<連載> ありがとうの手紙

新婚旅行の地へもう一度 46年間連れ添った妻への「ありがとう」

渡辺えりさんからのメッセージ 「ありがとうの手紙」を読んで

2020.08.06

 感謝をつづった手紙を募集したところ、読者会議メンバー・高木勇さん(兵庫県・60代)から妻に宛てた手紙が寄せられました。出会った瞬間に「この女性と結婚する」とビビッと来たという高木さん。俳優の渡辺えりさんから「これからも奥様を大切になさってください」というメッセージが届きました。

紅葉を眺めるシニア夫婦

46年間連れ添った妻へ

 私の左手薬指にはまる指輪の裏を見ると、「1974.5.26 K to I」と印字されています。あなたとは奄美大島で出会いました。私は異国情緒と自然に魅了され1カ月とどまり、それまで封印していた青春を謳歌(おうか)していました。そして民家に大島紬(つむぎ)を見学に行き、あなたと出会いました。

 訪問を告げるとあなたは私を紬の機の前に案内しました。この時、私は「この女性と結婚する」とビビッと来ました。あなたも同じように思ったと結婚後に聞かされました。出会って9カ月後に結婚。私は23歳、あなたは24歳でした。

 北陸への新婚旅行最大のエピソードは、帰りの雷鳥の車内であなたが「私がグズグズしていたら、先に一人で行ったら良いからね」と泣き、私が戸惑いながらも「一緒に歩こう」と慰めたこと。あなたの涙は新鮮でした。

 そして2人の子どもと4人の孫に恵まれ “ビビッと”の正しさが証明されました。あなたは家の真ん中に存在感たっぷりに“デーン”と座り、家族に指示するまでに成長しました。特別な能力や才能がない私が、家族を持てたことを素直にあなたに感謝したいと思いましたが、うまく表現することができませんでした。

 さて私は数年前、あなたの反対を押し切って会社を中途退職し、意気揚々と臨んだ再就職に失敗し挫折しました。あなたと一日中顔を突き合わせていると息が詰まりそうで、あなたの表情も暗くなりました。申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、気持ちを素直に伝えることができませんでした。今は設備管理の仕事をしています。思い通りいかないことも多いのですが、先輩が優しく指導してくれます。私にはこの優しさがなかったと気付く今日この頃です。この経験を通してあなたと一緒に歩むことの大切さを改めて知りました。コロナが収束すれば、新婚旅行の地を巡る旅に一緒に出ませんか。一切我今皆懺悔(ざんげ)です。
(兵庫県 高木勇さん 60代)

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渡辺えりさんからのメッセージ

  • 渡辺えりさん
  •  ほれて一緒になり、相手のやさしさや思いやりも分かっているはずなのに、コロナ禍でうんざりしてしまうご夫婦の関係にニヤリとしてしまいました。照れて言えないことを今手紙に書いてくださった勇さん、これからも奥様を大切になさってください。

  • 渡辺 えり(わたなべ・えり)

    劇作家 俳優 演出家

    山形県出身。劇作家・演出家・俳優、歌手として各方面で活躍中。2017年4月から朝日新聞生活面の「ひととき」を読んで感じたことをつづる「渡辺えりの心に残るひととき」を連載中。9/3~13に劇団KAKUTA公演「ひとよ」に出演。10/3~4に豊橋公演(会場:穂 の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール)あり。また、2021年2月には「喜劇 お染与太郎珍道中」(京都・南座、東京・新橋演舞場)の出演を控えている。

  • この連載について / ありがとうの手紙

    大切な方への感謝を手紙につづってみませんか?読者会議メンバーに「ありがとうの手紙」の投稿を募集しました。この連載は、俳優の渡辺えりさんが読者から届いた手紙を読み、メッセージを寄稿してもらう企画です。

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