<連載> 腸サイエンスの時代

食生活の効果? 腸で生み出される健康成分量がとても多い玉川徹さん

モーニングショーでおなじみ玉川さんの腸内環境検査結果に学ぶ、腸活のヒント(後編)

2020.09.21

 私たちの健康を左右する「腸内フローラ」。近年の研究で、腸内細菌の種類やバランス、さらに腸内細菌たちが作り出す様々な代謝物質が、免疫をはじめとする様々な体の機能に大きな影響を与えていることが分かってきました。朝日新聞Reライフプロジェクトは「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)のコメンテーターとして知られ、日々、腸を意識した生活を送っている玉川徹さんに、腸内環境検査を体験してもらいました。その結果から、「腸活」のヒントをさぐる連載の後編。今回も玉川さんと、腸内デザイン推進企業であるバイオベンチャーの「メタジェン」(山形県鶴岡市)CEOで、腸内環境研究の第一人者である慶応義塾大学先端生命科学研究所特任教授、福田真嗣さんの対談を通して、代謝物質のうち体に良い成分として注目されている「短鎖脂肪酸」の働きと、その増やし方について学びます。

玉川徹さんと福田真嗣さんの対談
腸内環境と健康について語り合う玉川徹さん(右)と、福田真嗣さん(撮影:村上宗一郎)

注目の健康成分「短鎖脂肪酸」

 今回の腸内環境検査では、腸内フローラから作り出される代謝物質の種類や量も調べ、そのスコアを算出している。腸内細菌は、大腸に届いた食物繊維やオリゴ糖などを発酵させ、様々な代謝物質をつくりだす。中でも短鎖脂肪酸は、健康を維持する上で、極めて重要な物質であることがわかってきた。
 玉川さんの腸内代謝物質スコアは、100点満点の80点と、かなり良い評価だった。しかし、結果を細かく見ていくと、問題点も浮かび上がった。
 短鎖脂肪酸の中でも「酢酸」の量が際立って多かった。酢酸は、炎症を抑えたり感染症を予防したりするほか、肥満を予防する効果があることも知られている。「私が今までに見た検査結果の中でも、群を抜いて酢酸の量が多いですね。平均の3倍近い値です」と、福田さんも驚く。
 これは、玉川さんが、ビフィズス菌のサプリメントを毎日摂取し続けた効果なのだろうか。ビフィズス菌は、食物繊維やオリゴ糖を分解して酢酸などを作り出すことが知られている。「ビフィズス菌の摂取だけで、平均の3倍も酢酸が増えるとは考えにくいです」
 だが、仮にお酢などの形で酢酸成分をたくさん摂取したとしても、それらはほとんど小腸で吸収されるはずだ。なので、これらは大腸の腸内細菌がつくったものと考えられる。「玉川さんのおなかの中には、酢酸をたくさん作り出せるすごい菌がいるのかもしれませんね」と、福田さんは語る。

食物繊維の上手なとり方は?

 他の短鎖脂肪酸に注目すると、抗肥満作用があるとされる「プロピオン酸」はほぼ平均値。逆に、免疫系に影響し、良い健康効果が期待できる「酪酸」は、かなり少なかった。
 「酢酸が多いのは良いのですが、バランスも大事。今後は、酪酸が増えるように食生活を改善することをお勧めします」
 「どうすれば良いのですか?」
 「酪酸を産生する菌として、クロストリジウム目の菌がいます。こうした菌群は、イヌリンなどの水溶性食物繊維を好みます」。イヌリンが多く含まれるチコリーやタマネギなどを意識してとるのもひとつの方法だ。「しかし、それらが玉川さんの腸にあうかどうかは、詳しく調べてみないと断言できませんが」

 「食物繊維をたくさんとるために、野菜スープを毎朝食べ続けるなど、意識して野菜をとってきたつもりです。それでも足りないとなると、どうしたものか。食事量自体を、これ以上増やすわけにもいきませんよね」
 「効率的に食物繊維をとるには、食事の質も重要です」と、福田さんは助言した。例えば100グラムあたりの食物繊維の含量が多い海藻やキノコを意識してとったり、穀物の取り方にも工夫の余地がある。「日本人は主食としてたくさん穀物をとりますが、白米ではなく大麦や玄米を加えたり、五穀米にしたりするのです。大麦にはβグルカンという水溶性食物繊維が含まれていますので、腸内細菌のエサになります」
 「麦が良いといっても、そんなに食べられませんよ。食物繊維のサプリメントはどうでしょう」
 「どうしても不足しがちなら、サプリメントで補うのも有効です」
 「とりすぎて問題、ということはありませんか?」
 「小腸では吸収されない成分ですから、たくさんとっても大丈夫です。基本的に使われなかった分は便として排出されますので。人によっては、少しおなかがゆるくなる可能性もありますが」

似た腸内フローラでも短鎖脂肪酸量は違う、その理由は?

 ここで福田さんは、日本人の成人男女48人と、今回調べた玉川さんの腸内フローラの構成比を比べたグラフを改めて示した(図)。見れば十人十色、1人として同じ構成比の人はいない。さらに、短鎖脂肪酸量を示したグラフをあわせて考えると、腸内フローラの構成が似ていたとしても、短鎖脂肪酸の産生量には違いがあることがわかる。

日本人成人49人の腸内細菌の種類別相対存在比(%)と短鎖脂肪酸量(μ mol/g)

日本人成人49人の腸内細菌の種類別相対存在比(%)と短鎖脂肪酸の産生量(u mol/g)
データ提供:慶応義塾大学先端生命科学研究所 福田真嗣特任教授 ※グラフの一番上が玉川徹さんの検査結果

 「その差を左右するものこそ、食生活なのです」と福田さん。「玉川さんの腸内環境検査結果で酢酸の量が突出して多かったのは、腸の中にすごい菌がいるのかもしれませんし、毎朝食べている野菜スープに、酢酸をつくる菌とマッチした成分が含まれているのかもしれません」
 「腸内で作られる酢酸が多いと、どんな良いことがあるのでしょうか?」
 「酢酸は免疫細胞に作用して免疫機能を増強したり、腸管のバリアー機能を高めたりします。腸管の蠕動(ぜんどう)運動を促進したり、抗肥満効果を発揮したりと、いろいろな効果があることが報告されています」。

新型コロナの発症にも影響? さらなる研究に期待も

 今、新型コロナウイルスの感染が世界で広がっているが、たくさんの酢酸を生み出す腸内フローラを持つ玉川さんは、感染しにくい体質である可能性があるかもしれないと福田さんはいう。
 「まだ研究段階ではありますが、欧米人と日本人とで新型コロナウイルスの重症化率に違いがあるのは、腸内フローラのバランスの違いや食物繊維の摂取量、短鎖脂肪酸の産生量など、腸内環境の違いが影響している可能性もあるのではないかと考えています。これから研究が進めば、数年のうちに明らかになるかもしれません」

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  • 玉川徹
  • 玉川 徹(たまかわ・とおる)

    テレビ朝日ディレクター兼コメンテーター

    1963年宮城県生まれ。1989年京都大学農学部修士課程修了後、テレビ朝日入社。「内田忠男モーニングショー」「サンデープロジェクト」「ザ・スクープ」「スーパーモーニング」などを経て、現在「羽鳥慎一モーニングショー」を担当。

  • 福田真嗣
  • 福田 真嗣(ふくだ・しんじ)

    慶応義塾大学先端生命科学研究所特任教授・株式会社メタジェン代表取締役社長CEO

    1977年生まれ。2006年、明治大学大学院農学研究科博士課程修了。博士(農学)。理化学研究所基礎科学特別研究員などを経て、2012年より慶応義塾大学先端生命科学研究所特任准教授。2019年同特任教授。2015年メタジェン設立。専門は腸内環境制御学、統合オミクス科学。著書に「もっとよくわかる!腸内細菌叢(そう) 健康と疾患を司(つかさど)る”もう一つの臓器”」(羊土社)など。

  • この連載について / 腸サイエンスの時代

    腸、とくに大腸にすむ数百種類、百兆個におよぶ細菌たちがつくる「腸内フローラ」。その状態が、心や体の健康、美容などに大きく関わっていることが最近わかってきました。21世紀は腸の時代ともいわれる今、各分野の最新研究を紹介します。

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