睡眠専門医に聞く熟睡の方法 睡眠ファーストの生活を

睡眠専門医の白濱龍太郎さんに聞く(上)

2021.04.21

 年をとって眠れなくなってつらい、最近ぐっすりと眠ったことがない、と不眠に悩むひとは多いです。コロナの影響でそうした睡眠の悩みは一層深まっているようです。どうすれば熟睡を得られるのでしょうか。近著「熟睡法ベスト101」(アスコム)で最新の解決方法を紹介している睡眠専門医で、睡眠と呼吸の専門クリニック「RESM新横浜」の白濱龍太郎院長は、「睡眠ファースト」の生活をと訴えています。

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年齢に加えコロナの影響で悩み深く

――年とともに眠りにくくなるのでしょうか。

 眠りは、根本的には睡眠ホルモンであるメラトニンによって制御されています。メラトニンの分泌量は10代がピークで、そのあとは落ちていきます。ですから眠りは必ずだんだん浅くなります。さらに追い打ちをかけるように、年を重ねると、抱えるものが多くなります。親の介護や子どもの進路といったいろいろな家族の悩み、あるいは、社会の中の自分の立ち位置の変化によるストレスなどが増え、一方で運動量は低下します。ですので、眠りの悩みが増えるのは仕方ない部分があるのです。

――コロナの影響はどうでしょうか。

 眠りに関しては悩んでいる人が多いです。コロナで運動量が減っている。在宅勤務で通勤するのが週2日とか、場合によっては週ゼロになっている人がいます。体の疲労、運動は眠りに導く重要なきっかけです。運動量が少ないと、どうしても眠りのパワーが落ちてしまいます。

 もう一つは、社会的な不安感です、そもそも個人的に不安に思っていることがあると、そこにコロナによる不安感が重なってくる。不安がダブル、トリプル、もしくはそれ以上合わさってくることで、寝付きが悪くなってしまうケースが最近非常に多いと感じています。

1日の生活はまず睡眠時間を決めて

 ――「睡眠ファースト」という考え方を提唱されています。

 眠りの方法論に入る前に、眠るということがものすごく大事だということをまず強調しておきたいのです。我々が活動するためには眠りが必要です。休息なしに活動し続けることはできません。眠りは24時間という中で考えがちですが、90年、100年という人生の中でその重要性を認識してもらいたいのです。

――「熟睡法ベスト101」でも、睡眠を後まわしにすることで「『自分の本当の実力』を知らないまま生きているのかもしれません」「熟睡は、自身を強化する『スキル』のひとつ」「熟睡不足は人生を損させる愚行」と書かれています。眠ることがないがしろにされている、眠ることでより能力を発揮できるようになる、ということでしょうか。

 だれでも起きているときにアクティブに活動して、ハッピーな人生を送りたいと思っている。でも、そのために眠ろうとあまり考えない。栄養も大事、運動も大事ですが、わたしに言わせると、栄養と運動に焦点が当たっている以上に睡眠は大事なんです。だけど、睡眠は当たり前すぎてあまり議論されません。記憶力、コミュニケーション能力、判断力、集中力など、あらゆる能力が睡眠不足によって低下します。

 眠りの時間が短い、質が悪いと認知症のリスクが増えることは、研究結果が出ています。血管の老化の予防に重要なのは睡眠であることも、エビデンスレベルだとだれもが疑いようがない。でも、そのわりにはみなさん、睡眠を削るじゃないですか。少しでも健康寿命を延ばしたい、心身のコンディションを維持していきたい、というのであったなら、眠りはもっときちんとフォーカスされるべきだと思います。

 布団をどうする、枕をどうする、と言う前に、まず、自分の生活の中で眠ることの優先順位を上げる。仕事より何より、まず、睡眠時間を決めて、そこから逆算してスケジュールを決める。それが「睡眠ファースト」の生活です。

睡眠ノートをつけてみましょう

――「睡眠ノート」をつけることを勧めていらっしゃいます。

 基本はとてもシンプルです。まずはざくっとでいいですので、毎朝、きょう何時に寝て、何時に起きるか、その日の目標を書きます。たったこれだけのことですが、それによって、睡眠を意識した行動を取るように生活が変化していくことが多いのです。そして、できれば次の日、実際の就寝、起床時間を記録してください。1週間ごとに振り返ることで、自分の生活習慣など見えてくることがあります。

 睡眠は一日の中で連続して非常に長い時間を占めるものです。睡眠時間によってほかの活動のリズムも決まります。24時間から自分の決めた睡眠時間を引いた残りの時間を、仕事や家事などやるべきことに配分していく。それを習慣化できたら、「睡眠ファースト」のメリットを実感されることと思います。

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    白濱龍太郎 (著)
    出版社:アスコム

     1万人以上を治療した睡眠の専門医が、最新研究の情報と確かな知見から、科学的に正しい解決策を指南します。朝、昼、夜などの各シーンに合わせ、「やるべきこと」「やってはいけないこと」を具体的に解説。一般には知られていない意外な話、間違って逆効果の行動をしがちなことなど、選りすぐりの「101」の熟睡法を掲載しています。睡眠習慣を整えるための「睡眠ノート」の作り方も公開。

  • 白濱龍太郎
  • 白濱 龍太郎(しらはま・りゅうたろう)

    睡眠、呼吸器内科、在宅医療の専門クリニック「RESM新横浜」院長

    筑波大医学群医学類卒業。東京医科歯科大大学院統合呼吸器病学修了。東京共済病院、東京医科歯科大附属病院を経て2013年に「RESM新横浜」開設。日本睡眠学会認定施設として専門医療を提供している。経済産業省海外支援プロジェクトに参加し、インドネシアなどでも睡眠医療の普及に尽力している。『病気を治したければ「睡眠」を変えなさい』『睡眠専門医が考案した いびきを自分で治す方法』(ともにアスコム)など著作多数。

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