<連載> ワクチンを知ろう

コロナワクチンは何種類? 選べるの? 国産ワクチンの開発は?

新型コロナウイルスとワクチン(6)国内外のワクチン開発状況、その種類と特徴

2021.03.31

 新型コロナウイルスワクチンは、4月から65歳以上の高齢者、その後、基礎疾患のある人や60~64歳の人、高齢者福祉施設で働く人へと接種対象が広がっていきます。当面は輸入ワクチンです。国内のワクチン開発や、海外の他のワクチンはどうなっているのでしょうか。専門家に聞くQ&A、6回目は「ワクチンの今後」についてです。

新型コロナのワクチン

審査中の2種、5月にも審査結果が

Q: いま接種されている米ファイザー社と独ビオンテック社のワクチン以外に、どのようなワクチンが供給されるのでしょうか。また、いつごろになるのでしょうか?

A: 承認申請が出され、審査中のワクチンが2種類あります。1種類は、米モデルナ社と米国立保健研究所が開発したワクチンです。もう1種類は、英アストラゼネカ社と英オックスフォード大学の開発したワクチンです。どちらも海外ではすでに接種が始まっています。国内では早ければ5月に審査結果が出るかもしれません。

 モデルナ社のワクチンは、ファイザー社製と同じ「m(メッセンジャー)RNAワクチン」で、武田薬品工業が輸入や国内供給を担当します。アストラゼネカ社のワクチンは「ウイルスベクターワクチン」で、無毒化した別のウイルスの中に新型コロナウイルスの表面に突き出たスパイク(S)たんぱく質のDNAが入っています。mRNAワクチンの仕組みは連載の第1回「そもそもワクチンとは  コロナワクチンの特徴は? mRNAタイプとは」で、ウイルスベクターワクチンは連載の第2回「なぜ高齢者から優先接種? その次の対象者は?」で詳しく説明していますので、そちらも参照して下さい。

 アストラゼネカ社製のワクチンは、副反応で血の塊(血栓)のできる恐れが指摘され、一時期、欧州などでは接種が中断していました。世界保健機関(WHO)や欧州医薬品局が、非常にまれな種類の血栓以外については、ワクチンを打たなかった場合よりも発生頻度が高くなっているわけではないという調査結果を発表しました。まれな種類の血栓については今後も調査が必要としています。

 接種を再開した国が多い一方、カナダのように55歳以下への接種を中断する国も出てきています。詳しくは連載の第5回(「ワクチン副反応は2回目接種後が強め? アナフィラキシーの頻度は?」)をお読み下さい。

コロナワクチンの開発状況(海外)

Q: 国内では、これら輸入ワクチン3種類を接種するのですか?

A: 当面は、この3種類を接種することになります。これ以外に、今年に入って欧米で承認された米ジョンソン&ジョンソン社のワクチンが昨年9月から国内での臨床試験を行っています。また、米ノババックス社のワクチンの国内での臨床試験も今年2月から始まっています。どちらも、年内に国内で承認申請が出される可能性があります。

 ジョンソン&ジョンソン社のワクチンは、アストラゼネカ社のものと同様、「ウイルスベクターワクチン」です。使っているベクターはアストラゼネカ社とは異なり、ヒトのアデノウイルスです。他のワクチンとは異なり接種は1回で、米国や南アフリカで約4万4000人を対象に行われた臨床試験の効果は平均66.3%でした。変異株の増えている南アフリカでの効果が低めでした。

 ノババックス社のワクチンは、蛾(が)の細胞に新型コロナウイルスのSたんぱく質を作らせ、精製したたんぱく質を複数組み合わせてウイルスを模した形のナノ粒子にしたものです。英国で1万5000人を対象に実施された臨床試験では、従来の新型コロナウイルスに対して96.4%の効果、変異のある英国株に対して86.3%の効果があったと発表されています。

 現在、英国で審査中です。また、米国でも大規模な臨床試験が進行中で、早ければ5月にも米国で承認申請が出される可能性があります。国内では武田薬品工業が原液を輸入し、ワクチンを製造することになっています。

国産ワクチン、4種で臨床試験はじまる

Q: 国内ではどのようなワクチンが開発されているのでしょうか?

A: 臨床試験の始まったワクチンが4種類あります。いずれもすべての臨床試験の結果がまとまるのは2022年以降になる見通しです。

 臨床試験には、少人数で安全性を確かめる第1相から効果を確認する第3相まで3段階あります。新型コロナウイルスワクチンの臨床試験では、なるべく迅速に結果を出すため、第1・2相、第2・3相を兼ねた比較的少人数の臨床試験をした後に、大規模な第3相の臨床試験を行われることが多くなっています。

 アンジェス社と大阪大学の開発したワクチンは今年3月、第2・3相の参加者500人全員に接種が終わりました。今後数カ月の経過観察をした後、年内に大規模な第3相試験に入る予定だそうです。アンジェス社のワクチンは環状のDNAに、新型コロナウイルスのSたんぱく質のDNAが挿入してあります。「DNAワクチン」と呼ばれます。打った後に体内で起こる反応は、第2回で紹介したアストラゼネカ社のワクチンとほぼ同じです。

国内でのワクチン開発

 塩野義製薬は昨年12月から、200人規模の最初の段階の臨床試験を始めました。同社が国立感染症研究所などと開発したワクチンは、ノババックス社同様、昆虫の細胞に新型コロナウイルスのSたんぱく質を作らせて精製したものを原料とし、それをワクチン成分として使っています。「組み換えたんぱくワクチン」と呼ばれます。

 また、3月下旬には、第一三共とKMバイオロジクス社も最初の段階の臨床試験を始めました。

 第一三共が東京大学医科学研究所と開発したワクチンはmRNAワクチンです。ただし、ファイザー社やモデルナ社のmRNAワクチンとは異なり、Sたんぱく質全体ではなく、Sたんぱく質のうちヒトの細胞に結合する部位のみのmRNAを使っています。

 ファイザー社製や、審査中のモデルナ製のmRNAワクチンは、副反応が強いことがわかっています。その一因として、もともとRNAは自然免疫の段階で強い反応を起こすためだと考えられています(自然免疫の反応については連載第1回をお読み下さい)。加えて、免疫賦活剤(アジュバント)などにより、さらに自然免疫が活性化されると考えられています。

 第一三共ワクチンを共同開発した東大医科研の石井健教授によると、同社ワクチンは、ワクチンの精製過程を工夫し、新型コロナウイルスとは直接的には関係のない自然免疫を引き起こす物質を除去してあるそうです。マウスの実験では、副反応の原因となるたんぱく質の産生を抑えられている可能例があるそうです。

 KMバイオロジクス社が東大医科研などと共同開発したワクチンは、増殖能力を無くし、無毒化したウイルスを使う不活化ワクチンです。不活化ワクチンは、インフルエンザワクチンなどでも使われており、長期的にみても大きな副反応の無いことがわかっています。

 このワクチンの開発に携わった東大医科研の河岡義裕教授によると、mRNAワクチンや組み換えたんぱくワクチン、DNAワクチンは、新型コロナウイルスのSたんぱく質に対する抗体しか作らないのに対し、不活化ワクチンは新型コロナウイルスの全粒子を使っているので、Sたんぱく質以外のたんぱく質に対しても抗体を作り、より多様な抗体が作られると期待できるそうです。

ワクチン接種の模擬会場

Q: 新型コロナウイルスのワクチンでは、以前からあった不活化や組み換えたんぱくのほか、新しいmRNA、DNAと、さまざまなタイプのワクチンが開発されています。これ以外のワクチンもありますか?

A: 他の感染症に対するワクチンではすでにありますが、生ワクチンや新型コロナウイルスのたんぱく質の一部だけを使うサブユニットワクチンも開発されつつあります。

 生ワクチンは、弱毒化したウイルスそのものを使うワクチンです。打ったワクチンが体内で増殖するため、少量の接種で済み、しかも1回の接種で強い免疫反応が期待できると考えられています。このため、他の種類のワクチンよりも安価で提供できる可能性が高く、発展途上国でも使えるワクチンとして期待されています。ただし、感染性の残ったウイルスを使うだけに、接種を受けた本人から近くにいる人に伝播しないようにする必要があり、安全性の確認などには時間がかかりそうです。

Q: 来年以降のワクチン接種はどうなるのでしょうか?

A: 残念なら現時点では、なかなか確たる見通しは立ちません。接種しているワクチンの効果がどれぐらい持続するのか、また、今後、既存のワクチンでは効果のない変異株がどれぐらい広まるのかといった様々な流動的な要因があり、予想するのが難しい状況です。

(取材協力=東京大学医科学研究所・石井健教授、河岡義裕教授、構成=大岩ゆり)

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  • 石井 健
  • 石井 健(いしい・けん)

    東京大学教授(医科学研究所 感染・免疫部門ワクチン科学分野)

    93年横浜市立大学医学部卒業。麻酔科臨床医として病院勤務の後、96~03年まで米食品薬品局(FDA)ワクチン部門で客員研究員や臨床試験審査官を務める。大阪大学准教授や同大特任教授、医薬基盤研究所ワクチンアジュバント研究センター長などを経て、19年より現職。

  • 河岡 義裕
  • 河岡 義裕(かわおか・よしひろ)

    東京大学教授(医科学研究所 感染・免疫部門ウイルス感染分野)

    78年北海道大学獣医学部卒業。鳥取大学農学部獣医微生物学講座助手や米セントジュード小児研究病院教授研究員などを経て、97年米ウィスコンシン大学教授、99年東京大学医科学研究所細菌感染研究部教授、00年より現職。ロベルトコッホ章や日本学士院賞など受章。米国科学アカデミー外国人会員。

  • この連載について / ワクチンを知ろう

    新型コロナウイルスのワクチン接種が65歳以上の高齢者への優先接種を皮切りに本格化します。なぜ、どんな効果が期待できるか。免疫はどう働き、副反応はなにか。アナフィラキシーの注意点は? 専門家に聞きました。

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