<連載> 今日から始める“ 腸” 寿生活Q&A
リタイアしたら便秘になった どうして? どうしたらいい?
消化器病専門医・松井輝明さんに聞く「腸活・大腸ケア」(3)生活リズムと加齢の変化
それまで快調だったのに、リタイアして仕事をやめたら、便秘気味になってしまった。そんな悩みを抱えるシニアが少なくありません。生活リズムの乱れのせいか、加齢による身体や大腸の衰えなのか。気をつけたい点があると、消化器病専門医で帝京平成大学教授の松井輝明さんは指摘します。

リズムの乱れ・大腸の衰えが同時に
--「退職3カ月後くらいから2日に1回しか便が出なくなりました。食事量や酒量は以前と変わりません」(50代後半・男性)、「昔は下痢気味だったのに、引退してから便秘気味に。どうすればいいですか?」(60代前半・男性)。こんな戸惑いの声が寄せられています。
退職前と比べて生活リズムがどうしても乱れがちになり、それが便秘の原因のひとつになります。毎朝、定時に起きて、通勤し、仕事をする。こうした生活リズムが、ある日突然なくなると、どうしたらいいか、脳も体も戸惑い、本人もわからなくなる。だんだん便通も悪い方向にいくことが少なくありません。
自由に楽しく時間を過ごせるようになっても、仕事一筋できたひとは、やりたいことがなかなかすぐには思いつかない。せっかく仕事のストレスがなくなったのに、今度はなにもしないことが逆にストレスになってしまうのです。あまり体を動かさずにいると、食欲がなくなり、食事も不規則になってきます。これではやはり便秘になります。
--「便の太さが年とともに細くなってきた気がします。加齢のため? 気にしなくてもいい?」(50代前半・男性)という質問もきています。
年をとると、どうしても腸の動きは悪くなります。排便のときに必要な筋肉、インナーマッスルも弱くなります。口の中でも年とともに唾液(だえき)の分泌量が減り、口が渇きやすいといった症状を感じる方が増えてきます。唾液が減少すると、口のなかは細菌が繁殖しやすい環境になるため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
2018年の厚生労働省の歯科疾患実態調査によると、40歳を超えて、全て自分の歯という人は2人に1人、50歳を超えると3人に2人の人が自身の歯を失うとされています。歯が悪くなれば、かみごたえのある食物繊維や食品がとりづらくなり、食は細ります。こうしたことが積み重なれば、便も細くなり便量も減ってしまいます。
男性は60代から便秘の悩みが急増
高齢になればなるほど、男女とも便秘を自覚するひとが増えていきます。とくに男性は、40~50代までは便秘に悩むひとが女性よりはるかに少ないのに、60代になってから便秘を自覚するひとが急に増えます(連載2に詳細)。退職による生活リズムの変化もあいまって「若いころは快便だったのに」という嘆きが男性からよく聞かれるのは、このためです。
--便秘を悪化させないためには、どうしたらいいでしょう。
まずは生活のリズムを整え、体力の低下や大腸の劣化を食い止める努力をすることです。
たとえば決まった時間に朝起きて食事をする。食べものが胃に入ることで、大腸は動き出し、便が直腸に落ちていき排便につながります。「胃・結腸反射」です。朝食をとることが、便秘予防につながるわけです。そして家のなかで夢中になれる趣味と、外で体を動かす趣味を、定年前にみつけておくことをお勧めします。上手に生活を切り替えていけば、退職する前よりも健康になることができるはずです。
がん死亡率、女性の1位は大腸がん
--シニアがとくに気をつけたい点はなんですか。
便通や便の様子で気になる変化があったら、消化器系の専門医に相談してみてください。たとえば便が細くなったとき、その原因は、大腸にポリープやがんなどができ、腸管が狭くなったためかもしれません。異常がなければ、それでよし、ポリープがみつかったら、前がん状態として大腸がんの予防や早期発見につながります。

地方自治体などが実施する大腸がん検診で、便に潜血がみつかったときは、必ず精密検査をうけてください。男性は血便という判定に驚いて、精密検査を受ける人が多いのですが、女性は出血に慣れがあるため「不正出血かなにかだろう」と自分で判断し、精密検査を受けずに様子見してしまう人が少なくありません。
日本で大腸がんと診断される人はいま、年間ざっと14万人。がんの部位別死亡率をみると、大腸がんは、女性ではすでに胃がんを抜いてトップ、男性も肺がん、胃がんに次ぐ、第3位となっています。死亡率はこの半世紀、右肩上がりで上昇し、いまも上がりつづけています。この傾向に歯止めをかけるためには、がんの早期発見が必要不可欠といえるでしょう。
◇
Reライフ読者会議メンバーから募集した「腸活・大腸ケア」や「便通」に関する疑問に、消化器病専門医の松井輝明さんが答えます。次回は「便やおならの臭いがきついのはなぜ? 食べ物の偏り? それとも腸内細菌?」を取り上げます。
-
この連載について / 今日から始める“ 腸” 寿生活Q&A
全身の健康の要ともいわれる「腸」と「腸内フローラ」。いつまでも健康でいるために、“知っているようで知らない”素朴な疑問について、専門家の先生にわかりやすく答えてもらいました。
関連記事
あわせて読みたい
おすすめ記事
\ アンケート・モニター応募受付中! /
アンケート・モニター
-
-
[受付中]現代アートの巨匠、生誕90年 「ゲルハルト・リヒター展」にご招待
2022/06/28
-
-
[受付中]「第二の人生」どう生きる? 時間の使い方のポイントは?
2022/06/21
-
-
[受付中]「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」と「最高の腸活」をプレゼント
2022/06/21
\ 学ぼう、参加しよう!ただいま募集中 /
講座・イベント
-
-
[受付中]Reライフ・サロン「絶対知っておきたい! Reライフ世代の病気のお金」
2022/06/22
-
-
[受付終了]気軽に話そう! 「Reライフ・サロン」を開催します 参加者にクオカード進呈
2022/05/20
-
-
[受付終了]「すてきな年の重ね方」を考えませんか? 読者会議サロン参加者募集
2022/04/27
これまでの活動をリポート
-
-
リフォーム、建替え、住替えに!【リ・バース60】動画公開中!
住宅金融支援機構
2022/05/31
-
-
住み替えでかなえる これからのゆとりある暮らし
みずほ銀行
2022/03/31
-
-
生き方のヒントがたくさん 読者会議メンバーが見たReライフフェス
2022/03/31