
頻尿の症状があると、落ち着かないだけでなく、睡眠を妨げられるなどストレスの原因にもなりかねません。どうして頻尿になってしまうのか? 自分でできる頻尿対策はあるのか? どのタイミングで病院に行くべきか? などについて説明します。
<目次>
頻尿はこうして起こる
頻尿とは排尿する回数が多くなる症状のことですが、一般的に、朝起きてから夜寝るまでに1日8回以上、就寝中に1回でも排尿がある状態が続くと「頻尿」もしくは「夜間頻尿」と診断されることがあります。
しかし「夜間頻尿」に関しては、下のグラフのように40代を超えると半数以上、60代以上になると8割以上の人が1回以上夜中にトイレに起きていることが調査によって明らかになっています。
これは、年を重ねることによって膀胱(ぼうこう)の柔軟性が失われたり、眠りが浅くなり夜中に尿意に気づきやすくなったりといった「加齢」が大きな要因となって起こります。そのため、この年代で「夜中に1回程度」であれば許容範囲といえます。
ただし、これまで起きることのなかった人が夜中に1回でもトイレに行くようになった場合や、これまで1回程度起きていた人が2回、3回と増えてきた場合は病気が要因になっている可能性もあるため、早めに病院で相談することをおすすめします。

頻尿になる原因はさまざまです。膀胱が自分の意思とは無関係に収縮し尿意を感じてしまう過活動膀胱や、前立腺肥大症、膀胱がんなどの泌尿器疾患、高血圧、心不全、慢性腎臓病などの内科疾患、睡眠時無呼吸症候群、精神的な要因から尿意をもよおす心因性頻尿などが原因として挙げられます。このように、頻尿の裏には生活習慣病を中心に病気が隠れている場合があるので注意が必要です。
病気とは関係なく、食生活によっても頻尿になることがあります。カフェインには排尿を促す作用があるので、お茶やコーヒーなどを多く飲むとトイレが近くなります。アルコールにも利尿作用があります。脳からは、尿を濃縮するホルモンが夜に作られていますが、アルコールはこのホルモンの分泌を妨げますので、夜間の尿量が増えます。また、寒い気候や冷房、冷たいものを多く取りすぎるなどで、からだが冷えるとトイレが近くなることもあります。
頻尿対策として自分でできること
頻尿で悩んでいるが、病院に行かずに自分でできる対策を知りたい方もいるのではないでしょうか。頻尿が何かしらの疾患によるものであれば、その治療を優先すべきですが、原因が生活習慣や体質によるものであれば、ご自身で行える対策があります。
カフェインを控える:水分摂取の仕方
カフェインには利尿作用があるため、コーヒーや緑茶などを飲みすぎると頻尿の原因になります。当然ですが、水分を多く取れば作られる尿の量も増えます。水分は適量(成人の場合、飲料で摂取する必要があるのは1日あたり約1.2L)を摂取するようにしましょう。
身体を冷やさない
身体が冷えると発汗しないため尿量が増えたり、交感神経の働きで膀胱の筋肉が収縮し、尿がたまっていなくても尿意をもよおしたりすることがあります。
カイロや腹巻きなどで膀胱周辺を冷やさないようにすれば、頻尿を避けられるかもしれません。
骨盤底筋体操を行う
排尿をコントロールしている骨盤底筋が衰えると頻尿や尿漏れなどの症状が起こることがあります。このような骨盤底筋の衰えを改善するのに効果的な方法が、骨盤底筋体操です。次のような方法で行います。
●やりかた
- 1. 床に仰向けに寝て、足を肩幅に開き膝(ひざ)を立てます。
- 2. 膣(ちつ)や肛門(こうもん)の筋肉に力を入れて、10秒ほど引き締めます。
- 3. 力をゆるめてリラックスします。
- 4. 2・3を数回繰り返します。
- 5. 基本姿勢でできるようになったら、座った姿勢や立った姿勢でもこの体操をやってみましょう。

肛門エクササイズを行う
膀胱はお尻の近くにあるため、このエクササイズを行うことで膀胱の筋肉までストレッチできます。これにより膀胱の血行が促進して膀胱の柔軟性復活につながり、膀胱に尿をためられるようになります。
以下の手順で行います。使うのはお尻だけなので、座ったままでもできます。
●やりかた
- 1. 肛門を5秒ほど引き締める。
- 2. 力をゆるめる。
- 3. 1・2を10回ほど繰り返す。

膀胱訓練を行う
膀胱の筋肉に柔軟性があれば、尿をたくさんためておけるようになります。膀胱に尿をたくさんためられるようになれば、トイレに行く間隔が長くなり回数を減らすことができるでしょう。
●やりかた
- 1. 尿意があっても、深呼吸をするなどしてリラックスしながらまず1分間程度トイレに行くのを我慢します。
- 2. 1分間我慢できるようになったら、次に5分、10分と時間を延ばしていきます。

このトレーニングをしたからといってすぐに頻尿が改善されるわけではありません。効果が出るまでに3カ月程度かかるといわれています。継続してトレーニングすることが大事です。
また、いきなり我慢する時間を延ばそうとしすぎると膀胱炎を起こしてしまう可能性があります。毎日少しずつコツコツと続けてみてください。
肩甲骨エクササイズを行う
頻尿は男性ホルモンであるテストステロンの低下も要因となります。姿勢が悪くなるとおなかや背中の筋肉が衰え、テストステロンの低下につながってしまうため、姿勢を正し、腹筋・背筋を復活させるためのエクササイズです。
やり方は「数時間に1回程度、グーッと肩甲骨を背中の中心に寄せる」だけです。「猫背になっているな」と気づいた時にやるのもおすすめです。

リラックスする
尿の貯蔵庫である膀胱は自律神経(交感神経と副交感神経)とつながっているので、ストレスの影響を受けます。ストレスがかかると自律神経のバランスが崩れ、それが原因となり頻尿が起こることがあります。ストレスを感じたら好きなことをやるなどして意識的に気分転換を図り、発散するよう心がけましょう。
サプリメントを取り入れる
市販されているサプリメントの中でも、頻尿に効果が認められているものがあります。代表的なものは次の通りです。
頻尿対策グッズを活用する
頻尿の症状があると、外出に不安を感じる方もいるのではないでしょうか。そういった場合は、尿漏れ対策グッズもおすすめです。
パンツ型の大人用紙おむつや、失禁パンツ、下着に付けて使用するパッド、ライナー、骨盤底筋をサポートするショーツなどが販売されているのでチェックしてみましょう。

頻尿対策をするときにやってはいけないこと
頻尿対策をするときにやってはいけないことについて説明します。
・摂取する水分量を制限しすぎる
すぐにトイレに行きたくなるのが怖いので水分を取らないようにし過ぎると、脱水症状がおこりかねません。また、腎機能低下につながる恐れがあります。
したがって、水分は適量を摂取するようにしましょう。
・膀胱訓練でトイレを我慢しすぎる
膀胱訓練では、トイレに行きたくなっても我慢することでトイレの間隔を少しずつ伸ばしていきますが、我慢しすぎると膀胱炎になる可能性があるので、我慢しすぎないようにしましょう。
頻尿の受診の目安と治療方法
これまでに紹介した対処法で頻尿が緩和したとしても、軽く考えずに早めに医療機関を受診しましょう。
受診の目安
一般的に、正常な排尿回数は日中で5~7回、夜間就寝中で0回です。ただし排尿回数は体質や生活習慣によって左右されるので、ご自身が日常生活の中で「困っている」と感じているなら泌尿器科(女性の場合は婦人科も可)を受診したほうがよいでしょう。また就寝中に初めて排尿のために起きるようになったときは、生活習慣病(糖尿病、心臓病、慢性腎臓病など)が隠れていないか、かかりつけ医に受診するとよいでしょう。
特に、頻尿だけでなく、血尿が出たり、おなかに痛みがあったりする場合は、早めに受診すべきです。
頻尿のレベルをチェックしてみましょう
頻尿かなと思ったら、トイレに行った時間や尿の量、状態などを記録する排尿日誌をつけてみましょう。頻尿対策に有効なだけでなく、医療機関を受診した際に、お医者さんに状況を知ってもらう時にも力を発揮します。
また、いますぐ確認したいという方は頻尿チェックをしてみましょう。
関連記事:「医学博士に聞く 頻尿簡単セルフチェックで原因・対処法を確認 」
治療方法
頻尿の原因が過活動膀胱である場合、薬による治療が一般的です。排尿に関係する筋肉をコントロールする自律神経に作用し、膀胱の過剰な収縮を抑える薬や膀胱の筋肉を緩める薬が処方されます。これと同時に膀胱訓練や骨盤底筋体操も並行して行われます。
夜間頻尿の場合も薬により治療が行われます。ただし、夜間頻尿の場合は高血圧や心臓病、睡眠時無呼吸症候群などさまざまな要因が考えられるため、その要因次第で変わります。
頻尿の症状がある病気について
頻尿を伴う疾患はさまざまです。臓器別にまとめると、次のようなものがあります。
腎臓
<慢性腎臓病>
腎臓には血液を濾過(ろか)し不要物を取り除いて膀胱へ送り込むという大事な役割があります。慢性腎障害は、高血圧・脂質異常症・糖尿病などによりこの血液濾過機能が低下したもので、人工透析が必要になる場合もあります。初期症状はあまりありませんが、腎臓の機能が下がることで、足のむくみや夜間多尿といった症状があらわれます。
膀胱
<膀胱炎>
多くは細菌による感染症です。膀胱で炎症が起き、その刺激で頻尿の症状があらわれます。また、排尿痛や残尿感、血尿といった症状がみられることもあります。
<過活動膀胱>
通常、膀胱に尿がたまると脳へ尿意として伝わります。しかし過活動膀胱の場合、膀胱に十分な尿がたまっていなくても、トイレに行きたくなってしまいます。
主な原因は膀胱の血流低下で膀胱の神経が傷ついたり硬くなったりすることですが、男性の場合は前立腺肥大症が原因となることもあります。
<膀胱がん>
化学物質によるもので、女性より男性の罹患(りかん)率が高いがんです。多くの場合、初期の段階で血尿が出ます。また、腫瘍の場所によっては膀胱が刺激されたり、尿がためにくくなったりして頻尿になることがあります。
前立腺
<前立腺肥大症>
男性ホルモンの低下や自律神経のバランスが崩れることなどによって前立腺が肥大するものです。そのため膀胱や尿道が圧迫されてしまい、尿をすっきり出し切れなかったり、頻尿や残尿感が生じたりします。ほかにも、尿の出方が弱くなる、尿が途切れる、尿意切迫感、尿がだらだらと漏れてしまう溢流性(いつりゅうせい)尿失禁などといった症状もみられます。
<前立腺炎>
疲労や便秘により、細菌が前立腺に入り、炎症を起こすものです。頻尿と排尿困難があり、発熱を伴います。
子宮
<子宮筋腫>
子宮にできる良性の腫瘍で、その位置や大きさによっては膀胱を圧迫することで頻尿の原因になります。
<子宮内膜症>
子宮内膜(子宮の内側の粘膜)は通常、剝がれ落ちて経血となり生理として排出されます。この子宮内膜が、子宮以外の場所にできてしまうのが子宮内膜症です。子宮内膜が膀胱やその周辺にできてしまった場合、圧迫や炎症によって膀胱を刺激し、頻尿となることがあります。
頻尿かもと思ったら早めの対策・治療を
頻尿の症状があると、常にトイレが気になってなかなか落ち着かないのではないでしょうか。また、頻尿の原因はさまざまで、中には重大な病気によるものもあります。「最近、トイレに行く回数が多くなってきたな」と感じたら、毎日を安心して過ごすためにも、早めに医療機関を受診しましょう。
(取材・文 山口尚孝)
※本文中に「大人用紙おむつは日常的に使うと出費が気になるかもしれませんが、医療費控除の対象になっているものです」との記載がありましたが、医療費控除には「寝たきり状態である」ことなどの条件が必要です。外出できる方の尿漏れ対策には当てはまらないため、該当部分を削除しました。医療費控除の詳細については、最寄りの税務署などにご確認ください。(2021.12.17 Reライフプロジェクト)
監修:堀江重郎
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