医学博士に聞く 頻尿簡単セルフチェックで原因・対処法を確認

順天堂大学泌尿器外科学主任教授・堀江重郎さん監修 頻尿を改善し健康的な生活を送るために

2020.12.21
頻尿チェックイメージ

 トイレに行く回数が増えると「これは頻尿?」と不安になる方もいるのではないでしょうか。頻尿だと外出してもトイレのことが気になってしまい、満足に楽しめなかったり、家から出ることすらストレスになったりするかもしれません。

 自分はそもそも頻尿なのかどうか、原因は何かを簡単にチェックできる方法を説明します。たかが頻尿と考えず、チェックで病気が疑われたら早めに受診してみましょう。

<目次>

頻尿の原因と簡単セルフチェック

 個人差はありますが、一般的に1日にトイレに行く回数は正常であれば日中は5~7回、就寝中は0回といわれています。起きている間に8回以上トイレに行くということが続くようであれば「頻尿」とみなされます。

【頻尿の原因と考えられるもの】

 頻尿は、膀胱(ぼうこう)などの泌尿器に問題がある場合や生活習慣によるものなどさまざまな原因が考えられます。また、他の病気が原因で頻尿を引き起こしている場合もあるため、「頻尿かな」と思ったら、早めに病院へ行くことをおすすめします。

<頻尿を引き起こす主な原因>

・過活動膀胱

 通常、膀胱に尿がたまると脳へ尿意として伝わります。しかし過活動膀胱の場合、膀胱に十分な尿がたまっていなくても、トイレに行きたくなってしまいます。主な原因は膀胱の血流低下で膀胱の神経が傷ついたり硬くなったりすることですが、男性の場合は前立腺肥大症が原因となることもあります。

・膀胱炎

 細菌が膀胱内に侵入し粘膜が炎症を起こす病気です。女性に多く、頻尿の他に排尿痛や尿の濁り、血尿などが見られます。

・前立腺肥大症

 前立腺肥大症の初期には、前立腺が大きくなり膀胱や尿道が圧迫されたり刺激されたりすることで頻尿の症状が表れます。

・子宮筋腫

 子宮筋腫が進行し大きくなると、膀胱が圧迫され頻尿の症状が表れることがあります。

・水分の取り過ぎ

 水分を取り過ぎるとトイレが近くなるだけでなく、コーヒーなどに含まれているカフェイン、お酒のアルコールには利尿作用があるので頻尿の原因になることがあります。

・身体の冷え

 寒さによって自律神経が乱されると、トイレに行きたくなることがあります。

・緊張

 過度な緊張やストレスを感じると、交感神経の働きで膀胱の筋肉が収縮し、尿意をもよおすことがあります。実際に膀胱に尿がたまっているわけではないので、尿管や膀胱に異常はみられません。

 その他にもパーキンソン病や自律神経失調症、膀胱がん、糖尿病などさまざまな病気が頻尿の原因となることがあります。

【簡単セルフチェックリスト】

 先に述べたように、以下の状態が続くようであれば、頻尿とみなされます。

<頻尿の基準>

・日中トイレに行く回数:8回以上

<過活動膀胱のチェック>

 「頻尿」に当てはまる場合、その原因として過活動膀胱が疑われる状態かを「過活動膀胱症状質問票(OABSS)」でチェックすることができます。

 質問1~4で当てはまる回答をひとつずつ選び、最後に点数を合計してください。

過活動膀胱症状質問票(OABSS)

質問 回答 点数
■質問1
朝起きた時から寝る時までに、何回くらい尿をしましたか
7回以下 0
8~14回 1
15回以上 2
■質問2
夜寝てから朝起きるまでに、何回くらい尿をするために起きましたか
0回 0
1回 1
2回 2
3回以上 3
■質問3
急に尿がしたくなり、我慢が難しいことがありましたか
なし 0
週に1回より少ない 1
週に1回以上 2
1日1回くらい 3
1日2~4回 4
1日5回以上 5
■質問4
急に尿がしたくなり、我慢できずに尿をもらすことがありましたか
なし 0
週に1回より少ない 1
週に1回以上 2
1日1回くらい 3
1日2~4回 4
1日5回以上 5

過活動膀胱診療ガイドライン[第2版]:日本排尿機能学会編集 2015年 リッチメディカル,P105©日本排尿機能学会

診断結果

 合計点数はいくつになりましたか?「合計点数が3点以上」もしくは「質問3で2点以上」の場合、過活動膀胱が疑われます。

<男性の場合:前立腺肥大症の進行度チェック>

 前立腺肥大症は、初期に頻尿の症状がみられますが、さらに進行すると逆に尿が出にくくなったり、知らないうちに尿が漏れてしまう溢流性(いつりゅうせい)尿失禁になったり、慢性的に尿が全く出ない「尿閉」という状態になってしまいます。

 症状に自覚のある方は、次のWHO(世界保健機関)により1995年に制定された「国際前立腺症状スコア(I-PSS)」で、ご自身がどの状態にあるかをチェックすることができます。

 各質問で当てはまる回答をひとつずつ選び、最後に点数を合計してください。

国際前立腺症状スコア(I-PSS)

どれくらいの割合で次のような症状がありましたか 全くない 5回に1回の割合より少ない 2回に1回の割合より少ない 2回に1回の割合くらい 2回に1回の割合より多い ほとんどいつも
■質問1
この1カ月の間に、尿をしたあとにまだ尿が残っている感じがありましたか
0点 1点 2点 3点 4点 5点
■質問2
この1カ月の間に、尿をしてから2時間以内にもう一度しなくてはならないことがありましたか
0点 1点 2点 3点 4点 5点
■質問3
この1カ月の間に、尿をしている間に尿が何度もとぎれることがありましたか
0点 1点 2点 3点 4点 5点
■質問4
この1カ月の間に、尿を我慢するのが難しいことがありましたか
0点 1点 2点 3点 4点 5点
■質問5
この1カ月の間に、尿の勢いが弱いことがありましたか
0点 1点 2点 3点 4点 5点
■質問6
この1カ月の間に、尿をし始めるためにおなかに力を入れることがありましたか
0点 1点 2点 3点 4点 5点
■質問7
この1カ月の間に、夜寝てから朝起きるまでに、ふつう何回尿をするために起きましたか
0回:0点 1回:1点 2回:2点 3回:3点 4回:4点 5回以上:5点

診断結果

 合計点数次第で、次のように判定されます。

  • ・0~7点 :正常または軽症
  • ・8~19点 :中等症
  • ・20~35点:要治療

 自覚症状のある方は、これらの結果を参考に早めに病院へ行きましょう。

頻尿チェックでわかる対処法

 セルフチェックで過活動膀胱や前立腺肥大症の対処が必要だとわかった場合、まずは病院へ行くことをおすすめします。また日頃の生活においても、次のようなことで対処しましょう。

【過活動膀胱の場合】

・水分は適量を摂取する:目安は1日1.5~2リットル

 頻尿の症状があると、水分摂取を控えてしまいがちです。しかし、水分不足になると脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞を起こしやすくなったり感染症にかかりやすくなったりと、さらに深刻な状態になりかねません。

・避けた方がよい飲食物(取りすぎに注意)

 利尿作用や刺激のあるもの、酸化ストレスを与えるものは避けた方がよいでしょう。次に挙げる飲食物は取りすぎに注意してください。

  • ・コーヒー、緑茶などカフェインを含む飲みもの
  • ・炭酸飲料
  • ・アルコール
  • ・辛い食べ物
  • ・チョコレート
  • ・柑橘(かんきつ)類 など

・膀胱の筋肉をストレッチ(膀胱訓練)

 膀胱の筋肉に柔軟性があれば、尿をたくさんためておけるようになります。膀胱に尿をたくさんためられるようになれば、トイレに行く間隔が長くなり回数を減らすことができるでしょう。

●やりかた

  • ①尿意があっても、深呼吸をするなどしてリラックスしながらまず1分間程度トイレに行くのを我慢します。
  • ②1分間我慢できるようになったら、次に5分、10分と時間を延ばしていきます。
膀胱訓練

・尿意を感じた時に毎回行う必要はありません。

・最終的にはトイレに行く間隔が2~3時間になることを目標とします。

 このトレーニングをしたからといってすぐに頻尿が改善されるわけではありません。効果が出るまでに3カ月程度かかるといわれています。継続してトレーニングすることが大事です。

 また、いきなり我慢する時間を延ばそうとしすぎると膀胱炎を起こしてしまう可能性があります。毎日少しずつコツコツと続けてみてください。

・骨盤底筋体操

 排尿をコントロールしている骨盤底筋が衰えると頻尿や尿漏れなどの症状が起こることがあります。骨盤底筋を鍛えると予防することができますが、症状が進行した過活動膀胱は医療機関に診てもらうことをおすすめします。

●やりかた

  • ① 床に仰向けに寝て、足を肩幅に開き膝(ひざ)を立てます。
  • ② 膣(ちつ)や肛門(こうもん)の筋肉に力を入れて、10秒ほど引き締めます。
  • ③ 力をゆるめてリラックスします。
  • ④ ②・③を数回繰り返します。
  • ⑤ 基本姿勢でできるようになったら、座った姿勢や立った姿勢でもこの体操をやってみましょう。
骨盤底筋体操

【前立腺肥大症の場合】

・水分は適量を摂取する:目安は1日1.5~2リットル

 過活動膀胱の場合と同様、水分不足にならないように注意しましょう。

・下半身の血行悪化を防ぐ

 血行が悪くなると、肥大傾向が強くなってしまいます。次のようなことに気をつけましょう。

  • ・下半身を冷やさない
  • ・毎日湯船につかる(40度くらい。夏場はもう少し低い温度)
  • ・睡眠・食生活など規則正しく
  • ・運動習慣を取り入れる

・スクワット

 前立腺肥大症の予防にも効果的なエクササイズです。毎日、朝・夜に10回ずつ程度から始めてみましょう。

※ただし、ひざに痛みがある場合は無理のない範囲で行ってください。

スクワット

頻尿以外の尿トラブルについて

 尿トラブルには頻尿以外にもさまざまな症状があります。各症状から疑われる病気には次のようなものがあります。

【男性】尿トラブルの症状と疑われる病気

症状 疑われる病気
尿に血が混ざっている 膀胱がん、腎がん、尿路結石、膀胱結石、前立腺炎など
PSAが高い 前立腺がん、前立腺炎、前立腺肥大症など
陰嚢(いんのう)・睾丸(こうがん)が腫れる、痛みがある 精巣がん、精巣炎、精索静脈瘤(りゅう)、精巣捻転、鼠径(そけい)ヘルニアなど
おねしょをしてしまう 遺尿症、睡眠時無呼吸症候群、回腸利用新膀胱など
排尿時に痛みがある 尿道炎(クラミジア感染症、淋<りん>病)、前立腺炎、尿道結石など
尿がなかなか出せない 前立腺肥大症、尿道結石、尿道狭窄(きょうさく)など

【女性編】尿トラブルの症状と疑われる病気

症状 疑われる病気
尿漏れする 切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁、認知症、脊髄損傷など
膣から何かが下がってくる感じがする 骨盤臓器脱(膀胱瘤、子宮脱、直腸脱)
排尿時に痛みがある 膀胱炎、尿道カルンクラなど
尿が白濁している 腎盂(じんう)腎炎、膀胱炎、乳び尿など
残尿感がある 膀胱がん、膀胱炎、腎盂腎炎、溢流性尿失禁など

頻尿チェックで病気が疑われたら早めの受診を

 頻尿は生活の質を下げるだけでなく、思わぬ病気のサインということもあります。

 甘く考えずに、気になったら出来るだけ早く医療機関で診てもらいましょう。

(取材・文 山口尚孝)

監修:堀江重郎

  • 堀江重郎
  • 堀江 重郎(ほりえ・しげお)

    順天堂大学大学院医学研究科・泌尿器外科学主任教授

    泌尿器科医、医学博士。社団法人日本抗加齢医学会理事長、社団法人日本Men’s Health医学会理事長。前アジア太平洋前立腺学会理事長。1960年生まれ。日米の医師免許を持ち、泌尿器科学、腎臓学、分子生物学、臨床腫瘍(しゅよう)学の研鑽(けんさん)を積む。2003年より帝京大学医学部主任教授、2012年より現職。ロボット手術ダビンチを駆使した精度の高い泌尿器手術を行う一方、学際的なアプローチを抗加齢医学、男性の健康医学に導入。日本で初めてメンズヘルス外来を始める。著書に『いのち』(かまくら春秋社)など。

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