<連載> 残された時間の歩き方

磯野家の波平・フネ夫妻と比べれば実感できる 自身の「若さ」

人材コンサルタント・田中和彦

2020.07.24

 前回、日本人の平均寿命のデータ(男性は81.25歳、女性は87.34歳。昨年度現在)をお伝えしましたが、50年前の日本人の平均寿命が何歳だったかというと、男性が67.74歳、女性が72.92歳(1970年度)だったのです。つまり、この50年間で日本人の寿命は、15年ほど延びていることになります。ちょっと驚くべき数字ですよね。

 1970年代、大手企業は55歳定年制が主流でした。「55歳で定年退職し、60歳の年金支給のタイミングまでは嘱託社員で再雇用」というのが、一般的なパターンだったのです。現状でも多くの企業が設けている「55歳役職定年制」は、その名残りというわけです。

 今は、「60歳で定年を迎え、雇用延長で65歳まで働く」という人が多いので、5年プラスされている状況です。ただ、平均寿命の延びを考慮すれば、「70歳定年で、75歳まで雇用延長」ぐらいが、ちょうどいいのではないでしょうか。かつてよく使われていた「60歳で引退して悠々自適な老後を過ごす」という表現も、1970年の平均寿命を基準に「残された時間」を考えれば十分に頷ける話ですが、今の時代ではピンときません。

 朝日新聞で1951年にスタートした連載漫画「サザエさん」。
 登場する磯野家の波平さんとフネさんは、物語の設定上、何歳だか知っていますか?
 実は波平さんが54歳、フネさんは52歳(フネさんの年齢は諸説ありますが、アニメ版では52歳となっています)なのです。言葉は悪いですが、おふたりとも、ビジュアル的にはかなりおじちゃんとおばあちゃんという感じです(もちろん孫のタラちゃんが生まれていますから、間違いではありません)。

磯野波平54歳
1965年12月16日付 朝日新聞朝刊より©長谷川町子美術館

 たとえば芸能人のおしどり夫妻を挙げると、唐沢寿明さんが57歳、山口智子さんが55歳で、浪平さん、フネさんのカップルより共に3歳も年上です。比較するまでもなく、唐沢さん山口さんの方が全然若々しいですよね。これが2020年という現在の「現実」なのです。

  つまり何が言いたいかというと、今の時代の50代、60代、そして70代、80代も、一昔前と比べればまだまだ若いということです。「もう歳だから」なんていう言い訳は、それこそ90歳くらいになってから使うものであって、まだまだ現役を爆走してほしいのです。

 昔に比べ「残された時間」も長くなっています。だからこそ、引退モードに入るのではなく、いつまでも現役感バリバリに、自分の人生のために時間をどう活用するかを積極的に考えてほしいのです。

  • 田中和彦
  • 田中 和彦(たなか・かずひこ)

    人材コンサルタント/プロデューサー/(株)プラネットファイブ代表取締役

    1958年、大分県生まれ。一橋大社会学部卒業後、リクルートに入社。「週刊ビーイング」「就職ジャーナル」など4情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社ギャガで映画プロデューサー、キネマ旬報社・代表取締役を経て、現職。キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『「定年サバイバル時代」の働き方ルール』(朝日新聞出版社)、『50歳から男振りを上げる人』、『42歳からのルール』(明日香出版社)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。

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