「ぼく、さみしいねん」と言えますか? 上野千鶴子さんが語る「受援力」

「在宅ひとり死のススメ」(下)

2021.04.28

 社会学者の上野千鶴子さんは近著『在宅ひとり死のススメ』で、「老いは誰にも避けられません」と書いています。超高齢社会の「老いの下り坂」を下りていくのに、どのような準備をしたらいいのでしょうか。介護の現場で生まれたキーワードと、ケアをされる時の心構えについて聞きました。

ベンチに座るシニア男性

誰もが老いて弱者になる時代

 超高齢社会では、誰にでも訪れる「老いの下り坂」をゆっくりと下りていく。「おひとりさまブーム」の牽引(けんいん)役となった上野さんは、シリーズ最新作の『在宅ひとり死のススメ』で「老いは誰にも避けられません。死亡率は100%です」と書いた。

 内閣府の「高齢社会白書」によると、1980年には高齢者世帯のうち「三世代世帯」が全体の半数を占めていたが、2018年には10%にまで減少。「老後は子どもと同居」が当たり前ではなくなった。2000年に介護保険が導入されて20年。介護現場の経験値とスキルが上がり、独居の在宅看(み)取りが手に届くようになってきたという。

 老いについて、上野さんは「赤ん坊は、放っておくと死んでしまう無力な存在。みんな一人で育ったような顔をしますが、無力に生まれ、老いると再び無力な存在になっていきます。ケアを誰が担ってきたのか。誰のおかげで大きくなり、誰があなたの老後の世話をするのか。それを忘れていませんか」と語る。

人に助けてもらうスキルを身につけるには

 自分が弱者になると、人に助けてもらうスキルも必要になってくる。介護する人はプロなのに対し、介護される人はアマチュアだ。任せるところは任せながら、主張すべきところは主張する。上野さんは、介護現場で「受援力(じゅえんりょく)」という言葉が生まれた、と話す。人から助けてもらうにも「助けてもらうスキル」があり、「できない」「助けて」と言える力が求められるのだそうだ。

 では、受援力を身につけるにはどうすればいいのか。上野さんは「誰でも、いくつになっても学習できます」と言う。例えば、自分自身がケアをする側にいたら、いずれケアをされる側に回った時にも「こうすれば良い」と分かる。「学ぶ機会は、その気になればいくらでも見つかります。ただ、男の人は自分の弱さを認めたがらないから、これがなかなかできないようですね」

「助けて」と言えるのも能力

 上野さんは講演会などで、老後に男性が生き残る道を“伝授”しているという。「女性の集まりに出かけて、一言、こう言ってください。『ぼく、さみしいねん』。これが言えたらあなたは生きていけます」。反応は様々で、「とっくに実践しています」という人もいれば、「やってみたけれど何の効果もなかった」(笑)という人もいるという。

 「相手に聞こえるように言わないとダメですよ。女性たちは親切だから、これが言えたら構ってくれます」と上野さんは笑う。「ケアをされる準備をするには、弱音を吐くことが大切です。外国に行って言葉ができなければ、赤ん坊と同じ。助けてもらえないと生きていけません。『助けて』と言えるのも能力ですから」

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    社会学者

    1948年生まれ。東京大学名誉教授。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。京都大学大学院社会学博士課程修了。日本における女性学・ジェンダー研究・介護研究のパイオニアとして活躍。著書に『おひとりさまの老後』『男おひとりさま道』(文春文庫)、『おひとりさまの最期』(朝日文庫)など。

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