん(山口県・60代)から娘と息子たちへに宛てた「言い尽くせない感謝」の手紙が寄せられました。25年前、子育てと仕事に懸命だった田畑さんへ、俳優の渡辺えりさんからメッセージが届きました。

ランドセルの子どもたち

娘と息子たちへ

 25年前、智くんが小学校入学をきっかけに、母さんは8年ぶりに再就職をしたよね。あなたたちより早く出勤するため、入学早々の智くんの登校準備を手伝うことができなかった。

 そんな時、6年生の佳子ちゃんが智くんの世話をしてくれたね。制服を着せて、ランドセルの中身を点検し、朝ご飯を食べさせて3人で学校に行っていた。母さん、仕事をしながら1年生の智くんが心配で「佳子ちゃん、頼むね」って心の中で祈っていた。

 お茶わんを洗うことも「お母さんは仕事で大変だから、自分の茶わんは自分で洗いなさい」と、佳子ちゃんが弟2人に教えくれた。母さん、口では「後で洗うからしなくてもいいよ」と言いながら、本当はすごく助かっていたよ。夜勤で弁当が作れない母さんの代わりに、弁当を作ってくれた。姉ちゃんが怖くて2人は何でも言うことを聞いていたようだけど、やさしいところもいっぱいあるよね。今でも2人のこと、すごく気にかけているよね。

 芳くんは、賢く聞き分けの良い子どもだった。2歳の智くんが熱を出して保育園を休んでいた時、仕事を休めない母さんは、4歳の芳くんも保育園を休ませて、「智くんをトイレに連れて行ってやってね、お弁当を食べさせてやってね」と言い聞かせて仕事に行っていた。その時のことを考えると、芳くんに謝っても謝り切れない。「4歳の子に何を言っている」と、今思い出しても自分が情けないよ。

 智くんは明るくて、みんなを和やかにしてくれた。七五三のお祝いもできなかったし、参観日にも出席しなかった。成長が感じられる絶好の場を母さんは逃してしまった。

 今、4人の孫と遊ぶ時に、いとしさで幸せを感じるよ。母さん、愛情の表現も下手で 抱きしめてあげることもできなかった。子どもには抱きしめられるって、とても大事なことだよね。ダメ親だった母さんを許して欲しい。「ごめんなさい」。そして、今までずっと助けてくれてありがとう。言い尽くせない感謝でいっぱいです「ありがとう」
(山口県 田畑純子さん 60代)

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渡辺えりさんからのメッセージ

  • 渡辺えりさん
  •  我が子を育てるために忙しく働いている純子さんの背中を見て育ったので、お子さんたちはなんでも自分でできる思いやりのある人間に育ったんですね。純子さんはえらいです。命がけで懸命に働いてきたのにお子さんたちに謝っておられる。凄いことです。純子さん、自分のために遊んだり、贅沢したことないでしょう?子どもたちはちゃんと分かってます。

  • 渡辺 えり(わたなべ・えり)

    劇作家 俳優 演出家

    山形県出身。劇作家・演出家・女優、歌手として各方面で活躍中。2017年4月から朝日新聞生活面の「ひととき」を読んで感じたことをつづる「渡辺えりの心に残るひととき」を連載中。8月5日~9日に、書き下ろし作品を盟友木野花と共同演出する二人芝居「さるすべり~コロナノコロ~」に出演予定(会場:座・高円寺1)。続いて、8/21~23には尾上松也との二人芝居「消えなさいローラ」(会場:本多劇場)を演出、出演。

  • この連載について / ありがとうの手紙

    大切な方への感謝を手紙につづってみませんか?読者会議メンバーに「ありがとうの手紙」の投稿を募集しました。この連載は、俳優の渡辺えりさんが読者から届いた手紙を読み、メッセージを寄稿してもらう企画です。

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