<連載> ワクチンを知ろう
ワクチンの効果どう測る? 新型コロナの発症予防「95%」とは?
新型コロナウイルスとワクチン(4)効き目は若者・高齢者でも同じ? 変異株にも効果はあるの?
65歳以上の高齢者を対象にした優先接種が間もなく始まる新型コロナウイルスのワクチン。その効き目はどの程度なのでしょうか。効果は高齢者でも変わらない? 変異株にも効くのでしょうか? 専門家に聞くQ&Aの4回目は、「新型コロナワクチンの効果」です。

「95%の効果」、発症率が20分の1に
Q: 新型コロナワクチンの効果はどれぐらいあるのですか?
A: いま国内で接種が行われている米ファイザー社と独ビオンテック社のワクチン「コミナティ」は、新型コロナウイルスの発症を防ぐ効果が95%あると報告されています。
これは、海外で実施された臨床試験(治験)の結果です。実際に接種が進むイスラエルでは、ほぼ同程度の効果が報告されました。
承認申請中の英アストラゼネカ社のワクチンは、海外で行われた臨床試験では平均70%の効果でした。日本では武田薬品工業が承認申請している、米モデルナ社のワクチンは、発症予防効果が94.1%でした。
Q: 「95%の効果」とは、どういう意味ですか?
A: 打たない場合に比べ、発症するひとの割合を95%減らすことができる、という意味です。つまり、ワクチンを打つことで、新型コロナを発症する確率が、打たない場合の20分の1に抑えられる、ということです。
たとえば、ワクチンを打っていない1千人のうち百人が感染して発症したとすると、ワクチン接種した1千人では5人しか発症しないような状態を「95%の効果」と言います。
この場合、打たない人の発症率は10%に対し、打った人の発症率は0.5%、打った人は打たなかった人の20分の1、つまり5%しか発症しなかったので、「95%の効果」という表現になります。言い換えれば、ワクチンは、発症していたかもしれない95人の発症を防ぐことができたということです。

実際のファイザー社の臨床試験では、ワクチンを打たなかった人1万8325人のうち162人(0.88%)が発症したのに対し、ワクチンを打った1万8198人のうち発症したのは8人(0.04%)でした。これに、それぞれの人の接種後の観察期間を考慮し、効果を計算しています。
高齢者への効果、他年代と大きな差はなし
Q: ワクチンの効果は高齢者でも同じですか?
A: 世界に先駆けて昨年12月上旬からワクチン接種を始めた英国の保険省によると、70歳以上の人のワクチンの発症を防ぐ効果は他の年代の人たちの効果とほとんど変わらなかったそうです。
同省は、発熱など新型コロナウイルス感染症を疑うような症状が出て検査を受けた70歳以上の高齢者約15万7000人について、ワクチン接種の有無や、ワクチン接種からの日数などから効果を分析しました。それによるとファイザー社製のワクチンを2回打った80歳以上の人の発症を防ぐ効果は89%で、16歳以上の全年齢が参加した臨床試験の効果95%に比べ、大きな差はありませんでした。
アストラゼネカ社製のワクチンは、英保険省がデータをまとめた時点でまだ2回目接種が行われていませんでしたが、1回の接種を受けた70歳以上の人の接種から35日以上経った後の発症を防ぐ効果は73%で、やはり臨床試験の結果と差はありませんでした。
ただし、高齢者の免疫力のつきかたは、若い人より遅くなる傾向があるようです。ケンブリッジ大学の研究チームが20代~80代の26人にファイザー社製のワクチンを打って体内に新型コロナウイルスに対する抗体がどれぐらいできたか調べた研究では、80代の15人中7人は、1回の接種だけでは十分な抗体ができていませんでした。ただし、その7人も2回目の接種を受けた後には、他の人たちと同じ程度の抗体ができ、2回接種の後には、年齢による差は無かったそうです。
ワクチンの供給量が限られているため、現在、ワクチンをまず1回接種し、2回目の接種を遅らせたらどうなるかという研究もされていますが、ケンブリッジ大の研究チームは、高齢者には2回接種した方がいいとしています。
接種後も公共の場では「マスク着用」呼びかけ
Q: ワクチンを打ったら、すぐに効果が出るのですか?
A: ファイザー社製のワクチンは、2回目接種が終わってから2週間経たないと、臨床試験と同じような効果はでないと考えられています。
連載の第1回で紹介したように、新型コロナウイルスに対する抗体ができるのには2~3週間かかります。また、2回打たないと発症を防ぐ効果が十分ではない可能性もあるので、原則として2回、接種することになっているからです。
Q: ワクチンを打ったらもうマスクをしなくていいのですか?
A: 厚生労働省は、公共の場では引き続きマスクをするよう、呼びかけています。
ワクチンには、発症や、重症化を防ぐ効果があることはわかっていますが、感染を防ぐかどうかはわかっていません。このため、感染していても症状が出ないだけで、他の人に感染を広げる可能性が残っています。マスク着用の呼びかけは、こうした可能性を考慮したものです。
米疾病対策センター(CDC)は、ワクチン接種の終わった人同士なら、屋内でマスク無しで集まっても大丈夫だとしています。また、親類を訪ねるなど、別の1世帯と、屋内でマスク無しで会ってもいいとしています。ただし、相手が、高齢者や糖尿病など重症化リスクの高い人と同居している場合は例外で、マスクをした方がいいそうです。
変異株への効果、株やワクチンの種類で差
Q: 変異したウイルスにもワクチンは効果があるのですか?
A: 変異の種類や、ワクチンの種類によっては、効果が下がる場合もあります。
世界保健機関(WHO)が、「懸念される変異ウイルス」として挙げているのは、英国で最初に見つかった変異ウイルス(英国株)や、南アフリカで最初に報告された変異ウイルス(南ア株)、ブラジルや日本で報告された変異ウイルス(ブラジル株)です。
米CDCは、ワクチンを接種した人の血液を使って変異株への効果を調べる実験の結果などから、ワクチンの効果の低減は、南ア株がもっとも大きく、次いでブラジル株で、英国株はワクチンへの影響は一番小さいだろうとしています。
影響は、ワクチンの種類によっても異なります。CDCやWHOによると、米ファイザー社や、日本では承認申請中の米モデルナ社のmRNAワクチンは、英国株に対しても、南アフリカ株でも、あまり効果が落ちませんでした。アストラゼネカ社のワクチンは、南アフリカ株に対し、効果が落ちるという結果でした。
アストラゼネカ社が南アフリカで実施した小規模な臨床試験では、軽症~中等症の症状を防ぐ効果は約10%にとどまっていました。ただし、WHOは、重症化を防ぐ効果が落ちたかどうかはまだ不明として、南アフリカ株の流行している地域でも、アストラゼネカ社製のワクチンの接種を推奨するとしています。
ワクチンメーカーはすでに、変異株に対してより効果の高いワクチンの開発を始めているそうです。
Q: ワクチンの効果はどれぐらい持続するの?
A: 臨床試験が始まってから1年も経っていないため、効果がどれぐらいの期間、持続するのかはまだわかっていません。
また、今後、ワクチンの効果を大きく下げるような変異が出てくれば、最初に打ったワクチンでは感染を防ぐ効果が期待できなくなる可能性もあります。
英国のワクチン大臣ナディム・ザハウィ氏は、英BBC放送のインタビューに対し、「(変異ウイルスのために)新型コロナウイルスワクチンも、インフルエンザワクチンのように毎年、接種が必要になるかもしれない」と話していました。
(取材協力=東京大学医科学研究所・石井健教授、構成=大岩ゆり)
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この連載について / ワクチンを知ろう
新型コロナウイルスのワクチン接種が65歳以上の高齢者への優先接種を皮切りに本格化します。なぜ、どんな効果が期待できるか。免疫はどう働き、副反応はなにか。アナフィラキシーの注意点は? 専門家に聞きました。
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