「孤独死」と呼ばないで 上野千鶴子さんが考える幸せな最期の迎え方

「在宅ひとり死のススメ」(上)

2021.04.14

 慣れ親しんだ自宅で“幸せな最期”を迎えるにはーー。社会学者の上野千鶴子さんが、シリーズ最新作『在宅ひとり死のススメ』を出しました。ベストセラーとなった『おひとりさまの老後』から14年。「おひとりさまでも、認知症でも大丈夫。ひとり静かに死んで『孤独死』とは呼ばれたくない」と語る真意を聞きました。

ヘルパーとシニア女性

老後に子どもと同居するのは幸せか

 上野さんが『おひとりさまの老後』を書いたのは2007年、58歳の頃。当時、おひとりさまは「おかわいそうに」「おさみしいでしょう」と言われることに一石を投じようと出した本だったという。それが、おひとりさまだけでなく既婚の女性たちの共感も呼んでベストセラーに。続いて『男おひとりさま道』や『おひとりさまの最期』が出版されて“おひとりさま三部作”となった。

 かつて「子どもと同居することが幸せ」だと当たり前のように考えられていたのが、いまや週刊誌で老後特集があると、「子どもとの同居はNG」と取り上げられるようになった。同居だけでなく、「孫の教育資金を出す」「自分の家を売って手放す」などは、いずれも上野さんが「やってはいけない」と言い続けてきたこと。「14年前はおそるおそる言った“非常識”なことが、“常識”になってきた。この変化が10年ちょっとで起きたのだから驚きます」と振り返る。

家で死ぬのに医者はいる? いらない?

 『おひとりさまの最期』から6年たち、今回は「介護現場の経験値がさらに蓄積されてきた。そのことを広く知ってもらいたい」と筆を執ったという。

 戦後の高度成長期に病院で亡くなる人の割合が急増したことで、「最期は病院で迎える」ことが当たり前に。一方、在宅での看(み)取りは難しく、ましておひとりさまが自宅で最期を迎えることは非常識だと考えられてきた。しかし、2000年に介護保険制度が導入されたことで、介護現場の意識は徐々に変化してきたという。上野さんは「最初は、訪問看護に携わる人たちが『家で死ぬのに医者はいりません』と言い出しました。続いて介護職の人たちも経験値が上がり、『家で死ぬのに医者も看護師もいりません』と言うようになりました」と話す。病院でもなく、施設でもない、自宅で最期を迎えることが現実的な選択肢になってきた。

 その上で、「かつては家族がいないとできないと思われていた在宅の看取りが、家族がいない方が良いくらいまで変わった」と指摘する。家族がいることで介護保険制度を利用できなかったり、本人の意思に反して施設に入れられたりすることもあるからだ。

 上野さんが「在宅死のひけつは独居であること」と表現するほど、介護現場の経験値が積み重なってきているという。

問題は孤独死ではなく「孤立した生」

 「ひとり静かに死んだとき、『孤独死』とは呼ばれたくありません」と語る上野さんは、ひとり暮らしの高齢者がひとりで亡くなることを「在宅ひとり死」と名付け、広めてきた。新著では、老後はひとり暮らしの人のほうが幸せを感じているというデータを引用し、ひとり暮らしを「撲滅すべき社会問題」として捉えるべきではないと指摘する。「本当の問題は、死後に発見されることよりも、生きている間の孤立だということは忘れないようにしたい」

 次回は、「嫁のタダ働き」が当然だという常識を変えた介護保険の20年について聞きます。

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    社会学者

    1948年生まれ。東京大学名誉教授。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。京都大学大学院社会学博士課程修了。日本における女性学・ジェンダー研究・介護研究のパイオニアとして活躍。著書に『おひとりさまの老後』『男おひとりさま道』(文春文庫)、『おひとりさまの最期』(朝日文庫)など。

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