<連載> 今日から始める“ 腸” 寿生活Q&A

同じ食事をしても、便秘になる人とならない人がいるのはなぜ?

消化器病専門医・松井輝明さんに聞く「腸活・大腸ケア」(2)ストレス・運動・男女の差

2020.08.24

 夫婦や家族で毎日、同じものを食べているのに、便秘になる人とならない人がいます。いったい何が違うのでしょうか。ストレス? 運動不足? それとも男女差? 消化器病専門医で帝京平成大学教授の松井輝明さんに聞きました。

食事シーン

ストレスが大腸の動きを止める

――新型コロナで、家での食事が増えているせいでしょうか、「ほぼ毎日同じものを食べているのに私は便秘、夫は便秘でない。何が違うの」(60代女性)といった質問がいくつも寄せられています。

 たとえ同じものを食べたとしても、便秘になる・ならないは、ひとそれぞれです。よく運動をしているかどうか、強いストレスをうけてはいないか、ぐっすりと眠れたかなどで、便秘になりやすさは変わってきます。なかでも一番の原因となりそうなのは、ストレスと運動不足でしょうか。

――そもそもストレスで便秘になるのは、どうしてですか?

 ひとの体は、いつもと違う環境など、緊張状態におかれると、自律神経が本能的に「いまは戦闘状態、非常時だ」と認識し、交感神経の働きを活発化させます。血管を収縮させて血圧をあげたり、心臓がドキドキと脈打って心拍数があがったり、すばやくからだが動かせるようにするのです。全力で闘ったり、逃げたりするための「闘争・逃走反応」といわれる生体防御反応です。

 じつはこのとき、交感神経は、胃や腸など消化器系の臓器に対しては、その働きを抑えるように指令をだし、胃や腸の動きを止めてしまいます。目の前の危険にそなえる非常時に、おなかがすいたり便意を催したりしては困るからです。こうしてストレスによる緊張状態が続くと、便通が抑えられ、便秘になりやすくなるわけです。

 旅行に出かけて、いつもと環境が変わったとき、多くの人は便秘になりがちです。明日は大切な何かがあるとき、たとえばみんなの前で発表をするといったときに、緊張状態が過剰になって、逆に下痢をするひともいます。過敏性腸症候群といわれています。

 もともと自律神経には、からだを活動的にさせる交感神経と、リラックスさせる副交感神経の2系統があり、昼間は交感神経が、夜は副交感神経が優位に働くことで、活動と休息のバランスをとっています。大腸など消化器系が活発に動くのは、このうち、副交感神経が優位のとき。便通をよくするためには、リラックスする時間が大切なのです。

運動不足・リズムの乱れで巣ごもり便秘に

 運動不足も便秘を引き起こします。適度にからだを動かすことは、全身の血行をよくして、腸をしっかりと動かすためにも重要です。じっとしている時間が長いと、大腸も動きがにぶくなってしまいます。運動不足や加齢による筋肉の衰えでも、便を押し出す力が弱くなります。介護が必要なお年寄りに便秘が多いのはこのためです。

 適度な運動にはストレスの発散効果があり、心の健康を保つためにも効果的です。腸と脳とは相互に作用しあいますから、精神的なストレスの解消は、腸の健康にもつながるのです。

――新型コロナウイルスによる在宅勤務や外出自粛で、巣ごもり便秘が増えています。やはり運動不足が効いていますか。

 在宅勤務の結果、便秘がちになることで、いかに私たちは、通勤・通学する日常のなかで、よく体を動かしていたかということが実感できます。仕事がデスクワーク中心でも、結構、会社や学校で無意識にいろいろ動き回っているわけです。

 定時におきて食事や活動をし、いろいろなことを考え生活する。そんな日常のリズムが乱れ、刺激の少ない生活になることは、あまりいいことではない。私たちはやはり、ある程度、適度な刺激を脳にうけ、からだを活性化させることを心掛けないといけません。

便秘の悩み、女性は男性の倍近く

――便秘のなりやすさには、性別による違いはありますか?

 厚生労働省の国民生活基礎調査(2016年)によると、男性は約40人に1人、女性では約20人に1人が便秘の症状を自覚しています。女性は男性の倍近く、便秘に悩んでいるひとがいます。

便秘の自覚比率

 男女差が現れるのは10代から。思春期・初潮を迎えると、卵巣から分泌される二つの女性ホルモン、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が、便秘にも関係してきます。エストロゲンには、排便をよくする働きがあるのですが、プロゲステロンは、流産しないように子宮を守るため、腸の動きを鈍らせるよう作用します。このためプロゲステロンの分泌の増える排卵日から生理前にかけて、便秘になりやすくなるのです。

 また更年期になると、女性ホルモンの分泌が急減し、自律神経の乱れが生じやすくなります。夜になってもイライラ、ドキドキしてよく眠れなくなると、副交感神経が働かず、便を押し出す腸の動きも鈍くなります。エストロゲンの減少も、便秘になりやすい方向に作用します。

 一方、男性は50代から便秘を訴えるひとが多くなり、年を重ねるごとにその割合が増えていきます。急増するのは、筋力の衰えがはげしくなる70代から。80歳をこえると、便秘を訴えるひとの割合が、女性とほぼ並びます。

 Reライフ読者会議メンバーから募集した「腸活・大腸ケア」や「便通」に関する疑問に、消化器病専門医の松井輝明さんが答える連載です。次回は「退職したら便秘になった。どうして? どうしたらいい?」を取り上げます。

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  • 松井輝明
  • 松井 輝明(まつい・てるあき)

    帝京平成大学教授・医学博士

    日本大学医学部卒業。医学博士。日本大学板橋病院消化器外来医長、日本大学医学部准教授を経て現在、帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科 健康科学研究科 健康栄養学専攻長 教授。日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、消化器一般、機能性食品の臨床応用を専門に研究。著書に「大腸活のすすめ~腸は自分で変えられる」(朝日新聞出版)など。

  • この連載について / 今日から始める“ 腸” 寿生活Q&A

    全身の健康の要ともいわれる「腸」と「腸内フローラ」。いつまでも健康でいるために、“知っているようで知らない”素朴な疑問について、専門家の先生にわかりやすく答えてもらいました。

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