<連載> 今日から始める“ 腸” 寿生活Q&A

リタイアしたら便秘になった どうして? どうしたらいい?

消化器病専門医・松井輝明さんに聞く「腸活・大腸ケア」(3)生活リズムと加齢の変化

2020.08.31

 それまで快調だったのに、リタイアして仕事をやめたら、便秘気味になってしまった。そんな悩みを抱えるシニアが少なくありません。生活リズムの乱れのせいか、加齢による身体や大腸の衰えなのか。気をつけたい点があると、消化器病専門医で帝京平成大学教授の松井輝明さんは指摘します。

定年後の食生活

リズムの乱れ・大腸の衰えが同時に

--「退職3カ月後くらいから2日に1回しか便が出なくなりました。食事量や酒量は以前と変わりません」(50代後半・男性)、「昔は下痢気味だったのに、引退してから便秘気味に。どうすればいいですか?」(60代前半・男性)。こんな戸惑いの声が寄せられています。

 退職前と比べて生活リズムがどうしても乱れがちになり、それが便秘の原因のひとつになります。毎朝、定時に起きて、通勤し、仕事をする。こうした生活リズムが、ある日突然なくなると、どうしたらいいか、脳も体も戸惑い、本人もわからなくなる。だんだん便通も悪い方向にいくことが少なくありません。

 自由に楽しく時間を過ごせるようになっても、仕事一筋できたひとは、やりたいことがなかなかすぐには思いつかない。せっかく仕事のストレスがなくなったのに、今度はなにもしないことが逆にストレスになってしまうのです。あまり体を動かさずにいると、食欲がなくなり、食事も不規則になってきます。これではやはり便秘になります。

--「便の太さが年とともに細くなってきた気がします。加齢のため? 気にしなくてもいい?」(50代前半・男性)という質問もきています。

 年をとると、どうしても腸の動きは悪くなります。排便のときに必要な筋肉、インナーマッスルも弱くなります。口の中でも年とともに唾液(だえき)の分泌量が減り、口が渇きやすいといった症状を感じる方が増えてきます。唾液が減少すると、口のなかは細菌が繁殖しやすい環境になるため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。

 2018年の厚生労働省の歯科疾患実態調査によると、40歳を超えて、全て自分の歯という人は2人に1人、50歳を超えると3人に2人の人が自身の歯を失うとされています。歯が悪くなれば、かみごたえのある食物繊維や食品がとりづらくなり、食は細ります。こうしたことが積み重なれば、便も細くなり便量も減ってしまいます。

男性は60代から便秘の悩みが急増

 高齢になればなるほど、男女とも便秘を自覚するひとが増えていきます。とくに男性は、40~50代までは便秘に悩むひとが女性よりはるかに少ないのに、60代になってから便秘を自覚するひとが急に増えます(連載2に詳細)。退職による生活リズムの変化もあいまって「若いころは快便だったのに」という嘆きが男性からよく聞かれるのは、このためです。

--便秘を悪化させないためには、どうしたらいいでしょう。

 まずは生活のリズムを整え、体力の低下や大腸の劣化を食い止める努力をすることです。

 たとえば決まった時間に朝起きて食事をする。食べものが胃に入ることで、大腸は動き出し、便が直腸に落ちていき排便につながります。「胃・結腸反射」です。朝食をとることが、便秘予防につながるわけです。そして家のなかで夢中になれる趣味と、外で体を動かす趣味を、定年前にみつけておくことをお勧めします。上手に生活を切り替えていけば、退職する前よりも健康になることができるはずです。

がん死亡率、女性の1位は大腸がん

--シニアがとくに気をつけたい点はなんですか。

 便通や便の様子で気になる変化があったら、消化器系の専門医に相談してみてください。たとえば便が細くなったとき、その原因は、大腸にポリープやがんなどができ、腸管が狭くなったためかもしれません。異常がなければ、それでよし、ポリープがみつかったら、前がん状態として大腸がんの予防や早期発見につながります。

がんの部位別死亡率

 地方自治体などが実施する大腸がん検診で、便に潜血がみつかったときは、必ず精密検査をうけてください。男性は血便という判定に驚いて、精密検査を受ける人が多いのですが、女性は出血に慣れがあるため「不正出血かなにかだろう」と自分で判断し、精密検査を受けずに様子見してしまう人が少なくありません。

 日本で大腸がんと診断される人はいま、年間ざっと14万人。がんの部位別死亡率をみると、大腸がんは、女性ではすでに胃がんを抜いてトップ、男性も肺がん、胃がんに次ぐ、第3位となっています。死亡率はこの半世紀、右肩上がりで上昇し、いまも上がりつづけています。この傾向に歯止めをかけるためには、がんの早期発見が必要不可欠といえるでしょう。

 Reライフ読者会議メンバーから募集した「腸活・大腸ケア」や「便通」に関する疑問に、消化器病専門医の松井輝明さんが答えます。次回は「便やおならの臭いがきついのはなぜ? 食べ物の偏り? それとも腸内細菌?」を取り上げます。

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  • 松井輝明
  • 松井 輝明(まつい・てるあき)

    帝京平成大学教授・医学博士

    日本大学医学部卒業。医学博士。日本大学板橋病院消化器外来医長、日本大学医学部准教授を経て現在、帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科 健康科学研究科 健康栄養学専攻長 教授。日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、消化器一般、機能性食品の臨床応用を専門に研究。著書に「大腸活のすすめ~腸は自分で変えられる」(朝日新聞出版)など。

  • この連載について / 今日から始める“ 腸” 寿生活Q&A

    全身の健康の要ともいわれる「腸」と「腸内フローラ」。いつまでも健康でいるために、“知っているようで知らない”素朴な疑問について、専門家の先生にわかりやすく答えてもらいました。

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