<連載> 大腸最前線

小さく生まれた赤ちゃんの命の支え ビフィズス菌の直接投与で

新生児ケアと腸内フローラ(1)低出生体重児の腸内環境を整える

2020.10.23

 私たちのからだには、感染症などのリスクに対処する、腸内フローラの巧みなメカニズムが備わっています。ただ、小さく生まれた赤ちゃんはこの仕組みをうまく発達させることができません。外敵から命を守るカギとなるのがビフィズス菌優勢な腸内フローラ。その発達をサポートする試みが広がっています。

眠っている赤ちゃん

専用菌で感染予防や成長促進をサポート

 免疫力の向上や感染症の予防の面でも注目される腸内細菌は、生まれたばかりの赤ちゃんにも欠かせない存在だ。とりわけ小さく生まれた「低出生体重児」にとって、腸内環境を早期に整え、育てていくことが、命にもかかわる課題のひとつとなる。

 新生児集中治療室(NICU)で広く行われるのが「有用菌」として知られるビフィズス菌などの直接投与だ。出生体重が1500g未満の極低出生体重児らを対象に、専用のビフィズス菌を蒸留水やミルクに溶かして投与する。

 「人工呼吸器でのケアとともに、感染症の予防や成長促進のため、ビフィズス菌優勢な腸内フローラに整えてあげることがとても大切なサポートです」と、順天堂大学の清水俊明教授は指摘する。

清水俊明・順天堂大学教授
順天堂大学小児科教授の清水俊明さん(撮影:篠田英美)

 もともと赤ちゃんの腸内は、生後1週間ほどでビフィズス菌が最優勢となり、離乳期になるまで、全体の9割以上を占める状態が続くとされる。

 腸内フローラをつくるのは、出産時に母親の産道などで取り込んだ様々な細菌群。出生直後は、こうした細菌群のうち、大腸菌や黄色ブドウ球菌などの日和見菌や有害菌が優勢だが、その後の数日で、ビフィズス菌は一気に活動を活発化して、感染症のリスクなどから赤ちゃんを守ってくれる。

 そんな逆転現象をもたらすのが、母親の母乳に多く含まれるオリゴ糖などのビフィズス菌増殖因子。ビフィズス菌の大好物で、勢力拡大のエネルギー源となる。いわば母乳は、赤ちゃんとビフィズス菌の双方に栄養素を送り届け、赤ちゃん自身の成長だけでなく良好な腸内フローラを整える役割がある。

 しかし、低出生体重児は帝王切開が多いうえ、NICUへの入院で母乳の開始時期も遅れがちになるなど、こうした母体からの恵みになかなかあずかれなかった。さらに、感染予防のために抗生物質を使うことも多く、ビフィズス菌優位な腸内フローラの形成を遅らせてしまうことになる。

腸内フローラの変化

ビフィズス菌優位の腸内環境を早く実現

 ビフィズス菌の直接投与は低出生体重児の命を支える役目を担う。

 清水教授によると、早産や低出生体重児の腸内フローラは、ビフィズス菌が優勢になるまでに約7週間かかっていた。それが生後10時間以内にビフィズス菌を投与した場合は2週間で、生後40時間近くたってから投与した場合でも4週間でビフィズス菌優位の腸内フローラを実現したという。

 そのほかにも、ビフィズス菌を投与することで、消化吸収能が早期に正常化し、適正な体重増加や感染症発生率の低下、入院日数の短縮など、低出生体重児の健全な成長を促すことが報告されている。

【大腸最前線4 新生児ケアと腸内フローラ】

  • 清水 俊明
  • 清水 俊明(しみず・としあき)

    順天堂大学小児科教授

    1983年順天堂大学医学部卒業。1988年同大学院医学研究科修了。イエテボリ大学(スウェーデン)、アデレード大学(オーストラリア)に留学。順天堂大学小児科助教授を経て2007年から現職。日本小児科学会、日本母乳哺育学会、日本脂質栄養学会、日本ヘリコバクター学会などで理事を歴任。現在日本小児栄養消化器肝臓学会の理事長。

  • この連載について / 大腸最前線

    大腸にすむ腸内細菌は、検査法の飛躍的な進歩などにより、私たちの健康増進に役立つさまざまな働きが明らかになってきました。腸内細菌を活用した最新の治療例や、医療現場の動向などを、分かりやすくご紹介します。

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