あなたの「のど」は大丈夫? 意外と知られていない老化との関係

山王病院東京ボイスセンター長 渡邊雄介さんに聞く(上)

2020.07.20

 声がかすれる、何もないところでつまずく、疲れやすくなった――。年齢を重ねて起きる心身の衰えは、「のど」が原因かもしれません。人生後半を健康で過ごすために、今からできることは何でしょうか。3月に『声筋のすごい力』を出版した山王病院東京ボイスセンター長の渡邊雄介さんに、意外と知られていない「のどの隠れた役割」を聞きました。

山王病院東京ボイスセンター長の渡邊雄介医師
山王病院東京ボイスセンター長の渡邊雄介医師

「コエキン」って何のこと?

 「声がかすれることが増えた」「高い声が出しにくい」と感じたことはありませんか。それは、声を出すときに使うのどの筋肉「声筋(こえきん)」が衰えてきた老化のサインです。声筋は、のど仏の下あたりにある左右5個ずつ、計10個の筋肉のこと。医学用語ではなく、分かりやすいように私が考えた造語です。
 声筋は30歳くらいから衰え始めます。声筋が弱ると次第に声に張りがなくなって、「老け声」になっていきます。「声の張りがなくても困らない」と考える人もいるかもしれません。しかし、声筋にはあまり知られていない大切な働きがあります。のどをぴったり閉じることで肺を風船のように膨らませ、体を安定させる役割です。のどが「空気栓」になることで力むことができ、踏ん張れる。必要なときに力を出すことができるのです。
 テニスのシャラポワ選手や卓球の福原愛選手のように、力を入れるときに声を出し、好成績を残すトップ選手はたくさんいます。アスリートでなくても、私たちは日常生活で重い物を持つときに「よいしょ!」と声を出すでしょう。声を出すことで自然と声帯が閉じるので、肺を風船のように膨らませて上半身を安定させ、瞬間的な力を出せます。

のど健康度チェックに挑戦

 のどは、「息をする」「食べ物を飲み込む」「声を出す」という三つの重要な役割があります。声筋は、食べ物が気管や肺に入らないようにはね返し、食べ物を食道に送ります。しかし、声筋が衰えるとのどを閉じることができなくなり、食べ物や唾液(だえき)が肺に入って肺炎を起こすリスクも出てきます。
 のどの健康状態を確認できる、簡単な声筋のテストがあります。「あーテスト」と呼んでいます。ひと息で鼻から空気を大きく吸い、「あー」と長く声を出します。強く息を吐くのではなく、声を長く出すことを意識してください。健康な人は男性で30秒間、女性で20秒間は声を出せます。15秒を切るとかなり老化しているサインです。声を10秒出し続けられない人は、耳鼻咽喉(じびいんこう)科やのどの専門医への受診をお勧めします。

 近著『声筋のすごい力』では、12項目の質問でのどの健康状態を振り返るセルフチェック法を紹介しています。例えば、「会話中、『聞き取りづらい』と言われたり、聞き返されたりすることが増えた」「ペットボトルのふたが開けにくくなった」「ゴルフの飛距離が明らかに落ちた」のうち一つでも思い当たる人は、声筋のトレーニングやのどのケアを始める時期だと考えてください。

 声筋の衰えを感じている人でも、鍛え直せば張りのある声を取り戻せます。次回は、いい声を保つための習慣と、のどのケアついてご説明します。

 渡邊さんは8月8日(土)午後1時半~2時半、オンライン講座「『声筋』を鍛えるトレーニング」に出演します。リハビリシンガー種浦マサオさんとの共演。参加費は会員2530円、一般2750円。オンラインセミナーアプリ「Zoom(ズーム)」を使い、パソコンやタブレット、スマートフォンで配信が見られます。申し込みは主催の朝日カルチャーセンターのHPで。問い合わせは新宿教室(03-3344-1941)へ。

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  • 渡邊雄介
  • 渡邊 雄介(わたなべ・ゆうすけ)

    山王病院 国際医療福祉大学東京ボイスセンター長

    1990年、神戸大学医学部卒。専門は音声言語医学、音声外科、音声治療、GERD(胃食道逆流症)、歌手の音声障害。耳鼻咽喉科の中でも特に音声言語医学を専門とする。2012年から現職。国際医療福祉大学医学部教授、山形大学医学部臨床教授も務める。

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