なぜ「マナー議論」は難しいの? コロナ禍でプロが伝えたいこと

マナーコンサルタント西出ひろ子さんに聞く(後編)

2020.10.12

 新型コロナウイルスの影響で生活が大きく変わる中で、マナーのあり方が改めて問われています。9月の本プレゼント企画で紹介した『知らないと恥をかく 50歳からのマナー』の著者でマナーコンサルタントの西出ひろ子さんに、なぜマナーを議論するのが難しいのかを聞きました。

西出ひろ子さん
マナーコンサルタントの西出ひろ子さん

Q:コロナ禍で在宅勤務が増え、西出さんの新刊『超基本 テレワークマナーの教科書』は刊行前からSNSで大反響でした。マナーの議論はなぜ難しいのでしょうか。

 それは皆さんが思っているマナーが、型(カタ)にこだわっているからではないでしょうか。マナーとは本来、相手の立場にたつ思いやりの心です。残念ながら日本では、まだあまり理解していただけていないように思います。
 『超基本 テレワークマナーの教科書』では、まだ本が出来上がってもいないときに、そのタイトルだけで、私が勝手にテレワークのマナーの型を作っていると言われました。「マナー講師がこう言っているから、こうしなきゃいけないのか?!」と反発や混乱がありました。私はそのような押し付けや強制することは書いておらず、あくまで一つのご提案として、皆さまのテレワークのお悩みを解決してほしいとのご要望から書いたのですが……。本来、マナーの型、それに縛られる必要はありません。

 日本では、マナーをしきたりや慣習だと勘違いしている人が多いと思います。メディアも、しきたりや慣習をマナーという言葉で伝えてきています。繰り返しになりますが、本来マナーとは、相手のことを思いやることです。

 茶道に表千家や裏千家などがあるように、さまざまな流派があります。エスカレーターの左右どちら側に立つのかも地域差があります。マナーにもいろいろな型が存在するわけです。ですので、マナーの答えは一つではないということです。

食事マナーイメージ

Q:マナーというと、名刺の渡し方やテーブルマナーを想像します。一定のルールはあるのではないですか? 

 フォークやナイフの使い方や、箸使いの基本はもちろんあります。ただ、やみくもに形式だけを覚え、それを実践していれば良いというわけではありません。特に年齢を重ねてからは、マナーの本質を理解することは人として大切なことと感じます。例えば、グラス同士をぶつけて音を立てる乾杯は、正式なマナーではありません。しかし、乾杯をする相手がグラスを合わせてきたら、同じように合わせるのもマナーです。あなたがグラスを遠ざけたら、相手の気持ちを無にしてしまうからです。

 日本では、マナーは儀礼とも混同して伝えられていますが、真のマナーは思いやりです。儀礼とはプロトコル(国際儀礼)のことで、「ノックは4回」などの国際ルールです。マナーは、TPPPO(Time=時、Place=場所、Person=人・相手、Position=立場、Occasion=機会・場合)に応じて変わっていくものです。

 ですから、どうか「マナー警察」にはならないでほしいと思います。「あなたは間違っている」と指をさしたら、残り3本は自分に向かっているのを忘れないでほしいのです。相手を攻撃したつもりが、逆に自分に返ってきます。逆の立場に立ったとき、あなたが同じことを言われたらどう思うでしょうか。本来、皆さん自由ですし、いろんな考えがあっていいはずです。自分と同じ考えの人はいません。それを受け入れなくても、受け止められる人が、マナーのある人だと思います。

 私も53歳。人として、心広く、心深く、自分とは異なる考え方の人様に対しても、柔軟に愛というマナーの心をもって受け止められる人間力を身につけてまいりたいと思います。

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  • 西出 ひろ子(にしで・ひろこ)

    マナーコンサルタント

    大妻女子大学卒業後、国会議員などの秘書職を経てマナー講師として独立。1991年、31歳でマナーの本場・英国に単身渡英し、現地でオックスフォード大学大学院遺伝子学研究者(当時)と起業。帰国後、多くの企業でマナーコンサルティングを行うほか、ドラマ・映画のマナー指導もしている。著書・監修書に28万部の『お仕事のマナーとコツ』(学研プラス)、『あなたを変える美しい振る舞い』(ワニブックス)など、著書累計100万部を超える。 ビジネスデザイナー マナー西出ひろ子・マナーズ博子としても活躍中。

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