<連載> ワクチンを知ろう

ワクチンを待つ間、気をつけたいことは? 免疫力向上の二つの効果

新型コロナウイルスとワクチン(7)感染予防の基本動作と免疫力を高める工夫

2021.03.31

 新型コロナウイルスのワクチン接種は、4月から65歳以上の高齢者への優先接種が始まり、終わるのは早くて6月末。それ以外の人の接種は夏以降になる見通しです。自分の順番が来るまでの間、どんな点に注意して生活したらいいのでしょうか。専門家に聞くQ&A、7回目は「接種を待つ間の感染予防」です。

ワクチン接種の模擬訓練

3密を避け、マスク・換気・手洗いの基本動作を

Q: なかなかワクチン接種の順番が回ってきそうにありません。打てるようになるまで、どのように過ごせばいいのでしょうか。

A: まずは3密を避け、公共の場や家族以外と一緒に屋内にいる際にはマスクをつけ、部屋の換気をしっかりする、手洗いをこまめにするといった、これまで通りの感染対策を続けることが大切です。一方、どんなに感染対策をしても新型コロナウイルスの性質上、感染を100%防ぐことはできません。感染した場合に重症化しないように体調を整え、免疫力を高めておくことも重要です。

感染予防の工夫
会合を開くときの感染予防策、八つの工夫。国立長寿医療研究センターがまとめたパンフレット

Q: どのように体調を整えればいいですか?

A: 睡眠を過不足なくとって栄養のバランスがとれた食事を食べ、適度に体を動かすという養生訓に沿った生活を送るのが体調を整えるための王道です。喫煙は百害あって一利なしです。

 趣味の会合が中心になったり、講演会がオンラインになったりして、外出して体を動かす機会が減っているかもしれません。国立長寿医療研究センターでは、感染予防に注意しながら、趣味の会合などを開くコツを紹介しています(通いの場 開催の8の工夫、https://www.ncgg.go.jp/ri/lab/cgss/department/frailty/index.html)。

 また、公益財団法人長寿科学振興財団の運営するサイト「健康長寿ネット」では、自宅でできる体操などを、イラストや動画で紹介しています。椅子に座ってできる体操も紹介しています(ロコモ体操、https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/locomotive-syndrome/rokomotaiso.html)。

 体を動かさないと、食欲がわかないかもしれませんが、低栄養にならないよう注意が必要です。国立長寿医療研究センターと愛知県東浦町が作成した「健康長寿教室テキスト第2版」(https://www.ncgg.go.jp/ri/lab/cgss/department/frailty/index.html)には、どれぐらいの栄養が必要なのか、またバランスのとれた食事の工夫の仕方やレシピが紹介されています。

バランスのよい食事1
健康長寿教室テキストから。バランスのとれた食事のコツやレシピなどが掲載されている
 

免疫力向上による二つの効果

Q: なぜ免疫力を高めておくといいのですか?

A: 主に二つの理由があります。ひとつは、感染しても自分の免疫力で体内でのウイルスの増殖を防ぎ、できる限り重症化しないようにするためです。もう一つは、ワクチン接種の順番が回ってきた時にワクチンの効果を高めるためにも大切だからです。

 連載の第1回で紹介したように、免疫反応には病原体が体内に入ってきた時にまず前衛隊として病原体を攻撃する「自然免疫」と、自然免疫から敵の情報を受け取り、後衛隊として病原体の弱みを探して攻撃する「獲得免疫」があります。

 自然免疫は、外敵の侵入など危険を探知したらすぐに攻撃を始めます。自然免疫を担う免疫細胞のうちナチュラルキラー(NK)細胞は、血液中を流れて体内をパトロールしており、ウイルスに感染した細胞など異常の起きている細胞を探知すると攻撃して殺します。

 自然免疫を担うもう1種類の細胞、樹状細胞は、前衛隊と後衛隊の情報伝達役です。死滅した感染細胞から、ウイルスを攻撃する際に目印になりそうな断片を取り込み、その情報を、獲得免疫を担う免疫細胞であるヘルパーT(HT)細胞とB細胞とキラーT(KT)細胞、に伝えます。

RNAワクチンの仕組み
体内では様々な免疫細胞が連携し、ウイルスなど外敵の侵入を食い止めている

 攻撃の目印を「抗原」と言います。B細胞は、抗原の情報を受け取ると、その抗原に特化した武器、「抗体」を作ります。KT細胞は、抗原情報を目印に、ウイルスに感染した細胞を探し、殺していきます。HT細胞は獲得免疫の司令塔で、B細胞やKT細胞を助けています。

 B細胞とT細胞は、敵の情報を記憶しておくことができます。このため、同じ病原体が再び侵入してきた時には、最初より素早く抗体などで攻撃することができます。はしかや水ぼうそうなどに2度感染しないのはこのためです。ただし、インフルエンザなどのように、しばしば大きく変化する病原体の場合は、1度感染しても、また感染することがあります。

 免疫がよく働く状態なら、体内に入ってきた新型コロナウイルスを自然免疫の働きだけで駆逐できるかもしれません。ウイルスの感染は防げなくても、体内でウイルスが増えるのを抑えることができ、重症化を防ぐことができると期待できます。免疫の働きのお陰か、ウイルスの特徴なのかはよくわかっていませんが、新型コロナウイルスの感染者の3割程度は無症状です。

 また、第1回の連載で紹介したように、ワクチンは、獲得免疫の力を利用しているので、免疫状態がよくないと、ワクチンの効果も十分に発揮されない恐れがあります。

Q: どうやって免疫力を高めたらいいのでしょうか?

A: 免疫学が専門の東京大学定量生命科学研究所の新藏礼子教授は、「まずは体調を整えることが大切です。その上で、体内の血流をよくするのも免疫を高めるためのいい方法です」と話しています。

 ウイルスの情報が自然免疫から獲得免疫にスムーズに伝わるためには、情報伝達役の樹状細胞が、獲得免疫を担うB細胞やT細胞にうまく出会う必要があります。樹状細胞は外界と接している気道などの粘膜の下や、皮下など体中のあちこちにいます。一方、B細胞やT細胞はリンパ球の仲間なので、血液中を流れていて、リンパ節で樹状細胞から情報を受け取ります。「血のめぐりが悪いと、免疫細胞同士がうまく出会えず、免疫がうまく働きません」と新藏教授は説明します。

 体内の血のめぐりをよくするには、血流量が体内で一番多い、腸の血のめぐりをよくするのが早道だそうです。そのためには、上記で紹介した体操などを参考に適度な運動をしたり、温かいものを食べたり、腹巻きなどをしたりして、おなかを温めるのもひとつの方法です。

(取材協力=東京大学定量生命科学研究所・新藏礼子教授、構成=大岩ゆり)

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  • 新藏 礼子
  • 新藏 礼子(しんくら・れいこ)

    東京大学教授(定量生命科学研究所 免疫・感染制御研究分野)

    86年京都大学医学部卒業。麻酔科臨床医として病院勤務の後、京都大学大学院へ進み、米国ハーバード大学こども病院に留学。京都大学准教授、長浜バイオ大学教授、奈良先端科学技術大学教授などを経て、18年東京大学分子細胞生物学研究所(現・定量生命科学研究所)免疫・感染制御研究分野教授。

  • この連載について / ワクチンを知ろう

    新型コロナウイルスのワクチン接種が65歳以上の高齢者への優先接種を皮切りに本格化します。なぜ、どんな効果が期待できるか。免疫はどう働き、副反応はなにか。アナフィラキシーの注意点は? 専門家に聞きました。

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