<連載> 今日から始める“ 腸” 寿生活Q&A
2週間で腸内環境は変わる 大腸をケアする腸活10カ条
消化器病専門医・松井輝明さんに聞く「腸活・大腸ケア」(10) 大腸劣化を防止する
新型コロナ禍の「巣ごもり便秘」が指摘されてから、すでに半年以上になります。ふたたび感染が急拡大するなか、大腸劣化を食い止めるには、どうすればいいか。消化器病専門医で帝京平成大学教授の松井輝明さんが勧める腸活10カ条を紹介します。

腸内細菌が元気に働き続けるために
私たちの大腸には1,000種類、100兆個以上とも言われる腸内細菌がすんでいます。この細菌が元気に働き続けられるかどうかは、私たちの心掛け次第です。便秘がちなひと、不規則な生活をしているひとも、大腸ケアに手遅れはありません。2週間で腸内フローラのバランスは劇的に変わります。
大腸劣化を食い止め、よい腸内環境を整える10カ条です。すべてを実践できなくても、できるだけ多くのことを取り入れて、大腸をケアしてください。
1. 朝の1杯、大きな活力
朝起きたら、コップ1杯ぐらいの水分をとりましょう。冷たい水でも、白湯でも、お茶でも、コーヒーでも構いません。まだ眠っている胃腸を目覚めさせる準備体操になります。
朝食はぬかずに必ずとりましょう。朝食をとることで、「胃・結腸反射」がおこり、その刺激で腸が動き出します。1日の活動が始まるタイミングでの刺激は、大腸にとって最も効果的です。
2. 朝のトイレタイムを習慣づける
朝食後には必ずトイレに行き、排便する習慣をつけましょう。副交感神経を優位にし排便しやすくするためにも、トイレに座っている数分くらいはリラックスした気分で過ごしたいものです。毎朝、時間がなく慌ただしく過ごしている人は余裕を持っててトイレに入れるよう、20分は早く起きましょう。「時間がないから後で」と排便を我慢するのは禁物です。
3. ストレスと上手につきあう
ストレスを感じている時や睡眠不足の時は、交感神経が優位になりやすく、腸の動きが悪くなります。腸と脳とは連動している(脳腸相関)ので、お互いがストレスを敏感に感じ取るのです。好きな音楽を聴く、散歩や運動をするなど、自分なりのストレス対処法をみつけて、毎日、少しでも気分よく過ごせる時間を持てるようにしましょう。
4. 毎日30分の運動習慣
毎日30分の有酸素運動で血行がよくなり、運動の刺激で腸が動きやすくなります。特別な運動でなくても、やや早足で歩くだけで十分です。駅やオフィスで階段を使う、買い物に行くときに遠回りをするなど、できる範囲でかまいません。
また排便時に「いきむ」には腹筋が必要です。可能な人はスクワットや腹筋運動を。ベッドで寝る前も、おなかを刺激する「の」の字マッサージや腹式呼吸、できる範囲でからだをねじるなどの運動を習慣付けて行いましょう。
5. 炭水化物抜きダイエットは避ける
腸内細菌のエサは食物繊維。そして日本人にとってお米は貴重な食物繊維源です。食物繊維をたくさん取れるのは野菜と思っているひとも多いのですが、実際は、野菜より穀物のほうが食物繊維を多く含んでいます。ごはん抜きの食事は不足しがちな食物繊維摂取量を一層減らしてしまいます。医師から食事制限を指導されていない限りは炭水化物抜きダイエットはお勧めできません。
6. 水溶性食物繊維を一品プラス
大腸フローラで「有用菌」の代表格、ビフィズス菌は加齢とともに減少します。ビフィズス菌をできるだけ減らさないよう、エサとなる食物繊維、とくに水溶性食物繊維をとるように心掛けましょう。食事になにか一品、ワカメの酢のものなど海藻を加えたり、主食の白米を大麦などの雑穀に変えたり、りんごやみかんなど食後に果物を加えたりすることで、水溶性食物繊維を摂取できます。食事が不規則になりがちな人や外食の多い人は、オリゴ糖や天然のイヌリンなどを含む食品を利用する方法もあります。
7. 発酵食品を上手に利用
ヨーグルトや漬物、納豆などの発酵食品には、食品を発酵させて腐敗を防ぐ働きのある細菌や、腸内細菌が好むエサが含まれていて、大腸を元気にしてくれます。とりわけヨーグルトの中には、ふだんはとれないビフィズス菌入りのものなど、様々な「有用菌(善玉菌)」が含まれていて、有用菌が活発になるよう腸内環境を酸性に保つためにも役立ちます。ヨーグルトに含まれている菌種を確認し、自分にあったものを選びましょう。
ヨーグルトの腸活効果を最も発揮させるには、寝る2時間くらい前に食べるのがベストです。夕食後、胃酸や胆汁の分泌が落ち着いて、腸内細菌が活動しやすい時間帯だからです。空腹時には胃酸の影響が強いので、少しでも何かをおなかに入れた後のほうが、ヨーグルトの腸活効果は高まります。
8. 食事は量より品数
丼物や麺類などの一品料理は食物繊維が不足しがちです。品数の豊かさはバランスのよい食生活の基本です。外食の時は一品料理より、食物繊維がとれる小鉢のついた定食を選んでみてはいかがでしょう。自炊が面倒なら、コンビニやスーパーのお総菜をいくつか利用するのもおすすめです。
9. 安易に薬に頼らない
医薬品の中には腸内フローラに影響を与えるものがあります。たとえば抗生物質は1週間の服用でも腸内細菌をすべて死滅させると考えられています。現在は耐性菌の問題から、風邪程度で抗生物質が処方されることは少なくなりましたが、むやみに飲むのは避けたいものです。また、睡眠薬や精神安定剤、抗うつ薬などは、副作用として腸の働きを抑えて便秘が起こりやすくなります。
便秘のひとが多く利用している「下剤」はあくまで対症療法です。服用が習慣的になりがちですし、大腸を刺激して無理やり排便させるのは、からだにとって自然なことではありません。下剤は最終的な手段と考え、基本は運動や食生活で腸内フローラを整えることが大切です。
10. 大腸がん検診を受ける
がん検診も大腸ケアには欠かせません。厚生労働省では40歳以上を対象とする大腸がん検診として、年1回の便潜血検査(検便)を勧めています。まずは、この検便を受けてください。もし検便で陽性、つまり「要精密検査」という結果がでたときは、ためらわず、できるだけ早く大腸内視鏡検査を受けてください。米国で大腸がんの患者さんが劇的に減少したのは、大腸内視鏡検査を検診で取り入れ早期に治療できたからだと言われています。
◇
Reライフ読者会議メンバーから募集した「腸活・大腸ケア」や「便通」に関する疑問に、消化器病専門医の松井輝明さんが答える連載はこれで終わります。連載のバッグナンバーは以下からご覧ください。
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この連載について / 今日から始める“ 腸” 寿生活Q&A
全身の健康の要ともいわれる「腸」と「腸内フローラ」。いつまでも健康でいるために、“知っているようで知らない”素朴な疑問について、専門家の先生にわかりやすく答えてもらいました。
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