ワクチンを接種すると、体がだるくなったり、打った場所が痛んだり、腫れたりするといった副反応がおこります。新型コロナのワクチンの場合、どんな副反応がどの程度あるのでしょうか。強いアレルギー反応、アナフィラキシーの発生頻度はどれぐらいでしょうか。専門家に聞くQ&A、5回目は「副反応・アレルギー」です。
※アストラゼネカ社製のワクチンについて、4月上旬段階の情報を追加しました。

副反応、接種1回目より2回目に出やすい
Q: 新型コロナウイルスのワクチンは新しいタイプだそうですが、副作用(副反応)は心配ないのでしょうか?
A: 連載の1回目で触れたように、どのようなワクチンも、人工的に体内で免疫反応を起こすことで、実際に感染しそうになった場合に備えます。このため打った部位が腫れる、痛くなる、熱が出るといった免疫反応に伴う症状が起きることがあります。まれに、ワクチンに含まれている成分に対して強いアレルギー反応の出る人もいます。新型コロナウイルスのワクチンは、こういった反応が他のワクチンよりも少し多く出る傾向があるかもしれないとされています。
ワクチン接種が進む米国の疾病対策センター(CDC)によると、米ファイザー社と独ビオンテック社の開発したワクチンを打った後に主な副反応として、次のような症状が報告されています。このワクチンは日本でいま接種が始まっているのと同じものです。
打った部位の痛み(1回目の接種後は約68%の人、2回目の接種後は約75%の人)、倦怠(けんたい)感や疲労感(同29%、50%)、頭痛(同26%、42%)、筋肉痛(同17%、42%)、寒気(同7%、27%)、発熱(同7%、25%)、打った部位の腫れ(同7%、27%)、関節痛(同7%、21%)、吐き気(同7%、14%)といった症状です。こういった副反応は、他のワクチンよりも高い傾向があります。
接種した翌日に、痛みで腕が上がらなくなる人や、疲労感が強くて仕事に行けない人もいますので、ワクチンを打つ日程は、翌日以降のスケジュールを加味して決めた方がいいかもしれません。色々な副反応は、ほとんどの場合、数日で改善します。数日経っても改善しない場合や症状が強い場合、普段とは違う体調変化を感じた場合は、医療機関で相談して下さい。
Q: なぜ2回目の接種の後の方が、1回目より強い副反応が出るんですか?
A: 1回目の接種で、体内には新型コロナウイルスをやっつける抗体ができ始めています。そこに2回目の接種で、新型コロナウイルスのたんぱく質が体内に入ってくると、最初の時よりも強い免疫反応が体内で起こるため、それに伴う副反応も強く出ます。

アナフィラキシーの発生頻度、日本は高め?
Q: 強いアレルギー反応、いわゆるアナフィラキシーはどれぐらいの割合で起こるのですか?
A: 強いアレルギー反応「アナフィラキシー」は、米国では100万回接種あたり約5回、英国では同約17回の頻度で起きています。一方、現時点で国内では、もっと高い頻度で起きています。しかし、厚生労働省の検討部会では、国全体でワクチン接種を休止する必要があるような、安全性に懸念がもたれる状態ではないとしています。
アナフィラキシーは、じんましんが出たり呼吸が苦しくなったり血圧が下がって意識がもうろうとしたり、といった全身の様々な症状がでるアレルギー反応です。何もしなければ命が脅かされることもあります。疑われる症状が出始めたらなるべく早く横になり、必要に応じてアドレナリン(エピネフリン)や、気管支を広げる薬やステロイド薬などで治療します。
国内の医療従事者への接種では、3月21日までに接種をした57万9000回のうち181件のアナフィラキシーが起きたと報告されました。100万回接種あたり313回という計算になります。ただし、専門家が3月21日までに報告された181件について詳細に検討したところ、132件は情報が不足していてアナフィラキシーかどうか判断ができず、2件はアナフィラキシーの可能性は低いという分析結果になり、アナフィラキシーとされたのは47件でした。この件数で計算すると100万回あたり81件となります。実際の発生頻度はもっと低い可能性があります。
米国では、接種開始直後には発生頻度が100万回あたり11回だったのが、接種を受けた人の人数が増えるにつれ発生頻度がだんだん低くなってきました。もっと大勢が接種を受けるまで様子をみないと、日本人がとくにアナフィラキシーを起こしやすい傾向があるかどうかは判断できません。
報告された人の多くは、食品や医薬品に対するアナフィラキシーを含むアレルギー症状を起こしたことが過去にある人でした。ただし、何も持病のない人もいました。全員、回復しています。
Q: 新型コロナウイルスワクチンでアナフィラキシーが起きる原因は何ですか?
A: まだわかっていません。厚生労働省は、ファイザー社のワクチンの成分であるポリエチレングリコール(PEG)の可能性もあるとして、PEGに重いアレルギー反応を起こしたことがある人には接種を推奨していません(詳細は、連載3回目を参照ください)。

Q: 食物アレルギーなどアレルギーのある人や、過去にアナフィラキシーを起こしたことのある人は、ワクチンを打たない方がいいでしょうか?
A: 厚労省は、米国や英国では、ワクチンの成分以外の食物や医薬品などに対するアレルギーやアナフィラキシーの経験がある人にもワクチン接種を制限していないことから、国内でも制限していません。
ただし、米国で新型コロナウイルスワクチンを打った後にアナフィラキシーが起きた人の80%は何らかのアレルギーを経験したことがあり、24%の人はアナフィラキシーの経験があったそうです。心配な方は、かかりつけの医師やアレルギー専門の医師に事前に相談して下さい。
Q: ワクチンを打った後にアナフィラキシーかもしれない症状が起きたらどうすればいいのですか?
A: ほとんどのアナフィラキシーは接種から30分以内に起きています。接種会場には医療従事者が待機していますし、アナフィラキシーの治療薬も準備してありますので、体調の変化を感じたら、すぐに会場の医療従事者に伝えて下さい。
もし会場を出た後に息苦しさや意識がもうろうとするなどの体調変化が起きた場合、可能ならすぐに会場に戻って医療従事者に助けを求めたり、それが無理なら周りの人に助けを求めたりして下さい。
Q: アナフィラキシーの他に、まれに起こる副反応はありますか?
A: 気分が悪くなったり、失神したりする「血管迷走神経反射」の起きることがあります。これは、ワクチンに限らず、採血などで針を刺された時にも起こります。
まれな種類の血栓が起きる可能性も
Q: 副反応のために治療が必要になったり、障害が残ったりした場合には、補償はあるのでしょうか?
A: 厚労相が健康被害がワクチン接種によって起きたと認定した場合には、予防接種法に基づいて、医療費や障害年金などの救済が受けられます。
手続きの流れや救済の内容については、厚労省のサイト(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou20/kenkouhigai_kyusai/)に書かれています。

Q: 国内で審査中の、英アストラゼネカ社製のワクチンを打った後に、血管内に血の塊(血栓)ができた人がいたために、欧州などで接種を休止している国もあるそうですね。このワクチンの安全性は大丈夫でしょうか?
A: 世界保健機関(WHO)の諮問委員会は3月19日、「現段階では(アストラゼネカ社製の)ワクチンの接種によって血栓が増えるとは言えない」という声明を発表しました。しかしその後の分析で、比較的若い世代で起こっている非常にまれな種類の血栓は、ワクチンと因果関係のある可能性があるとわかり、中高年以下には接種を控える国も出てきています。
デンマークやイタリアなどでワクチンを打った後に血栓ができた人が複数報告され、亡くなった人もいて、3月11日以降、欧州諸国やインドネシア、ベネズエラなどが相次いでいったん、接種を中断しました。
しかし、WHOの発表の前日には欧州医薬品庁(EMA)が、欧州と英国でワクチン接種した2000万人のうち469人に血栓ができたという報告があるものの、この人数は、ワクチンをしない場合よりも少なく、ワクチンによって血栓が増えたわけではないという調査結果を発表しました。
ただし、血栓の中でも非常にまれな種類の「脳静脈洞血栓症(CVST)」や、血栓を溶かす成分が大量に出すぎるなどして血が止まらなくなる「播種(はんしゅ)性血管内凝固症候群(DIC)」などで9人が亡くなっており、大半が55歳未満だったと発表。55歳未満での発症はもともとまれで頻度が不明のため比較ができないことや、新型コロナウイルスに感染すると血栓ができやすいと指摘されているためワクチンでも同じ傾向がみられる可能性は否定できないことから、さらに調査が必要としました。
EMAは4月7日、3月22日までに欧州と英国でワクチン接種2500万件のうち62件のCVSTや腹部などの血栓が発生し、うち19人が死亡していたことや、そのほとんどは接種後2週間以内に起きており、大半の患者は60歳以下の女性だったと発表しました。そして、これらの症状はアストラゼネカ製ワクチンの非常にまれな副反応の可能性があるとしました。その上で、アストラゼネカ製ワクチンを接種した後に、息苦しさや、胸の痛み、足に汗をかく、持続的な腹部の痛み、頭痛や視覚がぼやけるといった神経的な症状などが出たら、すぐに医療機関を受診するよう呼びかけました。
似た症状に、「ヘパリン」という血栓を溶かす薬を投与した時の副作用としてまれに起こる「ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)」があります。EMAは、ワクチン接種後にまれな血栓症などが起きる一因として、ワクチンによって体内で起きた免疫反応によりHITのような症状が引き起こされた可能性があるとしています。
その上でEMAは、CVSTやDICは発生頻度が非常にまれなので、ワクチンによって重症化や死亡を防ぐ利益の方が大きいとしています。ただし、接種を受ける際には、こういった症状がごくまれに起きることも知った上で受けて欲しいと注意喚起しています。
イタリアやドイツ、フランス、カナダなど複数の国では、55~60歳以下の人にはアストラゼネカ製ワクチンを接種しないという対策をとっています。英国は、30歳以下の人は希望すればアストラゼネカ製以外のワクチンを接種できることにしました。
Q: ワクチンを打った後に亡くなった人がいるというニュースが流れていました。ワクチンを打って死亡することがあるのでしょうか?
A: ワクチン接種後、3日目にくも膜下出血で亡くなった61歳の女性と、接種4日後に脳出血やくも膜下出血で亡くなった26歳の女性がいたことが厚生労働省に報告されました。専門家は、接種から日数が経っていることや、20代の女性の場合、血管性腫瘍(しゅよう)の可能性もあること、大勢が接種を受けている海外で、ワクチン接種が始まってからくも膜下出血や脳出血が増えているという報告がないことから、因果関係があるとは考えにくいと判断しています。
厚労省の人口動態統計によると、2019年に亡くなった65歳以上の高齢者は約125万4千人で、1日平均3435人が亡くなったことになります。
これから65歳以上の高齢者へのワクチン接種が始まると、ワクチンを打った後に亡くなる人も出てくると予想されます。一方、ワクチン接種がなくても高齢者は亡くなる人数が多いので、ワクチン接種後に亡くなっても、ワクチンが原因で亡くなったとは限りません。
欧米では、ファイザー社製のワクチンの接種が始まった直後に、高齢者が複数亡くなり、ワクチンが原因ではないかと問題になりました。しかし、世界保健機関(WHO)は各国の人口動態などを調べて今年1月、「ワクチン接種によって高齢者の死亡は増加していない」という結論を出しました。
自分が新型コロナウイルスに感染した場合に重症化するリスクや、ワクチン接種の効果と副反応を総合的に考慮して、ワクチンを打つかどうか判断することが大切です。
(取材協力=川崎医科大学・中野貴司教授、東京大学医科学研究所・石井健教授、構成=大岩ゆり)
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この連載について / ワクチンを知ろう
新型コロナウイルスのワクチン接種が65歳以上の高齢者への優先接種を皮切りに本格化します。なぜ、どんな効果が期待できるか。免疫はどう働き、副反応はなにか。アナフィラキシーの注意点は? 専門家に聞きました。
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