<連載> 今日から始める“ 腸” 寿生活Q&A

腸活に効く食べ物や食べ方は? 食物繊維、水溶性と不溶性の役割は?

消化器病専門医・松井輝明さんに聞く「腸活・大腸ケア」(6)腸活食材と食物繊維

2020.09.23

 腸内環境を整える「腸活」のポイントのひとつは食物繊維です。お通じをよくしたり、腸内フローラを育てたり。別名「第6の栄養素」。その役割や効果的に摂取できる食べ物・食べ方について、消化器病専門医で帝京平成大学教授の松井輝明さんに聞きました。

食物繊維入り食材

大腸の「畑づくり」は食物繊維から

――「腸内を活性化する食べ物は何ですか」(60代男性)、「有効な食べもの、食べ方を知りたい」(70代男性)、「腸の動きが活発になる食物があれば教えてほしい」(50代女性)など、腸活に必要な食べ物や食べ方について、数多くの質問がきています。

 大腸を整える「腸活」は、畑づくりとよく似ています。畑を上手に耕して、土の状態をよくしないと、いくら良い種をまいても花は咲きません。便通を改善したり、腸内フローラを育てたりする腸活も同じです。まずは大腸の状態をよくして、様々な腸内細菌にすみついてもらい、バランスよく働いてもらう必要がある。そのための畑づくりに欠かせないのが、不溶性と水溶性の2種類に大別される食物繊維です。

 水に溶けない不溶性食物繊維の代表的な成分は、植物性のセルロースです。穀類やイモ類、豆類、野菜類、キノコなど、様々な食材に含まれています。一方、水溶性食物繊維には、海藻からとれるアルギン酸ナトリウムや、大麦などに含まれるβ(ベータ)グルカン、ごぼうや玉ねぎに多いイヌリン、りんごやみかんといった果実に入っているペクチンなど、様々な種類があります。

食物繊維入り食材一覧

不溶性はかさ増し、水溶性はエサとして

――不溶性と水溶性、どちらも人の消化酵素では分解・吸収できない食べ物の残りかすです。それがどう大腸の畑づくりに役にたつのですか。

 不溶性の食物繊維には、日頃のお通じをよくする効果が期待できます。役割は大きく二つ。ひとつは便のかさ増しです。便の量が増えることで腸管のぜん動が活発になり、便通を促します。もうひとつは腸管の掃除です。大腸の中を移動しながら腸壁にくっついた古い便かすをからめとってくれます。

 水溶性の食物繊維も二つの役目を担っています。まず便を軟らかくして、滑りを良くしてくれます。不溶性食物繊維による便のかさ増しとともに、日頃の排便がしっかり、すっきりするよう、助けてくれるわけです。

 もうひとつ、水溶性ならではの役割が、腸内の細菌のエサとなることです。

 大腸にすむ有用菌の多くは、水溶性の食物繊維が大好物です。水溶性食物繊維が多くとどけば、こうした腸内細菌はこれをエネルギー源に自分たちの活動や勢力を広げていけます。細菌の宿主となる人間側も、細菌がだす生成物などを活用し体の健康を保ちます。共存共栄の関係です。

食物繊維が不足する現代の日本人

 その逆に水溶性の食物繊維が不足すると、これが主食の腸内細菌は勢いが衰え、たんぱく質や脂を食べる腸内細菌との間で勢力が逆転し、腸内環境のバランスが悪化していく恐れがあります。腸内フローラを良くしていくには、水溶性食物繊維をしっかりとることが欠かせないのです。

――食物繊維と便通について、「夫は毎朝レタスのサラダを食べていますが、便秘気味です」(40代女性)という質問がきています。

 葉物野菜は、それほど多く食物繊維を含んでいるわけではありません。たとえばレタスやキャベツの場合、100gあたりの食物繊維は、不溶性と水溶性をあわせても1~2gです。1日に取るべき食物繊維の目標量は女性で18g、男性で20gとされています。野菜だけでは、なかなか必要量をとりきれません。

食物繊維の摂取の変化

 もともと日本人の食物繊維の摂取量は、この半世紀、減り続けていて、いまは12~14gほどといわれています。一番の原因は、穀物からの摂取量が減ったことです。戦後になって主食のごはんが、麦や雑穀入りから精米した白米に切り替わり、その後はごはんそのものを以前のようには食べなくなったことが影響しています。

理想は旅館の朝食 長寿地域の特徴は

――どうしたらいいですか。

 おすすめは、旅館の朝ごはんのような食事です。ごはんとワカメ入りのおみそ汁に、主菜のほかに、ヒジキの煮物などの小鉢やのりや納豆がついてくる。いろいろな食材から、様々な種類の食物繊維がとれます。

 京都府の京丹後地区は長寿の地区として知られています。この地区のお年寄りと京都市に住む同じ年代層の方々を対象に、それぞれの食生活と腸内細菌の様子を比較した興味深い研究があります。海藻類、雑穀、イモ類、キノコなどの摂取量が、いずれも京丹後の人たちのほうが多く、腸内には、こうした食物繊維をエサにする菌が多くすみついていたのです。

 健康な人の大腸にはざっと1千種の細菌が生息しているといわれています。一方、生活習慣病など、様々な病気をもつひとの腸内フローラを調べると、細菌の種類がへり、500種程度まで半減している例もいくつもあがっています。

 こうした一連の研究で、食物繊維や腸内フローラの重要性は、様々な角度から再確認され、長寿や健康とのつながりもわかってきました。まずは、いろいろな食材から、食物繊維をしっかりと。とくに不溶性の食物繊維に気を配るよう、してみてください。

 Reライフ読者会議メンバーから募集した「腸活・大腸ケア」や「便通」に関する疑問に、消化器病専門医の松井輝明さんが答えます。次回は「乳酸菌とビフィズス菌の違いは? 大腸と小腸の役割は?」を取り上げます。

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  • 松井輝明
  • 松井 輝明(まつい・てるあき)

    帝京平成大学教授・医学博士

    日本大学医学部卒業。医学博士。日本大学板橋病院消化器外来医長、日本大学医学部准教授を経て現在、帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科 健康科学研究科 健康栄養学専攻長 教授。日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、消化器一般、機能性食品の臨床応用を専門に研究。著書に「大腸活のすすめ~腸は自分で変えられる」(朝日新聞出版)など。

  • この連載について / 今日から始める“ 腸” 寿生活Q&A

    全身の健康の要ともいわれる「腸」と「腸内フローラ」。いつまでも健康でいるために、“知っているようで知らない”素朴な疑問について、専門家の先生にわかりやすく答えてもらいました。

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