<連載> 腸サイエンスの時代

野菜を毎日とっていても、玉川徹さんのおなかは肉食系?

モーニングショーでおなじみ玉川さんの腸内環境検査結果に学ぶ、腸活のヒント(前編)

2020.09.22

 約1千種類、40兆個もの腸内細菌がすみついている大腸。それらの腸内細菌の集まり「腸内フローラ」における腸内細菌の種類やバランス、さらに腸内細菌が作り出す様々な代謝物質が、人の健康を左右することが近年の研究で分かってきました。腸内環境を調べることで、健康指導するビジネスも広がりを見せています。朝日新聞Reライフプロジェクトは「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)のコメンテーターとして知られ、日々の腸活にも熱心な玉川徹さんに、話題の腸内環境検査を体験してもらいました。解析を行ったのは腸内デザイン推進企業であるバイオベンチャーの「メタジェン」(山形県鶴岡市)。同社CEOで慶応義塾大学先端生命科学研究所特任教授の福田真嗣さんと、玉川さんが対談しながら検査結果を検討、日々の食生活や生活習慣に生かせる「腸活」のヒントを探りました。

玉川徹・テレビ朝日ディレクター兼コメンテーター
玉川徹さん (撮影:村上宗一郎)

期待とは裏腹 検査結果が映した腸内環境の実像

 対談ではまず、玉川さんに日頃の腸活ぶりを聞いた。
 40代のころ、大腸内視鏡検査でポリープが見つかったのをきっかけに、「腸活」を意識し始めたという玉川さんは、野菜は毎食意識してとり、肉は控えめにしていると語る。「若い頃より好きになってきた」という肉だが、食べるなら昼食で、夕食は魚主体にしているという。朝食では、様々な野菜を自ら煮込んだ野菜スープを欠かさない。好物の納豆は、毎日一度は必ず食べ、知人に勧められたビフィズス菌のサプリメントも長く続けているそうだ。

 聞いた限りでは実に健康的な食習慣で、良い検査結果が期待できそうな印象。しかし、その結果は、玉川さんにとっては予想外の内容だったようだ。「ちょっと納得できないですね。気を使っているつもりの僕の食生活が、反映されていないみたいだ・・・・」
 検査では、玉川さんの便をサンプルとし、「どのような菌がどのくらいいるか」、また「どのような代謝物質がどのくらいあるか」を網羅的に解析している。その結果は「バクデロイデス属」の菌の割合が多かった。玉川さんが心がける食習慣とは裏腹に、動物性たんぱく質や、脂肪をよく摂取する人に多くみられる腸内フローラのタイプだったのだ(図)。

十人十色の腸内細菌の構成
日本人成人49人の腸内細菌の種類別相対存在比(%)

 十人十色の腸内細菌の構成
データ提供:慶応義塾大学先端生命科学研究所 福田真嗣特任教授

 穀物や海藻、キノコや根菜類などの食物繊維を豊富に含む食事をよくとる人に多い「プレボテラ属」の細菌は、玉川さんの腸内にはわずか0.1%と、ほとんどいなかった。
 最新の研究で、腸にはたくさんの種類の腸内細菌が存在する、多様性が高い状態ほど健康によいことがわかってきた。腸内の多様性を上げるには、好き嫌いをせずに色々なものを食べ、特に様々な種類の食物繊維やオリゴ糖など、腸内フローラのエサになる成分を、大腸にたくさん届けるのが良いとされている。
 「食物繊維をたくさんとろうと、毎朝野菜スープを食べ続けてきたのに・・・・」と玉川さん。
 「一口に食物繊維といっても、不溶性のものや水溶性のもの、さらにはそれぞれの中にも様々な種類の食物繊維があります。だから、自分の腸内細菌が好む種類の食物繊維をとることが大事なのです」

「脳腸相関」 肉好きになった理由は腸内細菌?

 ここで福田さんは、興味深い仮説を紹介した。腸と脳は迷走神経でつながっており、またホルモンを介してもやり取りして、お互いに影響し合っていることが明らかになった。これを「脳腸相関」という。「私は、人が何かを食べたいと思った時、それは腸内細菌が欲しているのではないかと考えています」。つまり、人の食の好みは、実は腸内細菌が決めているのではないかという仮説だ。

福田真嗣さん
福田真嗣さん (撮影:村上宗一郎)

 「玉川さんは、若い頃より肉が好きになってきた、と話しておられましたね」
 「ええ。普通なら、年をとるとあっさりしたものが食べたくなるといいますよね。だから自分でも不思議に感じていました。でも、僕のおなかの中に肉食系の細菌が多かったとすれば、彼らが肉を求めていたということなのか・・・・」
 「私は、その仮説を検証しようと思って研究を続けているのですが、その可能性はあるかもしれません」
 「ただ、玉川さんのおなかには、全体の0.1%と極めてわずかながらもプレボテラ属の菌が存在していました。もしかするとこれは、かつて玉川さんの腸内にたくさんいた菌の残党なのかもしれません」。福田さんによると、ベジタリアンの腸内にはプレボテラ属の菌が多く、大麦や玄米、雑穀などをよく食べるような人の腸内にも多いそうだ。このため、食生活が欧米型に変わって食物繊維摂取量が減ってしまったことで、プレボテラ属菌の割合も減ってしまったのではないかと考えられる。「プレボテラ属の菌は、腸の中から全く見つからない人もよくいます。今回、玉川さんの腸内からはわずかながら検出されましたので、今後食習慣を変えることで、増やすことは可能です。玉川さんは、玄米や大麦、雑穀などはあまり好まないとの話ですが、プレボテラ属の菌を増やせば、その嗜好(しこう)も変わるかもしれませんよ」

食習慣が変われば、腸内フローラも変わる

 「腸内フローラは、後天的に変えられるものなんですね」
 「変えられます。一卵性の双生児でも、食習慣を含む生活習慣が異なれば、腸内フローラも異なります」
 玉川さんは、毎日ビフィズス菌のサプリメントをとり続けている割に、ビフィズス菌が含まれる「ビフィドバクテリウム属」の細菌比率が、平均を大きく下回っていた。
 「実は、サプリメントなどで摂取したビフィズス菌は、基本的には腸内に定着してくれないのです」と、福田さん。細菌は、腸から排出されるスピードを上回る形で増殖して、初めて腸内にとどまっていられる。玉川さんのおなかにすみついている腸内細菌は、いわば、その腸内環境下で勝ち残ってきたエリートたち。新たに外から入って来た菌の多くは生存競争に敗れ、流れ出てしまうのだ。「毎日たくさんとり続けることで、見かけ上は腸内にとどまり、よい効果を発揮してくれる場合もあります。ですが、今回の結果を見る限り、十分には定着できていないようです。ビフィズス菌にも様々な種類があります。お使いのサプリメントの菌種は、玉川さんの腸に合っていない可能性もありますね」

ぴったりなヨーグルトやサプリメントの見つけ方

 「では、自分に合う菌はどうやって選べばよいのでしょう?」
 「ヨーグルトやサプリメントなどは、同じ商品を2週間ほど摂取し続け、その間に便通が良くなるなど、何らかの効果が体感できるかどうかを試してみることです」
 「僕は、便通はいいんですよ。便秘はしたことがない」
 「便通が一番分かりやすいのですが、最近疲れにくくなったなとか、肌荒れが改善したといった効果が体感できればよいと思います。2週間続けても、何の変化も感じられないようなら、効いていない可能性が高い。そんな時は、別のものに変えてまた2週間試してみる。そうやって自分の腸に合うものスクリーニングして、合うものを探していくのが一つのやり方です」

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  • 福田真嗣
  • 福田 真嗣(ふくだ・しんじ)

    慶応義塾大学先端生命科学研究所特任教授・株式会社メタジェン代表取締役社長CEO

    1977年生まれ。2006年、明治大学大学院農学研究科博士課程修了。博士(農学)。理化学研究所基礎科学特別研究員などを経て、2012年より慶応義塾大学先端生命科学研究所特任准教授。2019年同特任教授。2015年メタジェン設立。専門は腸内環境制御学、統合オミクス科学。著書に「もっとよくわかる!腸内細菌叢(そう) 健康と疾患を司(つかさど)る”もう一つの臓器”」(羊土社)など。

  • 玉川徹
  • 玉川 徹(たまかわ・とおる)

    テレビ朝日ディレクター兼コメンテーター

    1963年宮城県生まれ。1989年京都大学農学部修士課程修了後、テレビ朝日入社。「内田忠男モーニングショー」「サンデープロジェクト」「ザ・スクープ」「スーパーモーニング」などを経て、現在「羽鳥慎一モーニングショー」を担当。

  • この連載について / 腸サイエンスの時代

    腸、とくに大腸にすむ数百種類、百兆個におよぶ細菌たちがつくる「腸内フローラ」。その状態が、心や体の健康、美容などに大きく関わっていることが最近わかってきました。21世紀は腸の時代ともいわれる今、各分野の最新研究を紹介します。

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