<連載> 映画に学ぶ「残された時間の歩き方」

人の可能性は無限 何か始めるのに遅いことなどない

映画「カメラを止めるな!」に学ぶ人生の開き方

2020.09.11

 何か新しいことに挑戦しようとして、「弱気」が心をよぎること、ありますよね。「この歳で・・・」とか、「今さら・・・」とか。でも、そうなのでしょうか? 始めるのに遅すぎるなんてことは、本当はないはずです。人材コンサルタントの田中和彦さんと考える「残された時間の歩き方」。今回は、一昨年に話題をさらった日本映画を素材に、人の可能性について考えてみました。

 「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督)という映画が大ヒットしたのを、覚えていますか?
 無名のキャストによる製作費300万円のインディーズ映画が、興行収入31.2億円(なんと製作費の1千倍!)をあげるなど、長い日本映画の歴史の中でも例を見ない快挙でした。映画の制作そのものが、まさにシンデレラストーリーを地で行くような話だったわけですが、何より一番驚いているのは、出演していた役者さんたちだったと思います。

映画「カメラを止めるな!」
映画「カメラを止めるな!」のワンシーン。写真手前が主演の濱津隆之さん © ENBU ゼミナール

 主演の濱津隆之さんは、日本アカデミー賞の優秀主演男優賞を受賞。真魚(まお)さんはNHK朝ドラ「エール」に出演。しゅはまはるみさんは「コミットする」で有名なCMで見事ダイエットに成功した姿を披露し、デジタル写真集をリリース・・・などなど、ほかのキャストもこの映画をきっかけに、何かしら新しい世界に足を踏み入れています。
 実は、ほとんどの出演者がワークショップへの参加という形で、この映画に関わっていたのです。ワークショップとは「体験型講座」と訳されるもので、「カメラを止めるな!」の映画制作を役者として体験するために、自分で参加費ともいえる受講料を支払って映画に出ていたわけです。映画制作の母体となったのは、映画・演劇、俳優養成の専門学校ENBUゼミナールで、キャストの中に本格的な演技経験のない人が数多く含まれていたのには、そういう背景もありました。

 とりわけ私にとって最も印象的だったのは、テレビ局のプロデューサー役を務めた竹原芳子さん(最近では、「どんぐり」という芸名でも活躍中)でした。
 映画をご覧になられた方は、「関西弁で小柄なおかっぱ頭の、一度見たら絶対に忘れられない」あの人と言えば、すぐに思い出してくれるはずです。出番は少ないのに、作品内に大きなインパクトを残してくれました。
 彼女は、短大卒業後、証券会社の営業ウーマンとして働き、40歳からは裁判所の事務官の仕事に就きました。ここまでは、かなり堅めの仕事をやってきたというキャリアです。
 面白いのは、50歳になった時のターニングポイントの話でした。

映画「カメラを止めるな!」劇中写真
テレビ局のプロデューサーに扮し、印象に残る演技が光った竹原芳子さん(写真右) © ENBU ゼミナール

 NHKの大河ドラマ「秀吉」で、渡哲也さん扮する織田信長が「人間50年・・・」と言って炎の中で死ぬシーンを見た竹原さんは「私、織田信長だったら死んでるやん」と思ったのだそうです。それで「これからは自分のために時間を使おう。今までとは全く違った第二の人生を送ろう」と、決意したのです。
 47歳の時に趣味の落語を文化教室で習うなどして、老人ホームの高座に上がった経験もあった竹原さん。今度は役者になろうと考え、50歳で吉本興業が運営する学校「NSC」でお笑いを学びました。55歳になると演劇関係のワークショップにも通い始め、その流れで「カメラを止めるな!」に参加したのが57歳の時です。
 現在の竹原さんはというと、テレビドラマやバラエティー番組などに出演し、どんな場面でも圧倒的な存在感をもたらすタレントとして活躍されています。

 とかく人間は、年をとってくると、「この年で」「いまさら」などと、変化よりも現状維持を善しとする傾向があります。
 竹原さんの今があるのは、50歳を過ぎても「役者としてデビューを目指そう」と思い、彼女がワークショップ参加者の募集に手を挙げたからに他なりません。
 私は、人の可能性は、何歳になろうとも無限だと信じています。
 周りの人からどう思われようとも、何を言われようとも、自分の信じた道を進み、その可能性に手を挙げた人だけがチャンスをものにします。かつてイギリスの片田舎のおばさんから、オーディション番組を足掛かりに、48歳で歌手として世界デビューを果たしたスーザン・ボイルさんを覚えていますか?

 ご存じカーネル・サンダースさんが、ケンタッキーフライドチキンのフランチャイズ店のグローバル展開を実現したのは、70歳の時でした。逆に、何かをあきらめた瞬間に可能性はゼロになります。「宝くじは買わなければ当たらない」とよく言われますが、手を挙げなければ、新しい人生は開けないのです。

 「この歳で」「いまさら」を禁句にして、あなたも何かに思い切ってチャレンジしてみませんか。残された時間は有限でも、あなたの可能性は無限なのです。

今回登場した映画について

  • 映画「カメラを止めるな!」ジャケ写
    © ENBU ゼミナール
  • 「カメラを止めるな!」(2017年 日本)
    発売・販売元 バップ

    Blu-ray ¥4,800 +税
    DVD ¥3,800 +税
    デジタル配信中


  • © ENBU ゼミナール

  • 田中和彦
  • 田中 和彦(たなか・かずひこ)

    人材コンサルタント/プロデューサー/(株)プラネットファイブ代表取締役

    1958年、大分県生まれ。一橋大社会学部卒業後、リクルートに入社。「週刊ビーイング」「就職ジャーナル」など4情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社ギャガで映画プロデューサー、キネマ旬報社・代表取締役を経て、現職。キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『「定年サバイバル時代」の働き方ルール』(朝日新聞出版社)、『50歳から男振りを上げる人』、『42歳からのルール』(明日香出版社)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。

  • この連載について / 映画に学ぶ「残された時間の歩き方」

    映画はこれまで、実に様々な人生を描いてきました。映画の数だけ、違った人生の形があるとも言えます。人生100年時代。第二の人生を、いかに充実したものにしていくか。そんな「残された時間の歩き方」のヒントを、古今東西の映画をお手本にしながら考え、お届けする連載です。

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