<PR>

巣ごもり生活で要介護の手前に? コロナ禍で高まる健康リスク 

東京都医師会・平川博之副会長に聞く コロナ禍における「フレイル」対策

2021.02.26

 新型コロナウイルス感染症の収束が見通せず、外出自粛の動きが長期化する中、もう一つの問題が深刻になってきました。高齢者が外出などを過剰に自粛することで筋力などが衰え、介護が必要になる一歩手前の状態「フレイル」のリスクが高まっているのです。

 コロナ禍でも健康的に年齢を重ねていくためには、何が大切なのでしょうか?Reライフ読者会議メンバーから寄せられた質問をもとに、東京都医師会の平川博之副会長に聞きました。

東京都医師会の平川博之副会長
東京都医師会の平川博之副会長

コロナ禍でフレイルになるリスクが急増

昨年12月から今年1月に実施したReライフ読者会議メンバーへのアンケートでは、6割以上の人がコロナ禍で体調の変化を感じ、外出の機会も大幅に減っていました。

 私の地元、八王子市で昨年9月、約5万2500人の後期高齢者(75歳以上)を対象に行った調査でも同様の結果が出ています。新型コロナウイルスの感染が拡大し、外出自粛が求められるようになってから、5割の人が「横になる、座っている時間が増えた」、4割が「歩く速さが遅くなった」、2割弱が「10分以上やっていた運動をしなくなった」と回答しています。このような生活習慣になると、筋力や認知機能が衰えて、要介護の一歩手前の状態「フレイル」になるリスクが高まりますので、非常に心配しています。

実際に患者さんと現場で接していて、どんなことを感じますか? 

 私は精神科の専門医ですが、コロナ禍になった直後、一時的に外来を受診される方が減りました。感染を過度に恐れて受診を控えたのだと思いますが、内科などの一般科ではこのような受診控えがさらに深刻な問題となっています。高血圧や糖尿病などの持病を持っている方はこれまで通りきちんと受診していただきたいですし、通院は不要不急の外出ではありません。健診を受ける人も減っていると聞きます。コロナを恐れるあまり、持病を悪化させたり、治るはずの病気の早期発見の機会を失ったりすることは、あってはならないと考えています。

 精神科医の立場からみると、今回のような未知の出来事は、強い不安や焦燥感を生みます。不安を打ち消そうと情報に群がるのですが、様々な情報が氾濫(はんらん)する中、誤解を招くような情報や不安をあおるような報道もあり、過度の恐怖や自粛につながっているように思います。情報が得にくい高齢の方や、SNSやインターネットで情報過多に陥りやすい若年層にその影響が多く出ていると思います。 

外出の過度な自粛は、心の問題にも影響するのですね。

 フレイルは「身体的」「メンタル面」「社会性」の三つの要素で成り立っています。メンタル面や社会との関わりの部分で、新型コロナウイルス感染拡大による過度な自粛生活やリモートワークは、さまざまな問題を生んでいます。

<フレイルの三つの要素>
pdfからフレイル)三本の柱
(東京大学高齢社会総合研究機構・飯島勝矢 作図:フレイル予防ハンドブックより)

 フレイルは英語で虚弱な状態を意味する「frailty」をもとに、日本老年医学会が提唱した概念です。健康と要介護状態の中間にあたり、「最近ちょっと痩せてきた」「つまずきやすくなった」「むせやすい」といったからだのことや、「出かけるのがおっくうになった」「物忘れが増えてきた気がする」といった気分や認知に関する自覚症状が現れてきます。ただし、フレイルの段階では、健康な状態に戻ることもできます。

  フレイルが注目される背景として、日本人の平均寿命は延びていますが、自立した生活を送れる「健康寿命」が延びているだけではなく、要介護状態や寝たきりで過ごす期間が平均で男性は約10年、女性は約13年もあることが挙げられます。

  「健康寿命」を延ばすためにはフレイルの時期をどうコントロールするかが大切です。坂道を転がり落ちるようにフレイルから一気に要介護状態になるのか、踏みとどまり健康な状態に押し戻し、再び自分らしい生活を維持していくのかの分かれ道ともいえます。

<フレイルの位置づけと流れ>
再再再)pdfからフレイル)可逆性

メタボ予防を意識しすぎず、たんぱく質などをしっかりとる

フレイル予防の3本の柱「栄養」「運動」「社会参加」について伺います。まず「栄養」の面で、意識してとるべき食品はありますか? 

  60代後半からは特にたんぱく質を意識してしっかり食べるべきです。メタボ予防は心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞、糖尿病を予防する上でとても大事ですが、こと高齢の方に関してはメタボを意識しすぎない方がよいでしょう。実際BMIが少し高い方が長生きするという研究データもあります。100歳を超えている方は、お肉などの動物性のたんぱく質をしっかりとっている人が多いのです。

 流行の低炭水化物ダイエットも、やっていいのは50代くらいまで。糖分が不足すると、筋肉から補充することになり、筋力の衰えにもつながります。

ほかに食生活で心がけることは? 

 食事をおいしくとるためには、お口まわりの機能が大事。しっかりかむための歯や口の筋肉、のみ込むための嚥下(えんげ)の機能を鍛えましょう。 

  それから、みんなで一緒に食事をとることが大切です。家族と住んでいても、食事は一人きりでしている高齢者は認知症になりやすいというデータもあります。今はコロナ禍でワイワイガヤガヤと食べるのが難しい状況ですけれども、その中でも食事という「イベント」は大切にしてほしいですね。 

東京都医師会の平川博之副会長

スマホなどを練習し、人との新たなつながりを

外出もままならない現状ですが、「運動」はどのようにしたらよいでしょうか。

  人混みを避けての散歩をお勧めします。睡眠リズムのためには午前中がいいですね。帰宅後に手洗いやうがいなどをしっかり行ってください。短い距離・時間でもいいから、継続していくことが運動機能の低下防止につながります。

 できればご夫婦や仲間同士で、フィジカルディスタンスをとって、道端の草木の話や孫の自慢話など、黙々と足を運ぶのではなく会話をしながら散歩するのがコツです。二つのことを同時に「ながら」で行うデュアルタスクは、認知機能の低下を予防することにもつながります。家の中でも、ラジオや音楽を聴きながら、本を読んだり、ストレッチやスクワットをしたり、楽しくやることが肝要です。

 ストイックに数値的な目標をたててやる必要はないのです。料理などの家事をしっかりこなすだけでもいい運動になります。

コロナ禍における「社会参加」に関して、アドバイスをお願いします。

  今は自粛生活が続いてリアルのイベントができにくくなっています。サークル活動などに参加する場所もなくなっています。人は群れて生きる習性がありますから、人とのつながりがなくなれば精神的にこたえてしまいます。社会との関わりを失うことは、フレイルの入り口にもなりかねません。

再再再)pdfからフレイル)ドミノ倒しにならないように

 例えば自粛生活を機にスマホなどの電子ツールを使う練習はいかがでしょうか。お孫さんに「スマホの使い方を教えて」と言えば、良いコミュニケーションの場にもなります。サークル活動などもポストコロナの時代ではオンラインとリアルとの二本立てになるでしょうから、電子ツールを使いこなせるようになれば、社会との関わりは格段に増えるはずです。 

「フレイル健診」から先の仕組みをつくりたい 

東京都医師会では、どんなフレイル対策を実施されていますか? 

  さまざまな形で積極的にフレイルの啓発と対策に取り組んでいます。都民の方々への情報発信では、ウェブサイトのほか、「住み慣れた街でいつまでも-フレイル予防で健康長寿-」という冊子をつくりました。医師や介護福祉士、ケアマネジャーなどの多様な職種が、フレイル予防にどのような支援をしているのかを知ることができます。イラストも多くわかりやすいので、ぜひダウンロードしてご覧ください。 

東京都医師会の平川博之副会長

今後の課題についても教えてください。

  コロナ禍では、本来フレイル予防のためには避けるべき生活様式が強要されています。超高齢社会の今、要介護の時期を少しでも短くして、自立した自分らしい生活が送れる「健康寿命」を延ばすことが、国全体にとっても大事なことです。

 昨年から75歳以上の健診が大幅に変わり、質問票もフレイルに特化した内容に変わりました(フレイル健診*)。フレイルを早期に発見し、かかりつけ医からフレイルに対応する専門職や地域のサークルなどを紹介できるようにしていきたいと思います。そのために、医師向けのフレイル研修会なども積極的に実施していきたいと考えています。

  • *フレイル健診
    75歳以上の高齢者を対象に、2020年4月から始まった健康診査。従来の健診では、メタボ対策に注目した特定健診と同じ質問票を使用していたが、質問票の内容をフレイルに関する内容に一新した。口腔(こうくう)機能や体重変化、運動・転倒、認知機能、社会参加などに関する15項目の質問で構成される。 
  • 東京都医師会の平川博之副会長
  • 平川 博之(ひらかわ・ひろゆき)
    東京都医師会副会長

    精神科専門医、精神保健指定医、産業医。1980年に金沢医科大学神経精神科入局。88年に医療法人社団光生会平川病院に入職、現在同法人理事長。ひらかわクリニック院長。日本精神神経科診療所協会副会長、東京精神神経科診療所協会会長を歴任。95年に介護老人保健施設ぐらんぱぐらんま開設後は高齢者医療福祉や介護保険の分野にも活動の場を広げ、現在は全国老人保健施設協会副会長、東京都老人保健施設協会会長。東京都医師会では2011年から理事、17年に副会長。国・東京都関連の数多くの審議会、協議会等の委員を務める。13年厚生労働大臣表彰、19年東京都功労者表彰。

無料動画「コロナに負けない!フレイル予防」配信中

無料動画「コロナに負けない!フレイル予防」が東京都福祉保健局のホームページにアップされました。フレイルに関する専門家のお話や、おうちで簡単にできる体操動画がご覧になれます。
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/iryo_hoken/zaitakuryouyou/koronanimakenai.html

(東京都福祉保健局> 医療・保健> 医療・保健施策> 在宅療養>【無料動画配信】コロナに負けない!フレイル予防)

提供:東京都医師会
https://www.tokyo.med.or.jp/

(企画制作:朝日新聞社メディアビジネス局)

(写真:篠田英美)

関連記事

あわせて読みたい

おすすめ記事

PAGE TOP