介護の助けとなる認知症サポーターについて知ろう

人生100年時代を生きるキーワード・認知症サポーター

2021.03.31
認知症サポーターイメージ

 もし、認知症になった親を介護しなければならなくなったら、どのようにサポートしたいですか。 サポートには認知症についての正しい知識と理解が必要となります。国が取り組む施策の一つとして、認知症を理解するきっかけをつかむための講座として「認知症サポーター養成講座」が各地で開かれています。ここでは、「認知症サポーター」の目的や役割についてお伝えします。

<目次>

認知症サポーターの役割や活動内容

 認知症サポーターの役割や活動内容について紹介します。

認知症サポーターとは?

 認知症サポーターは、認知症について正しい知識と理解を目指し、認知症の人やその家族らをできる範囲でサポートすることを期待される支援者のことです。約90分間の「認知症サポーター養成講座」を受講すれば、誰でも認知症サポーターになることができます。

 厚生労働省は2005年、「『認知症を知り地域をつくる10カ年』の構想」を策定し、今後多くの人々に認知症が正しく理解され、認知症の人が安心して暮らせる町がつくられていくよう、その第一歩として普及啓発活動を開始しました。キャンペーンの主な取り組みとして「認知症サポーター100万人キャラバン」が掲げられました。2015年には認知症施策推進総合戦略の中で「認知症への理解を深めるための普及・啓蒙(けいもう)の推進」という戦略が立案され、「認知症サポーター」はその中で主な施策として位置づけられたのです。認知症サポーターは、介護や医療の関係者だけではなく地域の人を中心として、さまざまな場所でそれぞれの役割のもと活動しています。

認知症サポーターの人数や性別は?

認知症サポーターの養成状況
出典:厚生労働省 地域包括ケアシステムと認知症施策 認知症サポーター の養成状況(平成31年3月末)をもとに作成

 認知症サポーターは2019年3月末の段階でのべ約1144万人に到達しています。新たに認知症サポーターになる人は年々増加傾向にありましたが、2020年(令和2年)は新型コロナウイルス感染拡大の影響で大幅に減少しました。しかし、2021年以降は各地でオンラインによる講座が始まり再び増加に転じています。

認知症サポーターの性別の内訳
認知症サポーターの年齢の内訳
出典:厚生労働省 【資料版】認知症介護研修等受講者数等調べ サポーター養成状況の詳細 サポーターの性別・年代別構成(平成27年12月)

 認知症サポーターの構成比は、女性約6割、男性約4割です。小学校で開催されることが多いため、年齢別では10代以下が最も多い特徴があります。子どものうちから認知症についての知識を身につけることは、認知症の人やその家族にとって暮らしやすい社会の実現へつながっていくことでしょう。

認知症サポーターになるメリットは?

家族が認知症になった場合でもあわてることなく対処ができる
 認知症サポーターになることで、認知症の知識と理解を身につけることが期待できます。もし、家族が認知症になったとしても、あわてることなく対処ができる可能性が高まります。

介護について相談する相手ができる
 お住まいの地域に認知症サポーター同士のネットワークがあれば、生活上の不安や悩みを相談できるでしょう。精神的な負担がある場合は軽減できるかもしれません。

認知症サポーターキャラバン

 認知症サポーターを全国で養成するための「認知症サポーターキャラバン」についてご紹介します。

認知症サポーターキャラバンとは

 認知症サポーターキャラバンとは、認知症サポーターを全国で育成し認知症の人が安心して暮らせる町づくりを目指す活動です。さらに、認知症サポーターの育成だけでなく、全国の自治体や企業などと協力して、講師役である「キャラバン・メイト」の育成にも取り組んでいます。

キャラバン・メイトとは

 キャラバン・メイトは「認知症サポーター養成講座」を企画・開催し講師まで務める人たちのことです。キャラバン・メイトになるには、自治体や企業が実施する「キャラバン・メイト養成研修」のカリキュラムを6時間程度受講する必要があります。キャラバン・メイトは、講師開催をきっかけに、地域の人から相談を受けたり関係機関との連携を図ったりすることを通じて、地域のリーダー的役割が期待されています。

キャラバン・メイト養成研修を受講する条件

 キャラバン・メイト養成研修を受講するには一定の要件を満たす必要があるため、認知症サポーターと異なり、誰でも受講できるわけではありません。

 以下の資格を有しているか、同研修を修了していることを前提に、年間10回程度(最低実施数3回)の「認知症サポーター養成講座」を(原則として)ボランティアの立場で実施できる人が対象となります。

  • ・認知症介護指導者養成研修修了者
  • ・認知症介護実践リーダー研修(認知症介護実務者研修専門課程)修了者
  • ・介護相談員
  • ・認知症の人を対象とする家族の会
  • ・上記に準ずると自治体等が認めた者
  • ・行政職員(保健師、一般職等)
  • ・地域包括支援センター職員
  • ・介護従事者(ケアマネジャー、施設職員、在宅介護支援センター職員等)
  • ・医療従事者(医師、看護師等)
  • ・民生児童委員
  • ・その他(ボランティア等)

出典:厚生労働省【資料版】認知症介護研修等受講者数調べ 自治体によるメイト研修修了者の受講要件内訳(平成27年12月)

認知症サポーターになるための養成講座について

 認知症サポーターになるためには各自治体などで開催される「認知症サポーター養成講座」(約90分)を受講する必要があります。養成講座の内容や費用について説明します。

1.認知症サポーター養成講座とは?

 認知症サポーター養成講座は、自治体または企業などが主催する講座です。講座を受講した人は、その証しとして「オレンジリング」が受け取れます。

オレンジリング

 認知症サポーター養成講座を開催したい場合は、自治体の高齢者支援を担当する課に申請すると、キャラバン・メイトの紹介やテキスト、DVDなどの教材を貸し出してくれます。各自治体のホームページに講座に関する案内が記載されている場合もあります。

認知症サポーター養成講座の内容や費用は?

 以下のような内容の講義が90分程度で行われます。

  • 〇認知症とは(症状・診断・治療)
  • 〇認知症の予防
  • 〇認知症の人と接するときの心構え
  • 〇認知症介護をしている家族の気持ちを理解する
  • 〇認知症サポーターのできること

 養成講座を受講する際の費用は、原則的に主催者である自治体や団体が負担するため、無料で受講できます。

さらに学びたい人はステップアップ講座を受けよう

 認知症サポーターになった人で、さらに幅広く認知症のことを学びたい人には、自治体によっては「ステップアップ講座」が用意されています。自治体によって内容はさまざまですが、認知症サポーター養成講座で学んだ知識をさらに深めることができるかもしれません。

専門医が監修、臨場感が体験できる認知症フレンドリー講座

 朝日新聞社では、認知症になったとしてもこれまで通り安心して暮らし続けられる社会づくりを目指す活動である「認知症フレンドリープロジェクト」を推進しています。

【公式】認知症フレンドリー講座|朝日新聞(https://dementiavr.asahi.com/

認知症の理解を深め、認知症の人とともに暮らす社会を考える体験型の講座

認知症サポーター

 「認知症フレンドリープロジェクト」の一環として、認知症のことを理解し、認知症の人とともに暮らす社会を考える「認知症フレンドリー講座」を2019年4月から始めました。本人インタビューの視聴や、認知症の人が日常生活で見ている視点をバーチャルリアリティー(VR)の技術を使って体験してもらうことが特徴で、認知症について新たな認識を深め、自分事として考えてもらう体験型の講座です。

認知症フレンドリー講座プログラムの特徴

  • ・認知症治療の専門医が監修
  • ・認知症の人が体験や思いを語るインタビュー動画
  • ・専門医が認知症をわかりやすく解説する動画
  • ・認知症の人や専門家に取材を重ねたVR動画

引用:「朝日新聞社ホームページ」https://dementiavr.asahi.com/

SDGsの理念にかなう活動、認知症フレンドリープロジェクト

 認知症フレンドリー講座は、SDGs(持続可能な開発目標)の理念にかなう活動になっているため、SDGsを目指す企業研修や自治体の地域住民向け啓発イベントなどでも導入が進んでいます。

認知症の人やその家族が暮らしやすい社会を目指そう

 国が施策として推進する「認知症サポーター養成講座」から、民間の立場で展開する「認知症フレンドリー講座」まで、認知症のことを学ぶ場の情報をご紹介してきました。認知症の問題は超高齢社会である日本にとって大きな社会課題だと認識されています。しかしながら、認知症についての誤解や思い込みがまだ残っている分野でもあります。ひとごとと決め込まないで、自分にとっても身近な問題として考えていくことが重要です。その手始めとして各講座を受講することは、認知症を知るきっかけになるかもしれません。認知症の人やその家族が安心して暮らしていける社会を目指すことは、私たちにとっても暮らしやすい社会につながるのではないでしょうか。

(取材・文 山口尚孝)

監修:朝田隆

  • 朝田隆
  • 朝田 隆(あさだ・たかし)

    東京医科歯科大学客員教授 メモリークリニックお茶の水理事長 筑波大学名誉教授

    1955年生まれ。1982年東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学神経科、山梨医科大学精神神経科、国立精神神経センター武蔵野病院を経て、2001年筑波大学臨床医学系精神医学教授、2015年筑波大学名誉教授、東京医科歯科大学客員教授、メモリークリニックお茶の水院長。アルツハイマー病を中心に認知症疾患の基礎と臨床に携わり、脳機能画像診断の第一人者。数々の認知症実態調査に関わり、認知症発症前の軽度認知障害のうちに、治療・予防を始めることを強く推奨。『認知症グレーゾーン』(青春出版社)ほか、著書多数。

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