<連載> 映画に学ぶ「残された時間の歩き方」

あなたは運のいい人? 「イエス」と言い続けて人生の道を開け

映画「イエスマン」を見て改めて考える 「ポジティブ思考」の意味

2020.11.06

 イエスマンといえば、自分の考えがなく何でも無批判に人に従う、ワンマン社長の取り巻きにいるような人のイメージを持たれるかもしれませんね。でも、人に頼りにされたなら、いやな顔をせず積極的に引き受けて、決して「ノー」とは言わない、そんなイエスマンならイメージはグッと上がります。いわば、ポジティブ思考のイエスマンです。今回は、2009年公開のアメリカ映画「イエスマン 〝YES〟は人生のパスワード」を教科書に、人材コンサルタントの田中和彦さんと、ポジティブ思考の重要性について考えてみましょう。

 銀行員カール(ジム・キャリー)は、貸し付け担当。ローンの申請用紙に「却下」のスタンプを押し続けるのが日課になっていました。 彼は、電話が鳴っても出ようとしませんし、友人から誘われても「行かない言い訳」から考えます。隣人から話しかけられそうになると、愛想笑いでやり過ごし、街でチラシを配られても全くの無視。彼は「ノーマン(NO MAN)」だったのです。
 そんな彼は、銀行での昇進話が立ち消えになってしまいます。離婚した元妻が恋人と一緒のところに出くわしてしまったりもして、まったくさえない、ツキのない人生を送っていました。

映画「イエスマン “YES”は人生のパスワード」の劇中写真
主人公の銀行員カールを演じるジム・キャリー © 2009 Warner Bros. Entertainment Inc.

 そんな彼が、ひょんなことから怪しげなセミナーに参加します。そして、その主宰者から「この会場を出た瞬間から、どんなことがあっても〝イエス〟と言うと誓いなさい。もし誓いを破れば、物事は必ず悪いほうへ進む」と、脅しのような感じで誓約を迫られてしまうのでした。半信半疑で会場を後にするカール。でも、彼は半ば開き直って、すべてのことに「イエス」と答えるようになります。
 映画では「ノーマン」から「イエスマン」へと転じて、極端とも言えるポジティブ思考を徹底したカールが、次々とチャンスをものにしていく・・・。そんな、爆笑もののコメディーでした。

 「ポジティブ思考」といえば、私に、こんな体験談を話してくれた人がいました。
 「あなたは今までの人生を振り返ってみて、運がいいと思いますか? それとも運が悪いと思いますか?」
 採用面接の場でMさん(63)は、人事部の採用担当者から唐突にそう質問されました。一瞬答えに窮しながらも「運がいいとも悪いとも思ったことはないのですが・・・。ただ、何か身に悪いことが起きても、何かの力が、それをきっかけに変わりなさいと自分に言っているんだと思うようにしています」と、何とか返答。その時、採用担当者の表情にかすかに笑みが浮かんだのを、Mさんは見逃しませんでした。

 金融機関に勤務していたMさんは60歳定年のときに雇用延長。会社に残って仕事を続けたのですが、給与は大幅にダウン。かつての部下が上司になり、相手も居心地が悪いだろうと思い、1年だけ働いて会社を辞めました。
 そして「社長の右腕的存在になれる人材」を求める求人をベンチャー系企業を中心に探し、いくつか応募していたのでした。前述の面接話は、そんな就職活動での出来事でした。

 結論から言うと、Mさんは首尾よくその企業に採用され、経営企画室のアドバイザーとして働いています。
 Mさんは、面接での「運」についての質問がずっと気になっていました。やがて新しい職場にも慣れ、件の採用担当者とも親しくなると、「運」の質問の意図を尋ねてみました。
 すると、採用担当者は苦笑いしながら「すみませんね、変な質問をしちゃって。でもあれは、うちの社長が決めた明確な採用基準なんですよ」と答えたのだそうです。どんなに学歴や職務上の経歴が素晴らしくても、「運が悪い」と答える人は絶対に採用しない、そんな採用基準があったのです。
 Mさんは、ある高名な経営者が同じようなことを本で言っていたのを覚えていました。その人の名前を出すと。「それなんですよ。社長はその方の信奉者ですから」とのことでした。
 「経営者は運気のようなものを気にする人が多いから、やっぱり運が悪い人より、運のいい人を採用したいんでしょうね」「それもあるかもしれませんけど、むしろ理にかなっている理由があるんですよ」と採用担当者は言い、次のような話をしてくれたのだそうです。
 「誰にでも、いいことも起きれば悪いことも起きる。ただ、それをどう捉えるかの違いで差がつくのです。自分は運がいいと思っている人は、あらゆる出来事を自分のプラスに捉える習慣がついていて、それを自分の変化や成長につなげることができる。それに対して、運が悪いと思っている人は、何が起きても自分に問題があるとは思わない。運のせいだと他責にしてしまうので、自己成長の機会を失ってしまうのです」
 Mさんは「なるほど」と納得し、面接時の採用担当者の笑みにも合点がいったそうです。確かに、ポジティブ思考の人は、ネガティブ思考の人よりも運が開ける気がします。

 実は、冒頭で紹介した映画は、本当にあった話を下敷きにしています。イギリスBBCのラジオディレクターが、7カ月間にわたって「YES」と言い続け、幸運をつかむ。そんな「映画のような」ドラマがあり、原案になったのだそうです。だから、自分の中からポジティブ思考を引き出したい人には格好の作品かも知れませんよ。機会があれば、ぜひご覧下さい。

今回登場した映画について

  • 映画「イエスマン “YES”は人生のパスワード」ジャケ写
    © 2009 Warner Bros. Entertainment Inc.
  • 「イエスマン 〝YES〟は人生のパスワード」(2009年 アメリカ)
    発売元・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
    ©2009 Warner Bros. Entertainment Inc.
    DVD特別版:1,429円+税

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  • 田中和彦
  • 田中 和彦(たなか・かずひこ)

    人材コンサルタント/プロデューサー/(株)プラネットファイブ代表取締役

    1958年、大分県生まれ。一橋大社会学部卒業後、リクルートに入社。「週刊ビーイング」「就職ジャーナル」など4情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社ギャガで映画プロデューサー、キネマ旬報社・代表取締役を経て、現職。キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『「定年サバイバル時代」の働き方ルール』(朝日新聞出版社)、『50歳から男振りを上げる人』、『42歳からのルール』(明日香出版社)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。

  • この連載について / 映画に学ぶ「残された時間の歩き方」

    映画はこれまで、実に様々な人生を描いてきました。映画の数だけ、違った人生の形があるとも言えます。人生100年時代。第二の人生を、いかに充実したものにしていくか。そんな「残された時間の歩き方」のヒントを、古今東西の映画をお手本にしながら考え、お届けする連載です。

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