<連載> 私のReライフ

つまずいたら厄落としと思え 室井滋さんが祖母から教わった言葉

室井滋さんスペシャルインタビュー(下)

2021.02.19

 絵本「会いたくて 会いたくて」(小学館)を出版した俳優の室井滋さんは今年でデビュー40年になります。浮き沈みの激しい芸能界に身を置きながらも、しっかり根を張り流されない。それが「室井流」のようです。年齢を重ねる中で変わったこと、変わらなかったこと。そしてこれからやっていきたいこととは。

室井滋さん

浮いても浮かれず 沈んでももがかず

 ――40年間、ずっと大切になさってきたのは何ですか。

  絵本の絵を描いてくださっている長谷川義史さんもそうですけども、知り合ってこの人いいなと思うと、お付き合いがすごく長くなります。富山の友だちも、高校や子どものときの友だちを大切にしています。事務所も平成元年に入ってから、ほとんど同じメンバーで、ずっといっしょなのですよ。自分の身内、家族だと思っています。

 40年の間に、いいときも良くないときもありました。芸能界は、ほら、いいときはすごくいいけれど、ダメになったらもう誰からも振り向いてもらえない。仕事も勢いがあるときはジャンジャンくるけども、なくなっちゃったら、あしたどうしようかとなる。浮き沈みが激しいところですが、そのことに捕らわれずにやってきたのがよかったと思いますね。水面でバタバタともがくともっと沈むじゃないですか。それをしなかった。事務所を変えてみようとか思ったことがない。少しはもがいていたかもしれないけど、すごいもがき方をしなかった。

 ――一方で、年を重ねる中で変わってきたことはありますか。

  開き直れるようになった、と思いますね。日常では、昔はもうちょっと、イジイジ、ジメジメしていた。こう言ったらどう思われるかなとか、さっき撮影したシーンは大丈夫だったかなとか。困ったことや、なんか嫌だなということはいっぱい起こりますけど、妙な苦しみ方をしたり、いじけたり、ジメジメしたり。それが減りましたね。

 ダメなときって、何をしてもダメ。じゃあ、なにをしてやり過ごそうかな、と。逆に、いいときにあまり浮かれすぎるとまずいかな、と。

 「つまずいたら厄落としと思え」と祖母は子どもの私に言って聞かせてくれました。ちょっと転んだり、けがしたりすると、むしろ「よかった、このぐらいですんで」と思う。経験からいうと、つまずいたときこそチャンス。本当に勉強になるときです。時間ができたり苦しいことを乗り越えたりするときに、自分に欠けているものは何か、助けてくれたのは誰か。いろいろなものが見える。それを忘れないことが大事だと思います。

室井滋さん

寝る前に明日することを書いています

 ――定年を迎えたり、子どもが巣立ったりして、これから人生後半を迎える同世代の方にメッセージをお願いします

  コロナ下に入ったとき、一番考えたのは、これからの人生をどう過ごしていこうかということです。世の中は一気に変わるだろうと今も思っています。計画が大きく崩れた方がいらっしゃると思う。でも一つの時代を生きてきた方だからこそ思いつくことがあるはずなので、なにか再挑戦をしてほしいです。今、したいことができなくてもあきらめず、下準備をするのはいかがでしょう。

 私は、寝る前に明日何をするかを全部ノートに書いています。朝昼晩のペース配分を規則正しく決めて、ここからここの時間はなにか考える、ここからここは連載の原稿を書く、家の片付けをする、料理を作る、という風に日々過ごしています。そのほうが、たくさんのことができるし、安心できる。漠然と過ごしてしまうと不安感ばかりが募るので、人とあまり話せない今、自分で自分を確認することが大事と思います。

 私のチャレンジですか? 楽器がものすごくやりたくて。ピアノはもともと少し弾けるけど、ジャズを弾けるようになりたいです。あと、いろいろな家電が壊れているので、まず、それを直さなくっちゃ。

室井滋さん

年を重ねてからのラブシーンを演じたい

 ――俳優としてはいかがですか。出演映画「大(だい)コメ騒動」の試写会の舞台あいさつでは、ラブシーンをやりたいとおっしゃっていましたね。

  女優は、生涯やりたいことなので、なるべくだったら元気に、とにかくいろんな役をやってみたいです。ラブシーンは、もう、あんまりないわけですよ。このままなくなっちゃうのかなと思うと、あえて舞台あいさつで言わせてもらいました(笑)。ありきたりのラブシーンがどうのこうのということではないんですよ。年を重ねても好きな人ができるだろうし、愛情表現したい人もいっぱいいると思う。海外の映画やドラマには熟年者の愛情表現がいっぱいあるのに、日本では少ないし、あまり表に出しちゃいけないみたいなところがある。ただね。私について言えば、だんだん恋をしなくなったのはそうですけどね。若い頃はすぐ誰か好きになっちゃって、仕事に影響したりしましたが、今はそういうのが減った分、仕事はサクサク行きますね、寂しいながら。

 でも、それも含めて、年を重ねた世代の恋愛感情について演じられたら楽しいと思います。私より一回り以上年上のうちの事務所の社長があるとき、「私ね、恋をしているの」って言い出して。韓国のアイドルの男の子を「大好きになっちゃったの。こんな仕事をしておきながら、アイドルを好きになるってどういうことか、今初めてわかった」って。社長の子どもたちが写真集やライブのグッズをプレゼントしていて、すごくいいなと思いました。そんなことを誰か描いてくれたらいいのになあ、って思います。

(聞き手・松崎祐子、撮影・伊藤菜々子)

室井滋さん直筆サイン本プレゼント

  • 会いたくて会いたくて
  • 会いたくて 会いたくて
    (作)室井滋(絵)長谷川義史
    出版社:小学館

    室井滋さんの直筆サイン入り絵本「会いたくて 会いたくて」を5名様にプレゼントします。
    応募はこちら(商品モニター会メンバー限定、3月11日締め切り)

  • 室井 滋
  • 室井 滋(むろい・しげる)

    俳優

    富山県出身。早稲田大学在学中に1981年映画「風の歌を聴け」でデビュー。「居酒屋ゆうれい」「のど自慢」「OUT」「ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜」などで多くの映画賞を受賞。2012年喜劇人大賞特別賞、2015年松尾芸能賞テレビ部門優秀賞を受賞。全国公開中の映画「大(だい)コメ騒動」に出演。近刊『ヤットコスットコ女旅』(小学館)、絵本『しげちゃん』シリーズ(金の星社)ほか電子書籍化含め著書多数。全国各地でしげちゃん一座絵本ライブを開催している。

  • この連載について / 私のReライフ

    第二の人生を自分らしく充実した時間を過ごしている方々をご紹介します。地域ボランティアや趣味の活動、介護や終活、仕事探し、終の住まい選びやリフォーム体験談など、Reライフ読者会議メンバーから届いた活動リポートのほか、第二の人生で新たな挑戦に取り込む著名人にもインタビュー。

関連記事

あわせて読みたい

おすすめ記事

PAGE TOP