<連載> 今日から始める“ 腸” 寿生活Q&A

意外と知らない便秘のこと 「力まず」「すっきり」してますか?

消化器病専門医・松井輝明さんに聞く「腸活・大腸ケア」(1)便秘とはなにか

2020.08.05

 心と体の健康に深く関わる慢性便秘は、ちょっとした生活の乱れからでも起こります。お通じは毎日あるけど、すっきりしない。少し気張らないとダメ。これって便秘の始まりでしょうか。消化器病専門医で帝京平成大学教授の松井輝明さんに聞きました。

腹痛

ポイントは「十分」かつ「快適」か

――まず、便通はどれくらいに1回が理想ですか。便の量が一度に多い方がいいのでしょうか。

 もともと便秘というと、一般的には、3日も4日もお通じがないような、便が出ないことをイメージしがちです。しかし、便秘にはこれとは違う状態も含まれています。

 2017年にまとまった慢性便秘症の診療ガイドラインによると、便秘とは「本来体外に排出すべき糞便(ふんべん)を十分量かつ快適に排出できない状態」のことをいいます。

 ポイントは「十分量」かつ「快適」であるかどうか。十分量というのは、まだ便がおなかの中に残っている「残便感」がないということ、快適というのは「力まない」で便がでるかどうか。つまり、すーっとでて、すっきりした状態にならなければ、便秘の可能性あり、ということになります。

帝京平成大学教授・松井輝明さん
帝京平成大学教授で消化器病専門医の松井輝明さん

1日3~4回の便通があっても・・・

 便秘の状態は、二つのタイプに分類できます。ひとつは「排便の回数や量が少ないため、便が腸の中にとどまってしまう」タイプ。従来の一般的な便秘のイメージに近いものです。

 注目してほしいのは、もうひとつのほう、「量や回数に問題ないが、便が快適に排泄(はいせつ)できず残便感がある」タイプです。

 たとえば仮に1日に3回、4回の排便があったとしても、残便感があれば、便秘の状態といえるのです。1日に何回も便がでたから便秘ではない、と考えがちですが、そうではない。

 もちろん、朝、お通じがあり、たっぷりとでて、すっきりした。おなかは快調。だけど夕方、また便意を催したとします。快適にでていれば、これはいい。しかし、なんだか便が残っている感じがあれば、それは便秘ということになる。本来、排出されるべきものが、でていないからです。

毎日の便通がデトックスになる

――2~3日に1回しか出ないけれど、便秘ではないと思うという方もいます。

 それで快適ならば、過度に心配することはないですが、いわゆるデトックス、毒素を体外に出すという観点から考えると、やはり毎日、便通があることが望ましいでしょう。私たちは、老廃物の7割以上を便として、2割を尿として出しています。便がたまっているということは、悪いものを体のなかにとどめていることになります。すると大腸の中で、腐敗菌、いわゆる悪玉菌に分類された腸内細菌が増えるなど、腸内環境が悪くなります。

大腸の不調は全身トラブルへ

 たまった便が腸壁に押しつけられる状態が続けば、腸壁の細胞が長く毒素にさらされ、がんを発症するリスクが高まることも考えられます。また、硬い便を出すために気張るようになると、痔(じ)や脱肛(だっこう)も起こりやすくなる。とくに年配のひとは、気張って血圧があがることに、気をつけないといけません。

理想はバナナ状、食物繊維不足で便量が半分に

――理想の便の形とは、どんなものですか。

 理想的なものは、バナナのような形をしていて、太くて、大きいもの。あまり臭いもしないで、色は黄褐色というか、それほど黒くない色。そういう便が理想的です。

 人間の便は、水分がだいたい60~70%ぐらい。残りが、消化されなかった食べ物の残りかすだったり、大腸に生息する腸内細菌(死菌も含む)だったり、腸の細胞がはがれたりしたものです。基本的にある程度、水分がないと、いい便とはいえないわけです。

 実はいま、日本人の便量は、以前と比べて、ぐっと少なくなっています。50~60年前まで、平均的な便量は、400gほどありました。それが200gぐらいまで減ってしまっているといわれています。

 一番の原因は、食物繊維の不足です。かつては1日に20g以上とっていたのが、いまはせいぜい12~14g。便のかさを増やし、腸の機能を高めてくれる食物繊維が少ないことが、便量の減少につながっています。

 Reライフ読者会議メンバーから募集した「腸活・大腸ケア」や「便通」に関する疑問に消化器病専門医の松井輝明さんが答える連載がスタートしました。次回は「同じものを食べても、便秘になる人と、ならない人がいるのはなぜ?」を取り上げます。

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  • 松井輝明
  • 松井 輝明(まつい・てるあき)

    帝京平成大学教授・医学博士

    日本大学医学部卒業。医学博士。日本大学板橋病院消化器外来医長、日本大学医学部准教授を経て現在、帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科 健康科学研究科 健康栄養学専攻長 教授。日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、消化器一般、機能性食品の臨床応用を専門に研究。著書に「大腸活のすすめ~腸は自分で変えられる」(朝日新聞出版)など。

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