夜の快眠は朝つくられる 幸せホルモンと睡眠の幸福な関係

睡眠専門医の白濱龍太郎さんに聞く(中)

2021.04.23

 睡眠専門医で睡眠と呼吸の専門クリニック「RESM新横浜」の白濱龍太郎院長は、睡眠時間をまず決めてから一日のスケジュールを作っていく「睡眠ファースト」の生活を提唱されています。2回目の今回は、睡眠のメカニズムと熟睡するための方法をうかがいました。夜、熟睡を得るためには、朝が大事と強調されています。

寝起きに伸びをする女性

なにはともあれ日光を浴びよう

――うまく眠るための方法は、著書の「熟睡法ベスト101」(アスコム)でも食事、運動、入浴、香り、寝具などいろいろな方法を紹介されています。その中であえて一つ挙げていただくとしたら、何が重要ですか。

 この時間にはこうした方がいい、といろいろありますけど、まず、光です。朝、光をしっかり浴びましょう。そこはもう、ほんとに、なにはともあれやっていただきたい。午後ではなく午前中です。夜の熟睡は朝、作られると言ってもいい。太陽光を浴びると眠気が覚めることはご存じのかたも多いと思いますが、この朝の光は起きるだけではなく、夜の眠りに密接につながっているのです。

 睡眠にはホルモン、自律神経、深部体温が大きくかかわっています。
 このうちホルモンは、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンが時間をかけて睡眠ホルモンのメラトニンの原料になり、夜になるとメラトニンに変換されます。セロトニンの分泌は太陽光によって増加して、夜は減少します。朝、太陽光を浴びてセロトニンをしっかり分泌させることが、夜の眠りには必要なのです。

――朝から夜の睡眠を意識するということですね。

 朝のうちに光をしっかり浴びることで、体内時計が調整されます。眠りが乱れた人がいたとして、睡眠時間と朝起きる時間、どちらを優先するのかというと、朝起きる時間です。夜中の3時まで眠れなかったとしても、朝6時に起きる。無理やりにでも起きると、そこを軸として、だんだん夜12時くらいに眠気が出るようになってきます。朝をきちっと決めることがすごく大事です。

――時刻や日照時間は?

 時刻は7時だろうと8時だろうと大きな変化はありません。生活をきちっとリズミカルにするために、決められた時間を維持することが大事です。休日に関しては、そこから振れ幅は2時間以内にしてください。

 日照時間は、30分くらいは必要ですよね。その間ずっとベランダに出ておく必要はないですよ。基本的にはカーテンを開けた状態で、明るいリビングルームで生活をするので大丈夫です。

朝ごはんが大事 和食がおすすめ

――睡眠には朝ごはんも大事だと書かれています。

 そうです。睡眠に大きくかかわり、日中に分泌されるセロトニンの原料は、トリプトファンという栄養素です。これは、大豆に多く含まれています。ほかに糖質やビタミンB6もあると望ましいので、焼き鮭、みそ汁、納豆、白米といった和食は、良質な睡眠を取るために理想的な朝食です。トリプトファンはヨーグルトにも多く含まれています。ヨーグルトは腸内環境も整えてくれます。セロトニンはほとんど腸内で作られますので、ヨーグルトを食べることも良質な睡眠につながります。

睡眠前の光は安眠を妨げる

――逆に睡眠前の光は要注意とおっしゃっています。

 光は睡眠にとって、味方であり敵なんです。午前中は光を浴びることはウエルカムです。でも夕方、夜の時間帯には敵になります。睡眠ホルモンのメラトニンは、太陽光、もう少し詳しくいうと太陽光の中のブルーライトを浴びると分泌量が減少して、働きを落としてしまいます。現代は、ブルーライトを照射するパソコン、スマホ、テレビとの付き合いが長くなり、かつ、使用時間が夜間にずれてきている。それで眠りの力が弱くなってしまっていることがけっこうあるのです。寝る前になんとなくだらだらテレビを見たり、スマホでゲームをしたり、SNSをしたり、ニュースを見たり、なんであれ、ブルーライトを浴びることは安眠の妨げになります。これはやめてほしい。寝る前最低1時間は避けてほしいです。

 ――朝起きる方法について教えてください。「朝がゆううつ。最高の目覚めを経験してみたい」と悩んでいるかたは多いです。本の中では、爆音が鳴り響くようなアラームは避けたいと書いていらっしゃいます。

 なかなか起きられない10代のお子さんがいる親御さんからすると、音を鳴らさなかったら起きないよ、と思われるかもしれませんが、再三申し上げていますように、まず、光なんですよ。

 人間の覚醒のスイッチを押すのは、脳の中に入ってくる光なのです。ある時間帯になったら光を照らす目覚ましや、時間設定で自動的にカーテンを開けてくれる装置を売っています。光で起床時間の30分前から脳を覚醒させていって、音を鳴らす目覚まし時計ですっきり起きるというのが、朝起きるのが苦手な人にとっては効果的です。

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    白濱龍太郎 (著)
    出版社:アスコム

     1万人以上を治療した睡眠の専門医が、最新研究の情報と確かな知見から、科学的に正しい解決策を指南します。朝、昼、夜などの各シーンに合わせ、「やるべきこと」「やってはいけないこと」を具体的に解説。一般には知られていない意外な話、間違って逆効果の行動をしがちなことなど、選りすぐりの「101」の熟睡法を掲載しています。睡眠習慣を整えるための「睡眠ノート」の作り方も公開。

  • 白濱龍太郎
  • 白濱 龍太郎(しらはま・りゅうたろう)

    睡眠、呼吸器内科、在宅医療の専門クリニック「RESM新横浜」院長

    筑波大医学群医学類卒業。東京医科歯科大大学院統合呼吸器病学修了。東京共済病院、東京医科歯科大附属病院を経て2013年に「RESM新横浜」開設。日本睡眠学会認定施設として専門医療を提供している。経済産業省海外支援プロジェクトに参加し、インドネシアなどでも睡眠医療の普及に尽力している。『病気を治したければ「睡眠」を変えなさい』『睡眠専門医が考案した いびきを自分で治す方法』(ともにアスコム)など著作多数。

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