
誰でもトイレは毎日利用する場所ですが、あまりにも頻繁に行きたくなると、「もしかして病気かも?」と心配になることもあるかもしれません。実際、病気が原因でトイレが近くなることもあり、重い病気が潜んでいる可能性もあります。
「単にトイレが近いだけ」と軽く考えずに、早めに泌尿器科や婦人科を受診しましょう。ここでは、主に女性における頻尿を伴う病気の症状と対処方法をご紹介します。
<目次>
トイレの近さが病院に行くべきか判断する目安
起きている間に8回以上トイレに行く状態が続くようであれば「頻尿」であると思われます。注意が必要な回数ですので早めに医療機関に相談しましょう。
トイレが近くなってしまう原因
トイレが近くなってしまう原因はさまざまです。
女性の場合、子宮筋腫が膀胱(ぼうこう)を圧迫して尿意をもよおすことがあります。さらに出産を経験した人の中には、骨盤定筋の機能低下により「骨盤臓器脱」を起こす人がいます。これによって、骨盤から膀胱や子宮が下がってしまい、尿漏れや頻尿の症状が表れる場合があります。
なお、頻尿の原因となりうる女性特有の病気としては、主に以下のものが挙げられます。
■頻尿の原因となりうる女性特有の病気
女性に限らず、男性にも見られる頻尿の原因としては、次のようなものがあります。
■加齢
多くは加齢による膀胱の筋肉の衰えや、膀胱の血流低下によって起こる「過活動膀胱」によるものです。過活動膀胱は前立腺肥大や脳疾患などの疾患が要因となっていることもあります。尿がたまっていないのに膀胱が活動してしまい、頻繁にトイレに行きたくなる状態です。
■ストレス
緊張している時にトイレに行きたくなった経験がある方も多いのではないでしょうか。緊張するなどストレスを感じると、交感神経の作用で尿がたまっていないのに尿意をもよおすことがあります。こういったストレスは、年を重ねるほど感じやすくなる傾向がみられます。
一時的なものであれば問題ありませんが、トイレに行けない場面で必ずこの症状がでてしまい、日常生活に支障をきたす場合は「心因性頻尿」という状態です。
身体的な異常はありませんが、思いあたる病気が無い場合は心療内科や精神科に相談してみてください。
■肥満
要因は複数ありますが、まずは食べすぎにより活性酸素が増加し、酸化ストレスと男性ホルモンの低下で膀胱が硬くなることが考えられます。膀胱に柔軟性がなくなるとしっかり尿をためることができなくなってしまいます。
更に肥満が進んでしまうと、インスリンが過剰に分泌され、交感神経が活発になり膀胱がいっぱいではないのに尿意を感じやすくなることもあります。
■冷え
寒さを感じると、自律神経が体温を平常に保つように働きます。この時、膀胱が過敏に反応して尿道括約筋がゆるむため、尿意を感じやすくなるのです。
頻尿の原因となり得る男女共通の病気・症状としては主に以下のものが挙げられます。
■頻尿の原因となりうる男女共通の主な病気・症状
<泌尿器科的な疾患>
<内科的な疾患ほか>
関連記事:「医学博士に聞く 頻尿簡単セルフチェックで原因・対処法を確認」
トイレが近い症状を引き起こす病気の診断と治療
トイレが近くなるのは、病気が原因となっている場合があります。病気が疑われる場合、どのような検査で診断されるのか、さらに病気であった場合の治療方法をご紹介します。
【女性特有の病気】
[子宮筋腫]
・診断
膣(ちつ)から機械を入れて子宮や卵巣を直接映し出していく超音波検査を行います。サイズや位置関係をより正確に把握するためにMRI検査を追加することもあります。
・治療
症状が軽い場合は、服薬での治療を行います。症状が重い場合や妊娠の可能性がある場合は摘出手術をすることもあります。
[子宮内膜症]
・診断
まず、問診や内診を行い、超音波検査やMRIなどの画像検査と腫瘍マーカーをおこないます。これらの検査で癒着が疑われる場合は子宮内膜症の疑いという診断結果になります。確実に内膜症と確定診断をするためには、おなかに小さな穴を開けて内視鏡を入れる腹腔鏡(ふくくうきょう)検査を行ないます。
・治療
投薬治療と手術があります。完治させるには手術が必要ですが、投薬治療でも症状を抑制することができます。また、子宮内膜症の組織は卵巣から分泌される女性ホルモンに刺激され増殖進展するため、閉経後は症状が落ち着いてくると考えられています。
[骨盤臓器脱]
・診断
問診と診察でどこの筋肉や靭帯(じんたい)がダメージを受け、どの臓器がどの程度脱出してきているかを診断します。また、排尿状態を確認するために尿検査、残尿測定などをおこないます。必要に応じてMRI検査などを追加することもあります。
・治療
軽症の場合には、骨盤底筋体操や膣内装具(ペッサリー)などの保存的治療を行います。中等症あるいは重症の場合は、弱まった骨盤底筋群を補強する目的で手術治療が必要になります。
【男女共通の病気・症状】
<泌尿器科的な疾患>
[過活動膀胱]
・診断
問診票の質問項目にそれぞれ点数をつけて、一定以上の点数なら過活動膀胱の可能性ありと判定されます。過活動膀胱炎の可能性がある場合、残尿検査、尿検査、尿の流量や尿漏れの量の測定、膀胱の圧力、尿道鏡による検査結果から、他の病気もチェックしたうえで、過活動膀胱かどうかの診断をします。
・治療
投薬治療が一般的です。また、膀胱を鍛えるため、尿意を我慢する時間を少しずつ延ばすよう訓練します。さらに、排尿と関連する骨盤底筋を鍛えるトレーニングを併用することもあります。
[心因性頻尿]
・診断
心因性頻尿は、尿検査では異常を表さないことが多いのですが、他の病気の可能性を排除するために検査します。次に、排尿日誌をつけて、排尿を行っているタイミングと回数を記録して排尿パターンを調べます。この時、リラックスしている時や寝ている時には症状が出ないことを確認します。
・治療
排尿日誌を記録して客観視することで、飲水量をコントロールでき、症状が改善することがあります。
基本的には、心理療法を行います。不安や緊張を感じること、ストレスとなっている原因を探し、解消させます。 また、深呼吸などで緊張を緩和させるリラクセーション方法をレクチャーします。
投薬治療では、膀胱の収縮を抑える薬などを使用します。この他、強い精神的な問題がある場合は、不安を抑える薬などを処方されることもあります。
[膀胱炎]
・診断
尿検査を行います。出はじめの尿ではなく、途中の尿(中間尿)を使用します。導尿(どうにょう)をして血球の量や細菌の有無で診断する場合もあります。さらに尿中の細菌を培養して菌の種類を調べます。
・治療
細菌を殺す抗菌薬や抗生物質を投薬して治療します。
<内科的な疾患ほか>
[糖尿病]
・診断
血液検査で空腹時血糖値(血液中のブドウ糖濃度)やHbA1c(ブドウ糖とヘモグロビンが結合した物質)がどれくらいあるのかを調べて診断します。
・治療
生活習慣病である2型糖尿病の場合、生活習慣を改めることから始めます。それだけでは血糖のコントロールが難しい場合は、同時に薬物療法を行います。
[心不全]
・診断
問診で、息切れや倦怠(けんたい)感、むくみ、体重増加(病気が進行すると逆に低下することも)など、心不全の疑いがある症状を確認します。次に、採血、心電図、レントゲン、心エコーをつかって診断していきます。
・治療
薬物治療を行いますが、心不全の原因となった疾患や重症度によってはペースメーカーを植え込むなど、治療法が変わります。
[脳梗塞]
・診断
疑いのある症状があればCTやMRIでどのタイプの脳梗塞かを調べます。また、MRA(磁気共鳴血管造影)で細くなった血管や動脈瘤(りゅう)の様子を調べるほか、脳血流検査、脳血管造影検査、心臓の検査などが行われます。
・治療
早急に治療を開始する必要があり、基本的には薬物治療が中心です。
身体的なまひ・言語障害といった症状が出ている場合はリハビリテーションを行います。
トイレが近いと感じたとき自分でできる対策
筋力の低下や老化が原因による頻尿の場合、自分でできる対策があります。日常生活のなかで誰でも簡単に行えますので、取り入れてみてください。
【まずは病院へ】
頻尿に悩んでいる場合、まずは泌尿器科もしくは(女性の場合)婦人科の受診をおすすめします。病気の兆候である可能性もありますので、恥ずかしがらずに医師の診断をうけてください。
【骨盤底筋体操】
骨盤底筋群を鍛え、筋力をつけて、臓器が下がるのを防ぐための体操です。軽い尿失禁にも効果があります。
●やりかた
- ① 床に仰向けに寝て、足を肩幅に開き膝(ひざ)を立てます。
- ② 膣や肛門(こうもん)の筋肉に力を入れて、10秒ほど引き締めます。
- ③ 力をゆるめてリラックスします。
- ④ ②・③を数回繰り返します。
- ⑤ 基本姿勢でできるようになったら、座った姿勢や立った姿勢でもこの体操をやってみましょう。

【肛門エクササイズ】
膀胱にためられる尿量を増やすため、膀胱の柔軟性を上げるトレーニングです。肛門を5秒間程度ギューッと締めて緩める、という動きを10回ほど繰り返します。座ったままでもできるので、いつでも気軽にやってみてください。

【飲みものの取り方】
水分の取りすぎは頻尿の原因になります。とはいえ、摂取量が不足するとさらに深刻な事態になりかねません。成人が1日に必要な水分は1.5~2Lが適量となります。
なお、病気によって水分の摂取量や摂取方法に注意が必要な場合がありますので、主治医とよく相談して水分の取り方を決めてください。
アルコールやカフェインは利尿作用があるため、飲めば飲むほど排尿の回数を増やしてしまいます。そのため逆に体内の水分が奪われてしまい、水分を摂取したことになりません。また、夜間頻尿になるおそれがあるため、就寝前2~3時間以内に飲むこともさけた方がよいでしょう。
【体を冷やさない】
冷たい食べ物や飲み物の取りすぎで身体を冷やさないように注意しましょう。
温かいものを取るように心がけてください。
トイレが近くなるだけじゃないさまざまな排尿障害の原因となる病気
頻尿の他にも、排尿トラブルが起こる病気をご紹介します。該当するものがないかご確認ください。
【女性に多い病気・症状】
[失禁:腹圧性尿失禁]
せきやくしゃみをした時や、重い物を持ち上げた時など、急におなかに力を入れると尿が漏れてしまう状態です。
[排尿痛・残尿感・血尿など:膀胱炎]
膀胱に大腸菌などの細菌が入り込んで炎症を起こすものです。排尿痛・残尿感・血尿以外に頻尿の症状もあります。
【男性に多い病気・症状】
[排尿痛:尿道炎]
細菌やウイルスによって起こるもので、男性では性感染症が原因となっている場合が多いようです。排尿痛や頻尿などもあります。
【女性・男性に関わらず起こる病気・症状】
[血尿:膀胱がん]
喫煙など化学物質によるがんで、女性よりも男性の方が、4倍ほど罹患(りかん)率が高い傾向にあります。初期に血尿が出ますが、必ずしも継続するわけではないため、1回でも血尿があれば病院に行くことをおすすめします。
[尿のにごり:神経因性膀胱]
排尿に関わる神経のどこかで障害が発生し、排尿のシステムがうまくいかなくなる状態で、尿が出にくくなったり尿意に気づきにくくなったりします。残尿が増えて細菌感染が起こり、尿が白濁します。
「トイレが近い」を軽く考えず、早めの受診を
トイレに行くことは、日常生活の一部であり、欠かすことのない行為です。「トイレが近い」「夜中にトイレで目が覚める」などが頻繁にあると不快に感じるだけでなく、病気の症状のひとつである可能性もあります。軽く考えず、少しでも気になることがあれば、早めの受診をおすすめします。
(取材・文 原幸代)
監修:堀江重郎
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