<連載> 大腸最前線

糖質制限すると太りやすい腸に? 腸内フローラ検査が示す驚きの事実

次世代シーケンサーを駆使した最新の検査結果から

2020.07.25

 同じように食べても、太る人と太らない人がいます。それは、腸内フローラのバランスが左右しているとの研究報告があります。腸内フローラの状態が悪化すると、太りやすい体質を招くというわけです。腸内をDNAレベルで調査解析して健康指導している企業や研究者に、肥満型とされる腸内環境の特徴と、健康的なダイエットのためのヒントを伺いました。

糖質制限すると太りやすい腸に

 ここ数年話題の、糖質制限ダイエット。確かにやせた人はいる。一方で、体調を崩したり、痩せてもリバウンドしたりする人もいて、その評価は定まっていない。治療上の必要から、医師の指導のもとで糖質制限をする場合は別として、個人がむやみに取り組んで良いものなのか心配な人もいるだろう。
 糖質制限の功罪を考える上で興味深い調査結果が、最近発表された。その結果は、むやみに糖質制限をすると腸内環境が悪化し、むしろ太りやすい体質になるというものだった。調査は、糖質制限中の人の腸内フローラを調べるために昨年8月、健康な30~50代女性20人の協力で行われた。

 調査は、腸内細菌や腸内フローラが専門の森田英利・岡山大大学院教授の監修のもと、バイオベンチャーの「サイキンソー」などが実施した。同社は、理化学研究所や大阪大微生物病研究所と連携、広く腸内フローラ検査を手がける企業だ。
 同社が手がける腸内フローラ検査は「Mykinso Gut(マイキンソー ガット)」という。被検者は、ボールペン大のキットで微量の便を採取し、全国600カ所以上ある提携医療機関を通じて送れば、4~6週間で判定が出る。費用は、窓口となる医療機関により異なるが、自由診療で2万円前後だ。医療機関を通さずオンラインで申し込める簡易版もある。

DNAレベルで腸内細菌を解析 採用する人間ドックも

 送られた便検体は、中に含まれる腸内細菌をDNAレベルで分析できる次世代シーケンサーにかけられる。約100種類もの細菌を調べる能力があるが、検査では1人あたり、腸内フローラの占有率が高い50~80種類ほどの菌が検出されるという。
 同社では、細菌の構成比率や、善玉菌とされるビフィズス菌の割合なども解析。日頃の生活習慣に関するアンケートの回答なども参考に、太りやすさなどの健康指標が確認できる検査結果をまとめて提供。管理栄養士のアドバイスのほか、窓口となった医療機関では、医師の説明も受けることができる。
 近年の腸活ブームもあり、同社の検査件数は、創業以来の6年間で2万件を超える。
 同社広報で管理栄養士の前川紗有美さんは「過敏性腸症候群の方をはじめ、便秘や下痢などのお悩みを抱えている方が、提携医療機関を通じて受けられるケースが多いです」と語る。腸内フローラ検査をオプションとした人間ドックや、社員の健康診断に取り入れる企業も増えているという。

糖質制限で悪い判定は2倍、良い判定3分の1に

 さて、今回の糖質制限者の腸内フローラを調べた結果だが、前川さんによると「弊社が保有する健康な一般生活者のデータと比べると、腸内フローラのバランスが悪い状態の人の割合は2倍、良い状態の人の割合は3分の1にとどまる結果でした」。

糖質制限者の腸内環境比較グラフ
糖質制限している人と一般生活者で腸内フローラ判定結果を比較したグラフ(サイキンソーなどによる調査から)

 この結果について森田教授は、「簡易的に実施した試験ですが、非常に興味深い結果でした」と評価している。「糖質制限をすると穀類などに含まれる食物繊維の摂取も制限されてしまい、大腸内のビフィズス菌などが、いわゆるエサ不足の状態となって劣勢になってしまう。糖質制限をした人の腸内フローラ判定のスコアが悪くなったのは、そのためだと考えられます」。

 また、腸内フローラの構成比率には「やせ型」と「肥満型」があることが分かってきた。注目しているのは「ファーミキューテス門」(F門)と「バクテロイデーテス門」(B門)のグループに属する細菌の構成比率だという。
 F門の菌は、本来便として排出される食べ物の残りカスまでをも消化し、人が吸収しやすくするため、これらの菌が多い人は太りやすくなってしまう。一方、B門の菌の中には、ビフィズス菌と同じように、脂肪吸収を抑制する短鎖脂肪酸を作り出すため、その作用でやせ型の体質になるというわけだ。

太りやすい体質の人の割合も倍に

 このため、腸内フローラ検査で判明した、F門の菌の割合をB門の菌の割合で割ったFB比が大きい人ほど、太りやすい体質と言うことができる。今回、糖質制限者のFB比は「一般生活者の倍以上でした(グラフ)」と、前川さんは話す。

糖質制限者と一般生活者のFB比比較グラフ
糖質制限者と一般生活者のFB比(太りやすさを示す指標)に比較。数字が大きいほど太りやすい状態にあることを示す。(サイキンソーなどによる調査から)

 また、糖質制限ダイエットをした人がリバウンドしやすいのは、腸内環境の悪化が原因との説もある。「リバウンドした人の腸内フローラでは、脂肪を燃焼させる物質などを作る腸内細菌の遺伝子のスイッチがオフになってしまい、その結果、より太りやすい体質となってしまって、糖質制限などで一時的に体重を落とせたとしても、元にもどりやすくなり、ひいては元の体重以上に増えてしまうというわけです」と、森田教授。

 ダイエットしたいなら、まずは自分の腸内フローラのバランスを知って、医師や管理栄養士の助言も得て、大腸を整えた方が健康的で確実だといえそうだ。

  • 森田英利
  • 森田 英利(もりた・ひでとし)

    岡山大学大学院教授

    1991年岡山大大学院自然科学研究科博士課程修了。米国ミネソタ州立大 Food Science and Nutrition学部博士研究員、麻布大獣医学部教授を経て、2015年より岡山大大学院環境生命科学研究科教授。

  • この連載について / 大腸最前線

    大腸にすむ腸内細菌は、検査法の飛躍的な進歩などにより、私たちの健康増進に役立つさまざまな働きが明らかになってきました。腸内細菌を活用した最新の治療例や、医療現場の動向などを、分かりやすくご紹介します。

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