オーラルフレイルとは?対策・予防方法とセルフチェック

東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科部長 平野浩彦さん監修 オーラルフレイルの対策・予防で健康長寿へ

2021.03.24
オーラルフレイル

 この先もじっくり趣味などを満喫したい。そんな時間も健康だからこそ手に入るもので、できれば長く健康で楽しい老後を送りたいですよね。「自分だけでなく親や家族の介護のことも不安だし、健康で長生きしたいししてもらいたい」と思う方もいるのではないでしょうか。

 そんな心配がある場合は、「オーラルフレイル」を意識してみてください。オーラルフレイルを予防することは、全身の健康維持にもつながります。オーラルフレイルとは何か、どのようにオーラルフレイルへの対策を行うのかを理解して、一生健やかな生活を目指しましょう。

<目次>

オーラルフレイルとは

 近ごろ、テレビや雑誌で耳にするようになった「オーラルフレイル」。言葉は聞いたことがあるけれど、明確にどのようなことなのか分からないという方も多いのではないでしょうか。

 ここでは、「オーラルフレイル」がどのような原因で起こるのか、どのような症状があり、何に影響するのかなどについて説明します。

フレイルについて

 「フレイル」とは、健康な状態から要介護状態になる手前の段階のことです。支援は必要としないけれど、筋力、認知機能などが以前より衰えてしまい、心身の活力が低下した状態をいいます。
 フレイルは筋力低下や運動機能の障害などの「身体的要素」、認知機能の低下や精神疾患などの「精神・心理的要素」、収入減少や交友関係の縮小などの「社会的要素」の三つの要因が影響して起こるといわれています。
 フレイルの状態をそのままにしておくと、要介護状態になる危険性がありますが、日常の生活に気をつければ改善・回復することが可能です。

オーラルフレイルについて

 フレイルのきっかけともなるささいな口の機能の衰えを「オーラルフレイル」と呼びます。症状としては、食べこぼし、軽いむせ、かたいものが噛(か)みにくい、滑舌の悪化、口の中が渇くなどが挙げられます。
 ある調査によると、オーラルフレイルの人はそうでない人と比べ、2年以内に身体的フレイルを発症する確率が約2.4倍、4年以内の死亡リスクは約2倍ということがわかってきました。

オーラルフレイル
出典:公益社団法人日本歯科医師会「歯科診療所におけるオーラルフレイル対応マニュアル2019年版」

 オーラルフレイルは、加齢による歯や機能など口腔(こうくう)の状態の変化が原因のひとつです。「かたいものが食べにくい」「むせ込みがふえた」など、日常のちょっとした変化をそのまま放置しておくこともオーラルフレイルの進行を早めることにつながります。

 かたいものが食べにくくなると、やわらかいものばかり好んで食べるようになってしまいます。すると、噛むために必要な筋力がさらに低下し、さらに噛む力が衰えるといった悪循環に陥りやすくなってしまい、それが口腔機能の低下、ひいては心身機能の低下への第一歩となるおそれがあるのです。

口腔機能の低下への悪循環
出典:歯科診療所におけるオーラルフレイル対応マニュアル2019年版(日本歯科医師会) 作図:平野浩彦先生

オーラルフレイルの対策・予防トレーニング

 前の章でお伝えしたように、オーラルフレイルが進むとフレイルの状態に陥りやすくなり、要介護のリスクが高まってしまいます。また、のみ込む機能が衰えると、食道から胃へ向かうはずの食べ物や唾液(だえき)などが気道内に入ってしまう誤嚥(ごえん)を起こしやすくなり、「誤嚥性肺炎」を引き起こすこともあります。「誤嚥性肺炎」は2019年、日本人の死因6位となっています。そうならないために、オーラルフレイルへの対策とトレーニング方法をご紹介します。

予防のためのセルフケア

 次のようなことを意識して日ごろから口や歯をケアしましょう。

<口の中を清潔に保つ>
 口腔(こうくう)内の清潔が保たれないと、虫歯や歯周病のリスクが発生し、進行すると大切な歯を失うことになり、「食べる」「話す」といったことが難しくなります。虫歯や歯周病を予防するには、歯ブラシ、フロス、歯間ブラシ、マウスウォッシュ、液体ハミガキなどを使用して適切な口腔ケアをしてください。
 また、かかりつけの歯科で、歯石除去などの定期的な清掃と検診を受けるようにしましょう。

<口腔機能の維持・改善>
 口腔機能とは、「噛む」「のみ込む」などの生命に関わる機能と「発声する」「笑う」といった日常の生活に欠かせない機能です。唇や舌、喉や口周辺の多くの筋肉の働きを衰えさせない必要があります。次の項で紹介するトレーニングを行って、口腔機能が衰えないように維持しましょう。

自分でできるトレーニング方法

 口腔機能を維持するためのトレーニング方法をご紹介します。

<口や舌の動きをスムーズにするトレーニング>
 唇やほほ、舌の筋力をアップすると口腔機能が高まります。また唾液がよく出るようになり、食べ物をのみ込みやすくなります。

・口の体操

  • ①「う」の口で唇をすぼめる。
  • ②「い」の口で唇を横に開く。
オーラルフレイル

・舌の体操

  • ①舌を左のほおの内側に強く押しつける。
  • ②指で、押し出された舌の先を、ほおの上から押さえる。
  • ③指に抵抗するように、ゆっくり10回舌を押し返す。
  • ④右のほおでも同じこと繰り返す。
オーラルフレイル

・パタカラ体操
 それぞれ舌や口を上手に操らないときれいに発音できない音です。次のことを意識して発音してください。

  • ①「パパパパパパパパ」…唇をはじくように
  • ②「タタタタタタタタ」…舌先を上の前歯の裏につけるように
  • ③「カカカカカカカカ」…舌の奥を上顎(あご)の奥につけるように
  • ④「ララララララララ」…舌をまるめるように
  • ※①~④を2セット行う。

<のみ込むパワー(嚥下(えんげ)機能)をつけるトレーニング>
 のみ込むための筋肉を鍛えることで、食事中の「むせこみ」などの症状が改善されます。

・開口訓練

  • ①ゆっくり大きく口を開け10秒間キープする。
  • ②しっかり口を閉じ、奥歯をかみしめて舌を上あごに押し当てて10秒間キープする。
  • ③ ①②を3回繰り返す。
オーラルフレイル04

・ベロ出しごっくん体操

  • ①舌先を少し出したまま、口を閉じてつばをのみ込みます。
オーラルフレイル

<噛むパワー(咀嚼(そしゃく)機能)をつけるトレーニング>
 噛むパワーをつけることで、「食べこぼし」や食べ物が鼻に流れ込むのを防ぎ、おいしく安全に食べられるようになります。また、唾液が良く出るようになります。

・咀嚼(そしゃく)訓練
 ガムをかむことでかむ力を鍛える。2分間はリズムを決めて、3分間は自由に、計5分間かみます。1日2回(朝と夜)行うとよい。

  • ①姿勢を正し、唇を閉じてしっかりと噛む。
  • ②ガムは1カ所ではなく、左右両側で均等に噛む。

<滑舌をよくするトレーニング>
 舌や唇などの筋肉を鍛えて口を動きやすくします。滑舌をよくすることで、表情が豊かになりコミュニケーションがとりやすくなります。

・早口言葉
 口を大きく動かして、3回続けて声に出して読む。

  • レベル1 なまむぎ なまごめ なまたまご(生麦 生米 生卵)
  • レベル2 隣の客はよく柿食う客だ
  • レベル3 カエルぴょこぴょこ 三ぴょこぴょこ あわせてぴょこぴょこ 六ぴょこぴょこ
  • レベル4 瓜(うり)売りが瓜売りにきて 瓜売り残し 瓜売り帰る 瓜売りの声

<舌のパワーをつけるトレーニング>
 舌の筋力向上に役立ち、「誤嚥」や「むせ」などの症状改善、予防になります。

・舌トレーニング

  • ①舌をおもいきり出す。舌で下顎の先を触るつもりで伸ばす。
オーラルフレイル
  • ②舌先で鼻を触るつもりで上へ伸ばす。
オーラルフレイル
  • ③舌を左右に伸ばす
オーラルフレイル
  • ④舌先で口の周りをぐるりと一周する。
オーラルフレイル
  • ⑤スプーンなどを舌に押し当てて、その力に抵抗するように舌に力をいれます。右から押し当てる、左から押し当てる、前から押し当てる、も同様に行います。
オーラルフレイル

参考:日本歯科医師会HP「オーラルフレイル対策のための口腔体操

<アプリを使ったトレーニング>
 トレーニングができるスマホの無料アプリもあります。サンスターが開発したアプリ「毎日パタカラ」は、オーラルフレイルのセルフチェックやトレーニングが行えるのが魅力です。

<毎日の習慣でトレーニング>
 どのトレーニングも、続けることが大切です。わかっているけどなかなか毎日は続かない、という方におすすめなのが「ガラガラうがい」「ブクブクうがい」です。

 口に水をふくんで上を向く「ガラガラうがい」も、ほお全体をふくらませる「ブクブクうがい」も、意識してやることで口の機能を鍛えることにつながります。いつもより「少し長め」「少し回数多め」を意識して行いましょう。

<関連記事>

ここで説明したいくつかのトレーニングのやり方は、「日歯8020テレビ」でも動画で紹介されています。ぜひ参考にしてみてください。
公益社団法人日本歯科医師会 「日歯8020テレビ」
「口腔体操でオーラルフレイル予防」https://youtu.be/vT4CqcClDO0

オーラルフレイルの危険度チェック

 自分がどのくらいオーラルフレイルの状態に近づいているのか、自覚はありますか?まずはチェックしてみましょう。次の表で当てはまる回答の点数を合計してください。

オーラルフレイルのセルフチェック表

オーラルフレイルのチェック項目 はい いいえ
半年前と比べて、硬いものが食べにくくなった 2 0
お茶や汁物でむせることがある 2 0
義歯を入れている※ 2 0
口の渇きが気になる 1 0
半年前と比べて、外出が少なくなった 1 0
さきイカ・たくあんくらいの硬さの食べ物をかむことができる 0 1
1日に2回以上、歯を磨く 0 1
1年に1回以上、歯医者に行く 0 1

※歯を失ってしまった場合は義歯等を適切に使って硬いものをしっかり食べることができるよう  治療することが大切です。

[チェック結果]
①   合計0点~2点 オーラルフレイルの危険性は低いです。
②   合計3点 オーラルフレイルの危険性があります。
③   合計4点以上 オーラルフレイルの危険性が高いです。

※出典:公益社団法人日本歯科医師会 リーフレット「オーラルフレイル」

 3点以上の方はオーラルフレイルの危険性があるため、専門的な対応が必要です。かかりつけの歯科医に相談するなど、早めの対策をとりましょう。

オーラルフレイルと8020運動

 厚生労働省と日本歯科医師会が推進している「8020運動」をご存じでしょうか。これは、80歳になっても自分の歯を20本以上残して何でもおいしく食べられることを目指す運動です。

 運動がスタートした平成元年には、80歳で20本の歯がある人は1割もいませんでしたが、現在は5割を超えました。歯を維持することができるようになってきた今、嚙んだり、のみ込んだりといったお口のさまざまな機能もあわせて維持することで人生100年時代をより健康に生きようという考え方が、オーラルフレイルです。

オーラルフレイルの対策・改善で健康長寿を

 「元気に健康で長生きする」ことは、誰もが考える理想の老後です。「まだまだ自分は元気だ」と思える今だから、オーラルフレイルに早めに気づき、予防、改善することで健康長寿をめざしましょう。

(取材・文 原幸代)

監修:平野浩彦

  • 平野浩彦
  • 平野 浩彦(ひらの・ひろひこ)

    東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科部長

    医学博士、歯科医師。1990年日本大学松戸歯学部卒業。東京都老人医療センター(現・東京都健康長寿医療センター)歯科口腔外科研修医、国立東京第二病院(現・国立病院機構東京医療センター)口腔外科研修医を経て、1992年東京都老人医療センター歯科口腔外科主事、2002年同センター医長、2009年東京都健康長寿医療センター研究所専門副部長。2016年より現職。

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