<連載> ワクチン接種Q&A

新型コロナの変異株 なぜ感染力が強い? ワクチンは効くの?

疑問・質問「コロナとワクチン」(1)ウイルス変異と感染力の関係、重症化の可能性は?

2021.04.16

 新型コロナウイルスの感染再拡大のペースがここにきて加速しています。背景にあるのが、変異株の急速な広がりです。なぜ変異株は、感染力が強いのでしょう。N501Y変異とはなにか。高齢者への優先接種が始まったワクチンの効果に、影響はあるのでしょうか。

懸念される変異株
世界保健機関(WHO)がまとめた新型コロナの「懸念される変異株」のリスト

懸念は「英国株」「南ア株」「ブラジル株」

Q1: 変異ウイルスには感染力の強いものがあるそうですが、具体的にどう感染力が強いのでしょうか? 感染者との濃厚接触の定義や予防法は変異ウイルスでは変わるのでしょうか?(70代前半、男性)

A1:  感染力が強まったり、重症化しやすくなったりした新型コロナウイルスを、世界保健機関(WHO)は「懸念される変異株」と位置付けています。4月13日時点では「英国株」「南ア株」「ブラジル株」の3種類。いずれも日本で感染例が確認され、感染再拡大の背景となっています。

 ウイルスの遺伝情報が変わる「変異」は、ウイルスが増殖する際、一定の頻度で起こります。多くの場合、変異が起きても、ヒトには影響がありません。しかし、まれに(1)ヒトへの感染力が増したり、(2)ヒトの体内での増殖能力が上がったり、(3)重症化率や死亡率を上げたり、(4)ワクチンの効果を下げたり、(5)1度感染した人に再感染したりする可能性のある変異が生じます。そうした変異を、世界保健機関(WHO)は「懸念される変異株(Variants of Concern; VOC)」と位置付けています。

懸念される変異株の表

 懸念される変異株は4月13日現在、3種類あります。英国で最初に見つかった「英国株」と、南アフリカで最初に見つかった「南ア株」、ブラジル・日本で最初に見つかった「ブラジル株」です。3種類とも日本でも感染が見つかっており、大阪や兵庫、東京などで、新規感染者に占める割合が上がっています。

 3種類とも、N501Yという変異があり、従来のウイルスより感染力が強いと考えられています。英国株は、英国内の疫学調査で、感染力が1.4~1.9倍高いと報告されています。南ア株は1.5倍程度と考えられています。ブラジル株はまだ明確にはわかっていませんが、日本の国立感染症研究所は、4月7日時点のリポートのなかで、ほかの株より1.4~2.2倍伝播しやすいという解析結果に言及しています。

ウイルス変異のイメージ

感染力の強さ、ヒトの細胞に入りやすいため?

Q2: これらの変異株は、なぜ感染力が高いのですか 

A2: いずれの変異株も、なぜ、感染力が高いのかはまだよくわかっていません。新型コロナウイルスは、ヒトに感染する際、まず最初にウイルス表面にある「スパイク(S)たんぱく質」がヒトの細胞に結合します。3種類の変異株は、いずれもこのSたんぱく質に共通した変異が起きています。N501Y変異などで、細胞実験では、ここに変異があると、ヒトの細胞により結合しやすくなるという報告があり、そのためにより効率よくヒトに感染する可能性があると考えられています。

 ただし、3種類の変異株は、この変異以外にも複数の変異が起きています。こうした複数の変異による複合的な影響で、感染力が増しているともみられています。

 同じ変異型のウイルスでも、感染する人の免疫力や体力によって感染や重症化のしやすさは変わってきます。感染する時期にロックダウンが実施されていたか、休校措置が取られていたか、といった具体的な感染対策によっても、感染のしやすさは影響を受けます。このためウイルスだけの感染力を見極めるのは難しいのが実情です。

 感染を防ぐ基本的な対策は、変異ウイルスも従来のウイルスも変わりません。3密を避ける、他の人と十分な距離を保てない公共の場ではマスクをする、手洗いをしっかりする、などです。感染力がより高い変異ウイルスが広がる恐れのある今、これまでの感染防止対策を、より徹底するのが、何よりの変異ウイルスへの対策になります。

Q3:今あるワクチンは、変異ウイルスに対しても効果があるのでしょうか?

A3:国内でいま、接種されているファイザー社・ビオンテック社のワクチンは、効果はほとんど変わらないと考えられています。

 ワクチンが効く仕組みについては、高齢者へのワクチン接種開始を前にまとめた連載「ワクチンを知ろう」の1回目、「そもそもワクチンとはなに? 新型コロナワクチンの一番の特徴は?」の中で詳しく紹介しています。また、ファイザー社以外のワクチンの、変異ウイルスへの効果については、連載4回目「ワクチンの効果どう測る? 新型コロナの発症予防「95%」とは?」の中で取り上げました。参考にしてください。

 新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説します。2回目は「ワクチンの副反応はなぜ起きるのか、国内の状況は?」です。

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  • 大岩 ゆり
  • 大岩 ゆり(おおいわ・ゆり)

    科学ジャーナリスト・翻訳家

    朝日新聞社科学医療部専門記者(医療担当)などとして医療と生命科学を中心に取材・執筆し、2020年4月からフリーランスに。同社在籍中には英オックスフォード大学客員研究員や京都大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師を兼任。主な著書に『新型コロナ制圧への道』、主な訳書にエリック・カンデル著『芸術・無意識・脳』(共訳)がある。

  • この連載について / ワクチン接種Q&A

    高齢者を対象にした新型コロナワクチンの優先接種が始まりました。感染・重症化予防の有効性は? 副反応・アナフィラキシーへの対処の仕方は? 今後のスケジュールは? 読者の疑問・質問に答えます。

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