<連載> ワクチンを知ろう

新型コロナワクチン、なぜ高齢者から優先接種? その次の対象者は?

新型コロナウイルスとワクチン(2)今後のスケジュールと新規ワクチンの見通し

2021.03.24

 新型コロナウイルスのワクチン接種は、4月から65歳以上の高齢者への優先接種が始まります。なぜ、高齢者からなのか。その後の対象者、接種のスケジュールはどうなるのでしょうか。専門家に聞くQ&A、2回目は「優先接種の進め方」についてです。

新型コロナワクチンの小分け

死亡者の9割超が60歳以上、重症化リスクも高い

Q: 政府の新型コロナウイルスワクチンの接種計画で、65歳以上の高齢者は、医療従事者に続いて優先的に接種することになっています。どうして高齢者を優先して接種するのですか?

A: 新型コロナウイルスによる死亡者の9割以上が60歳以上と、若い人に比べて高齢者は死亡リスクが高く、同時に、重症化するリスクも高いからです。

 厚生労働省によると3月17日現在、7968人が新型コロナウイルスにより亡くなりました。うち96%が60歳以上です。年代別の死亡率をみると、40代が0.1%なのに対し、70代は5.3%、80代以上は14.0%と、それぞれ53倍、140倍高くなっています。

 その理由としては、(1)高齢になるほど様々な持病を抱えている人の比率が高くなる、(2)体力や免疫力が衰えるため感染症に対する抵抗力が低くなる、といった要因があります。リスクの高い人たちの命を守ると同時に、重症化する人たちの治療をする医療機関への負荷を減らすためにも、重症化しやすい人たちを優先して、ワクチンの接種が行われるわけです。

新型コロナの陽性者数と死亡者数

Q: 接種は、どのようなスケジュールで行われますか?

A: 高齢者として優先的に接種を受けられるのは、2021年度中に65歳になる1957年4月1日以前に生まれた人です。全国に約3600万人います。ただし、4月12日以降、全員が一斉にワクチンを打てるようになるわけではありません。

 当面の間、ワクチンはすべて輸入ワクチンで、入ってくる数量が限定的なことや、空港から各地の接種会場までの配送や接種会場の運営などがスムーズに進行するかどうかを確認しながら進める必要があることから、4月中は、限定的に接種が進められる計画です。

 具体的には、4月12日の開始に備え、その前週に9万7500回分のワクチンが全国に発送されます。内訳は、東京、神奈川、大阪の3都府県が3900人分ずつ、それ以外の道府県は1950人分ずつ。続く2週間は各週それぞれ約49万人分ずつ全国に配送し、6月末までに約3600万人分すべての配送を完了する計画をたてています。ただ、輸入量が現時点ではまだ不透明なので、接種スケジュールも流動的です。

次の対象は呼吸器病や心臓病、糖尿病の人たち

Q: 接種はどこで受けることができますか。接種費用は個人負担ですか?

A: ワクチンの接種は、原則として、住民票のある地方自治体で受けます。ただし、高齢者施設や介護施設に長期間入っている人や、病院に長期間入院している人は、施設や病院で接種を受けられます。接種はいずれの場合も無料です。

 施設や病院に入居・入院していない人がどこで接種を受けるのかは、地方自治体によって異なります。多くの自治体は、体育館のような広い会場で大勢に一度に接種する方法を準備しています。一部の自治体は、かかりつけの診療所やクリニックでも接種を受けられる準備をしています。

 接種を受ける順番が近づいてきた人には、自治体から「接種券(クーポン)」と案内が届きます。そこに接種場所や時期などが書かれています。接種を受けにいく際には、「接種券」が必要です。

Q: 医療従事者と高齢者以外の人は、いつ、どこで接種を受けることになりますか? 費用はかかりますか?

A: 医療従事者と高齢者の次に優先的に接種を受けられるのは、慢性的な心臓病や腎臓病、糖尿病などの持病のある人やBMI30以上の肥満の人、そして高齢者施設で働く人です。その後、2021年度中に60~64歳になる人、そして最後にそれ以外の16歳以上のすべての人、という順番で接種が行われていく予定です。

優先接種の考え方

 それぞれ、接種がいつごろになるのかはまだわかりません。ただし、3月現在の見通しでは、高齢者向けのワクチンの配送がすべて終わるのが6月末ですので、それ以外の人向けのワクチンの配送は7月以降になり、接種も7月以降になる可能性があります。

 接種場所は、高齢者と同様、原則として住民票のある地方自治体です。また、費用も無料です。

新型ワクチン、ファイザー以外に2社が申請中

Q: 接種が予定されているワクチンはどんな種類ですか?

A: 3月末時点で緊急承認されて接種が始まっているワクチンは1種類、米ファイザー社と独ビオンテック社の開発した「コミナティ」です。「m(メッセンジャー)RNAワクチン」と呼ばれる、新しいタイプのワクチンです。

 RNAにはDNAと同じように、生物や病原体の体の設計図となる遺伝情報が記されています。新型コロナワクチンには、新型コロナウイルスの表面にある突起状のたんぱく質の設計図であるmRNAが、脂質の膜(微小な粒子)にくるまれて入っています。

 接種すると、ワクチン内のmRNAをもとに、体内の細胞でウイルスの目印になる突起状のたんぱく質が作られ、体内での免疫反応によって、新型コロナウイルスに対する免疫ができます(詳細は、連載の第1回を参照ください)。

 RNAワクチンは20年以上前から研究されていましたが、実際にヒトで使われるのは今回が初めてです。

Q: ほかに承認されそうなワクチンはありますか?

A: 承認申請が出ていて審査中のワクチンが2種類あります。当面は、ファイザー社のmRNAワクチンを含め3種類が使われるとみられます。すべて輸入ワクチンです。

 現在、承認審査が行われているものの1種類は、英オックスフォード大学と英アストラゼネカ社の開発したもので、「ウイルスベクターワクチン」と呼ばれる種類です。新型コロナウイルスとは別のウイルス(サルのアデノウイルス)を増殖しないように処理し、無毒化した上で、そのウイルスの殻の中に新型コロナウイルスの突起状たんぱく質の設計図となるDNAが入れてあります。

 このワクチンを打つと、殻の中のDNAが体内の細胞に入ります。そのDNAをもとに、ウイルス特有のたんぱく質が作られ、RNAワクチン同様、免疫ができます。

 「ベクター」は運び屋という意味で、ウイルスの殻が新型コロナウイルスのDNAを体内の細胞に運ぶので、「ウイルスベクター」と呼ばれます。

 もう1種類は米モデルナ社と米国立保健研究所(NIH)が開発し、国内では武田薬品工業が承認申請したワクチンで、これもmRNAワクチンです。人工合成した新型コロナウイルスの突起状たんぱく質のmRNAが使われていますが、周りの脂質粒子などがファイザー社とは異なります。詳細は企業秘密で明らかにされていません。

Q: ワクチンは何回打つ必要がありますか?

A: 同じ種類のワクチンを2回、打ちます。1回目の接種だけでは十分な免疫ができない可能性があるからです。1回目と2回目の間隔は、ワクチンの種類によって異なります。ファイザー社のワクチンは3週間間隔です。

Q: 接種するワクチンの種類は選べますか?

A: 日本政府は「選べない」とは言っていませんが、現実的には供給が限られるため、ワクチンの種類を選べる可能性はほとんどありません。接種が進む英国や米国などの政府は、明確に「選択できない」としています。

 英国は4月7日になり、30歳以下の人は、希望すればアストラゼネカ社製以外のワクチンを接種できることにしました。これは、同社製のワクチン接種後に、比較的若い世代に非常にまれな血栓症が起こる可能性があることを踏まえた対応です。(編集部注:4月上旬段階の情報を追記しました。血栓症との関係について、詳しくは連載5回目「ワクチン副反応は2回目接種後が強め? アナフィラキシーの頻度は?/副反応の特徴、アレルギー・血栓などとの関わり」をご覧ください)

Q: 接種は義務なのでしょうか?

A: 政府は接種を勧めていますが、義務ではなく、接種を強制されることはありません。最終的には自分で接種を受けるかどうかを決めます。このため、接種を受ける際には、同意書に署名する必要があります。

(取材協力=東京大学医科学研究所・石井健教授、構成=大岩ゆり)

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  • 石井 健
  • 石井 健(いしい・けん)

    東京大学教授(医科学研究所 感染・免疫部門ワクチン科学分野)

    93年横浜市立大学医学部卒業。麻酔科臨床医として病院勤務の後、96~03年まで米食品薬品局(FDA)ワクチン部門で客員研究員や臨床試験審査官を務める。大阪大学准教授や同大特任教授、医薬基盤研究所ワクチンアジュバント研究センター長などを経て、19年より現職。

  • この連載について / ワクチンを知ろう

    新型コロナウイルスのワクチン接種が65歳以上の高齢者への優先接種を皮切りに本格化します。なぜ、どんな効果が期待できるか。免疫はどう働き、副反応はなにか。アナフィラキシーの注意点は? 専門家に聞きました。

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