<連載> 私のReライフ

見栄を張らない富山人気質は自分を楽にしてくれる 室井滋さんが語る故郷

室井滋さんスペシャルインタビュー(中)

2021.02.17

 絵本作家としても活躍する室井滋さんは「しげちゃん一座」を率いて、絵本の朗読やトーク、音楽演奏などのライブショーを全国各地で開いています。俳優としては、史実を基に制作された出演映画「大(だい)コメ騒動」(本木克英監督)が1月に公開されました。この映画で室井さんは一揆を起こす女性たちのリーダー「清んさのおばば」を力強く演じています。地元の富山県が舞台。故郷への愛が言葉の端々から溢(あふ)れ出ます。コロナ感染拡大の中でのライブや映画についても、思いを語っていただきました。

室井滋さん

朗読するたび、心の中で動くものが違うんです

 ――2011年に結成された「しげちゃん一座」はどのようなきっかけで始まったのですか。

  最初に書いた絵本「しげちゃん」(金の星社)が、ビギナーズラックというか、たくさんの人に読んでもらえて、絵を描いた長谷川義史さんと講演の依頼がありました。私は朗読が大好きなので、すごく楽しかった。その後、別の機会に、演奏家の大友剛さんと岡淳さんに来てもらったら、異常に盛り上がって。それを見に来ていた方にまた呼ばれて。ホール、公民館、お寺、廃校になる小学校、ディナーショー……。ライブをやりたくてどんどん絵本を書くようになったんですよ。

 ――エッセーもたくさん書かれていますが、絵本ならではの魅力はなんでしょうか。

  絵本はレコードやCDと同じで何回も何回も読まれるものです。無駄があってはいけないし、より吟味して率直に心に届くような言葉を選ばなければいけない。想像の膨らまし方も、絵本は、その人がどういう状況で手に取ったかによって、随分変わると思います。「会いたくて 会いたくて」(小学館)も、失恋したときと、何年かして別の方と出会われてお子さんが生まれたときとでは、読んで感じること、見えてくる風景が違ってくると思います。

 ライブのラストでは、「しげちゃん」を必ず朗読します。年間30ほどのステージがありますが、毎回、胸が熱くなったり、声の出し方が変わったり。ツアーでも、前日と次の日では自分の心の中で動くものが違います。うまくいったとかいかなかったとか、そういうことではなくて、しげちゃんは私なのに、ここはこんな風に読んだ方が気持ちが伝わるんじゃないか、もうちょっと大人っぽくてもいいかなあ、と初めて気がつくことがある。1年生の設定だけど2年生の気持ちで読んでみようなどと細かいことを思う。絵本は、自分で書いていてもこんな風に読み方まで変わっていくものなのですね。

室井滋さん

女性たちの頑張りが世の中を動かした

 ――映画「大コメ騒動」では富山県の女性の芯の強さに圧倒されます。

  米騒動は103年前に起こりました。シベリア出兵などがあり、コメが高騰して地元の人たちもお米を食べられなくなっていた。そういう中で普段はおとなしい女性たちが立ち上がってお米屋さんに直訴するという実話が基です。一揆は全国に広がって、世の中を動かしました。やっぱり頑張るってすごく大切だと思います。この年はスペイン風邪が流行した年でもあり、監督は因縁だね、とおっしゃっていました。

 ――室井さんも富山県ご出身ですが、ご自身、富山の女だな、と思うところはありますか。

  富山の人は華美なところはなくて質実剛健です。大切なもの、いいものを持っていても一回は蔵の中にしまうみたいな県民性です。裕福でも、持っていることをひけらかさない。年を取れば取るほど富山に生まれてよかったなと思います。見栄(みえ)を張らない富山人気質は、自分を楽にしてくれる。自分の持っているものだけで勝負するというか。女優という仕事の場合、見栄を張った方がよかったのかもしれないけど、でも、そうだとやっぱり苦しかっただろうなあ。若い頃は派手な世界についていけない、と思ったこともあります。でも40年も続けてこられたので、逆に地味なところが幸いしたのかなと思います。

室井滋さん

喜んでもらえるから、なんとか続けたい

 ――映画の公開と同時期に、東京などに緊急事態宣言が出されました。エンターテインメントは厳しい時期が続いています。

  映画の宣伝を去年からずっとしてきての緊急事態宣言は、監督も「朝から酒飲んだ」と言うほど、関係者のショックは大きかった。そのうえ北陸は大雪に見舞われて、とてもじゃないけど劇場に行ってください、と言えなくなってしまって……。せっかくつくった映画をどうしようかと、いまも、監督たちとお話ししている日々です。細く長く頑張るしかないねって。エンターテインメント業界の私たちの仕事は難しい時代に入ったと思います。でも、やめるかといったら、形をいろいろ考えながらもやるしかない。1月に実施した絵本ライブは、人数をほんとうに減らして、みんなマスクして、検査もして、やらせてもらいました。お客さんはとても喜んでくださって、それがすごく伝わってくるので、やっぱりなんとか続けていきたいなと思っています。

(聞き手・松崎祐子、撮影・伊藤菜々子)

室井滋さん直筆サイン本プレゼント

  • 会いたくて会いたくて
  • 会いたくて 会いたくて
    (作)室井滋(絵)長谷川義史
    出版社:小学館

    室井滋さんの直筆サイン入り絵本「会いたくて 会いたくて」を5名様にプレゼントします。
    応募はこちら(商品モニター会メンバー限定、3月11日締め切り)

  • 室井 滋
  • 室井 滋(むろい・しげる)

    俳優

    富山県出身。早稲田大学在学中に1981年映画「風の歌を聴け」でデビュー。「居酒屋ゆうれい」「のど自慢」「OUT」「ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜」などで多くの映画賞を受賞。2012年喜劇人大賞特別賞、2015年松尾芸能賞テレビ部門優秀賞を受賞。全国公開中の映画「大(だい)コメ騒動」に出演。近刊『ヤットコスットコ女旅』(小学館)、絵本『しげちゃん』シリーズ(金の星社)ほか電子書籍化含め著書多数。全国各地でしげちゃん一座絵本ライブを開催している。

  • この連載について / 私のReライフ

    第二の人生を自分らしく充実した時間を過ごしている方々をご紹介します。地域ボランティアや趣味の活動、介護や終活、仕事探し、終の住まい選びやリフォーム体験談など、Reライフ読者会議メンバーから届いた活動リポートのほか、第二の人生で新たな挑戦に取り込む著名人にもインタビュー。

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