<連載> 今日から始める“ 腸” 寿生活Q&A

新型コロナ禍、便秘予防の運動は? 「腸活チェック」で劣化度確認

消化器病専門医・松井輝明さんに聞く「腸活・大腸ケア」(9) 運動・ストレスと大腸劣化

2020.12.25

 大腸の調子を整えるには適度な運動が欠かせません。とくに女性や年配者は、新型コロナにともなう外出自粛で便秘になりがち。大腸劣化への注意が必要です。どうしたらいいか。腸活チェックのポイントは? 消化器病専門医で帝京平成大学教授の松井輝明さんに聞きました。

ジョギングをするシニア夫婦

便秘になりやすい女性と高齢者

――「便通には、毎日の散歩など適度な運動もよいと聞きます。リモートワークなどで外出が減っています。影響はあるでしょうか」(60代前半・男性)、「ストレスでおなかの具合が悪くなるのはなぜ」(50代後半女性)など、運動やストレスと便通の関係についての質問がきています。

 大腸にとって運動の効果は大きくふたつ。血行を良くして腸を動きやすくすること、排便のための筋肉を衰えないようにすることです。

 リモートワークや外出自粛など、新型コロナの感染予防で家にじっとしていると、体を動かさない時間が長くなり、大腸の働きが悪くなります。大腸が動かなければ便秘になり、有害菌が増え、作り出される毒素が大腸内に増えてしまいます。

 とくに女性は男性と比べてもともと筋肉量が少ないので、運動不足で排便に必要な腹筋が弱くなると便秘になりやすくなります。とくに男女を問わず筋肉が衰えている年配者は、注意が必要です。

毎日30分の有酸素運動を基本に

――どうしたらいいですか。

 基本は毎日、合計30分ぐらいの有酸素運動です。ちょっと汗をかくぐらいの運動や散歩、それで血行がよくなって、腸が動きやすくなります。

 血行をよくするためには、特別な運動である必要はありません。デスクワークをしているときは、時おり、立ち上がって伸びをしたり、体を左右にひねったりする。体を少し動かし、こりをほぐすことで、血行がよくなります。

 外出したときや上下階への移動時は、なるべくエレベーター、エスカレーターは使わずに、階段でのぼりおりする。買い物のとき、行きは少し遠回りして歩く。電車の中では、短時間なら立ったまま移動する。揺れで下半身の筋肉や体幹が鍛えられます。普段の少しずつの積み重ねが大切です。

 もうひとつ、いきむためには、腹筋、とくに腹横筋など、体のなかの筋肉(インナーマッスル)が重要です。意識してインナーマッスルを動かし、筋肉が衰えないようにしましょう。たとえば、おしりをきゅっとすぼめると骨盤底筋などの運動になります。深く息をして、ゆっくり吐き出す深呼吸(ドローイング)などもおすすめです。

日々のリズムをつくり、体を動かす

――ストレスと運動の関係は?

 適度な運動にはストレスの発散効果があります。ストレスで交感神経が刺激されると、腸の動きがとまります。逆にリラックスすると副交感神経が働いて、腸の動きはよくなります。脳腸相関と言われています。

 コロナ禍の外出自粛に伴う在宅勤務で、朝の満員電車での通勤などのストレスは、コロナ禍の前よりは減っているかもしれません。しかし、日々の通勤は、無意識ながら適度な運動にもなっていたはずです。リモートワークでずっと家にこもりきりで、体を動かさないでいる。それは運動不足とストレスの両方を抱え込むことにもなりかねません。

 朝起きて、日の光をあび、食事をしたら、散歩をしたり、家のなかで軽い体操をしたりしてみる。日々の生活リズムをつくり、そのなかに体を動かす機会を組み込んでおくことが、大腸の健康、そして、よい便通につながります。

あなたの大腸劣化度をチェック

 いま、あなたの大腸はどのくらい健康か、チェックしてみましょう。忙しい日々、食事や運動がおろそかになっている人も少なくないはず。当てはまる項目の点数を足し合わせ、大腸劣化度を確認してみてください。

【腸活チェックシート】

□ 肉や脂っこいものが好き(2点)
□ 野菜はほとんど食べない(2点)
□ 外食が多い(1点)
□ 食事の時間が不規則(1点)
□ 寝る前によく食べたり飲んだりする(1点)

□ 定期的な運動をしていない(1点)
□ 1日に30分以上歩いていない(1点)
□ ストレスがたまりやすい(1点)
□ 肌荒れや吹き出物が多くなった(1点)
□ たばこを吸っている(1点)

□ 便やおならのにおいが臭い(2点)
□ 便が3日以上出ないことがある(2点)
□ 便が出るまでに5分以上かかる(1点)
□ 便意があっても我慢してしまう(1点)
□ 便を出しても残便感がある(1点)

 5点以下・・・大きな問題はなさそうですが、0点をめざしてできることから改善しましょう。
 
 6~10点・・・腸内環境が悪くなってきています。この機会に食生活や生活習慣を見直してみましょう。
 
 11~14点・・・腸内環境がかなり悪化しています。このままの生活を続けたら、便秘や腸の病気などを起こしかねません。積極的に食物繊維をとるなどの改善を。
 
 15点以上・・・本格的な大腸劣化に陥っている可能性があります。便秘や腸の不調に悩んでいませんか? 便秘薬でしのいでいても、根本治療にはなりません。食生活やストレスの多い生活、生活習慣を見直しましょう。不調が続くなら、消化器内科や便秘外来などで専門医の診察をうけることをお勧めします。

 Reライフ読者会議メンバーから募集した「腸活・大腸ケア」や「便通」に関する疑問に、消化器病専門医の松井輝明さんが答えます。次回は松井さんが勧める「腸活10カ条」を紹介します。

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  • 松井輝明
  • 松井 輝明(まつい・てるあき)

    帝京平成大学教授・医学博士

    日本大学医学部卒業。医学博士。日本大学板橋病院消化器外来医長、日本大学医学部准教授を経て現在、帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科 健康科学研究科 健康栄養学専攻長 教授。日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、消化器一般、機能性食品の臨床応用を専門に研究。著書に「大腸活のすすめ~腸は自分で変えられる」(朝日新聞出版)など。

  • この連載について / 今日から始める“ 腸” 寿生活Q&A

    全身の健康の要ともいわれる「腸」と「腸内フローラ」。いつまでも健康でいるために、“知っているようで知らない”素朴な疑問について、専門家の先生にわかりやすく答えてもらいました。

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