脳や脊髄(せきずい)といった中枢神経系の炎症によって、視力の低下や手足のしびれなどが起きる難病「多発性硬化症」と「腸内細菌」のかかわりが注目されている。国内で8月、相次いで論文が発表され、腸内細菌をコントロールすることで病気の発症をゆるやかにできる可能性があるという。
神経を覆うカバーの「髄鞘(ずいしょう)」には、神経の情報を早く伝える役割がある。多発性硬化症は、自分自身の免疫の細胞によって髄鞘が攻撃され、神経の情報が伝わりにくくなる病気で、30歳前後で発病することが多い。40年ほど前の国内の患者数は約1千人だったが、急増していまは国内で約2万人とされる。再発を繰り返す特徴があり、薬によって症状を抑えられる人が増えたが、患者の2~3割は進行して薬が効かず、脳が萎縮したり歩行が難しくなったりする。

ヒトの腸内には、1千種類、数十兆個とも言われる腸内細菌がいる。腸内細菌のバランスの乱れが病気やアレルギーとかかわっていることが近年、わかってきた。
理化学研究所などの研究チームは27日、小腸にいる2種類の腸内細菌が炎症を促すことをマウスを使った実験で明らかにしたとする論文を、英科学誌「ネイチャー」に発表した。
理研の大野博司チームリーダー(腸管免疫学)らは、同じ条件で育てたマウスに、4種類の抗生物質のいずれかをのませて腸内細菌のバランスを変えた後、多発性硬化症と似た病気を再現させた。抗生物質によって「エリシュペロトリカセエ科」に属する新種の腸内細菌が小腸内からいなくなったマウスだけが、炎症反応を抑えられた。
(後藤一也)
(2020年9月1日付 朝日新聞デジタル「アピタル」から)
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世界各国で次々と明らかにされる「腸内フローラ」の可能性。朝日新聞の医療・健康関連記事を集めたサイト「apital(アピタル)」から、最新トピックスを紹介します。
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