寒くなると恋しくなる鍋。読者の皆さんに「好きな鍋料理」を尋ねたところ、すき焼きやキムチ鍋など様々な鍋の名前が、作り手や囲んだ人との思い出とともに寄せられました。
共に山登り 「日韓合作」の味
「キムチ鍋を食べると、山登りに熱中していた若い頃を思い出します」
そう話すのは、今井香(かおる)さん(72)=静岡県在住。今井さんは国立高専で機械の技術を学んだ後、1969年4月、20歳で国鉄に就職し、関東支社(東京)に配属された。中学時代から旅が好きだったこともあり、職場の山岳部に入部。週末になると、リュックサックをかつぎ、新宿や上野から長野方面行きの夜行列車に飛び乗った。そして、自然を満喫し、日曜日の夜に帰京していた。
国鉄山岳連盟の関東支部長だった20代後半の頃、職場の知人から「日本の山に登りたいという韓国の鉄道職員がいる」と相談され、来日した同年代の若者5~6人のガイドを務めることになった。
1泊2日の登山で、朝から同じ列車に乗り込み、北八ケ岳の玄関口、長野県の茅野駅に降り立つと、まずは、食材を調達するためにスーパーに。今井さんらは焼き肉をしようと、肉や野菜を買った。一方、韓国人のメンバーは、白菜を丸ごと購入。山に入り、テントの設営が終わると、韓国のメンバーは、もうひと仕事。白菜を四つ切りにすると、韓国から持参したトウガラシや塩、魚醬(ぎょしょう)をもみ込み、即席キムチを作った。世話になっている今井さんらをねぎらうために作ってくれたと分かっていたが、「山にきてもキムチか」と、驚かされたという。
今井さんらは、焼き肉にするつもりだった肉や野菜をキムチとともにコッフェル(小鍋)に入れ、「日韓合作」のキムチ鍋を作った。韓国のメンバーとは、それ以降も数回、登山をしたが、彼らが作るキムチは食事に欠かせないものになった。もともと辛い物好きだった今井さんは、それ以来、キムチ鍋にはまってしまった。
今井さんは57歳で退職。60歳で両足のひざを患い、山登りは難しくなった。だが、今でも夏冬問わず、キムチ鍋を食べては、当時のことを思い出している。

ひと味違う いりこだし入り
私にとって鍋と言えばラーメン鍋。みそ味の乾麺に白菜、ニンジン、ネギのほか、シイタケやエリンギなどを入れると一層おいしくなる。普通の野菜入りラーメンとの違いは、乾麺についているスープのもとだけではなく、いりこのだしをとって使うこと。20代の頃、アルバイト先のスーパーが閉店になり、仕事がなくなった当時、栄養価もあり、経済的だったので、週に2回は食べていた。まさに救世主の鍋だった。
(鹿児島県 田中智子さん 50歳)
空腹満たした 祖母の団子汁
小学4年から高校を卒業するまで、佐賀県で一緒に暮らしていた祖母が作ってくれた「団子(だご)汁」を思い出す。小麦粉を練った直径3センチ程度の団子のほか、白菜やゴボウが具材。まだ、豊かではない時代。ガスレンジなどなく、わらやまきで火をおこし、鉄鍋を使って調理していた。肉は入っていなかったが、おなかを満たしてくれた。当時の食卓に上がったのは団子汁や川魚など。田舎の素朴な味だった。
(千葉県 古川東洋男(とよお)さん 78歳)
母とすき焼き この暮れも
大みそかと言えばすき焼き。それが実家の習わしだった。甘めの味付けで、砂糖にしょうゆがしみていく様子を幼心に覚えている。母が一人暮らしをするようになっても、私の家族が母のもとを訪れ、すき焼きをしていた。2012年から「10年日記」をつけているが、旅行した昨年以外、大みそかの記述は、材料の話など、すべてすき焼きがらみ。8月に母を亡くしたが、今年も母をしのびながら、すき焼きをしようと思う。
(東京都 磯山由美子さん 56歳)
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