あなたのおなか大丈夫? コロナ禍で増える「巣ごもり便秘」

「運動不足とストレス解消を」帝京平成大学教授・松井輝明さん

2021.04.26

 新型コロナウイルスの感染拡大から1年余りがたちました。感染力が強い変異株の広がりで、私たちの生活は新たなステージを迎えています。外出もままならず、多くの人が運動不足とストレスによる健康不調に悩んでいます。そんななか、心配された「巣ごもり便秘」に苦しむ人がますます多くなってきているといいます。消化器病専門医の帝京平成大学教授・松井輝明さんに、現状と対策を聞きました。

巣ごもりで心配的中

 内科の外来診療をしていて感じるのは、コロナの感染拡大以降、安定していた血圧や血糖値の上昇、肝機能の悪化など患者さんの病状が概して悪化しているということです。胆石の患者さんに久しぶりに外来でお会いしたら黄疸(おうだん)が出ていて驚きました。多くの人がコロナ禍で我慢の生活をおくっています。このままだと、病気の早期発見早期治療もままなりません。

便秘イメージ

 その中で、予想していた通り、以前にもまして「巣ごもり便秘」が増えています。診察していると、「おなかの具合が悪く下剤を処方してください」とよく言われます。薬に頼らず運動したり、ヨーグルトを食べたりするよう体質改善を薦めるのですが、今の時代つらさからすぐに解放されたいので「薬を処方して」と言われます。もともと便秘の症状があった人だけでなく、新たに便秘になる人が増えているのを実感しています。

 老廃物がうまく処理できなくなると、腸内環境が悪化します。肌トラブルや肥満につながりますし、不眠になったり、気が短くなったりイライラもします。がんや生活習慣病、認知症などのリスクも高まります。細菌やウイルスなど外敵と戦う「免疫力」の低下につながる可能性もあります。今後も新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、不要不急の外出を控えるよう求められるでしょう。状況はますます深刻です。

原因は運動不足とストレス

 巣ごもり便秘には様々な原因が考えられます。

 まずは運動不足です。コロナへの感染を防ぐために特に高齢者は外出を控えるあまり、ただでさえ歩かなくなってしまいます。コロナ禍であっても、人通りが少ない場所や時間を選んでウォーキングをするなどやり方はありますが、住んでいる場所などでそれも出来ない人もいるようです。

 運動量が減ると空腹感を得にくくなります。その結果、食が細くなり、便の量も減ってしまいます。便の量が減ると、便が腸内にとどまる時間が長くなり、腐敗が進み、アンモニア、硫化水素、スカトール、インドール等有害物質が増えます。またその間に水分が吸収されてしまい、ますます便が硬くなって出にくくなってしまいます。さらに、おなかが空かないので手軽に食べられるパンやお菓子類、インスタント食品が多くなり、炭水化物の摂取量が減ったり、あえて摂取を控えたりすると、善玉菌が必要としている食物繊維が減ってしまいます。

 外出できず、友人知人と会って話すこともできず、ストレスもたまります。いま、屋外でお酒を飲む人たちが問題になっていますが、ああした行動もストレスがなせる技です。ストレスが高じると交感神経が優位になり、腸の動きを鈍くしてしまいます。

 今は暖かくなりましたが、寒い時期は水分の摂取量が減るため、便がより硬くなりやすくなっていたのも便秘の人が増加した理由の一つだと考えられます。

帝京平成大学・松井輝明教授

 男性以上にホルモンの影響を受けやすい女性の場合は深刻です。とくに閉経後は腸の不調が慢性化しやすくなるので、注意が必要です。

食生活の改善がカギ

 改善策はいくつかあります。

 一つは運動量を増やすことです。外出に不安がある人は、家の中でできる運動を心がけましょう。家の中や庭で歩くのもいいし、マンションの階段の上り下り、踏み台昇降運動もいいです。ラジオ体操や腹筋運動、体をひねる運動も腸に刺激を与えるのでお薦めです。家事だけでも結構な運動量ですが、それにプラスする工夫をしてください。

 二つ目は、ストレスの発散です。腸は脳と密接に連携しながら体内の働きを調整していることが研究で分かっています。これを「脳腸相関」といい、脳に強いストレスがかかるとおなかの調子が悪くなり、おなかの調子が悪いと元気が出ないということがあります。趣味や体を動かすこと、携帯電話で会えない人と話すなどしてストレスをうまく発散してください。

 三つ目は食生活です。大腸の中には様々な菌がいます。通常はビフィズス菌などの善玉菌、悪玉菌、日和見菌が2:1:7の割合で存在するのが理想的です。健康な人は菌種も豊富で、バランスがとれています。しかし、食物繊維が不足したり、たんぱく質や脂肪を過剰に摂取したりすると、菌種が減ったり、善玉菌、悪玉菌のバランスが崩れたりして、腸の働きを鈍らせます。質量ともにバランスのとれた食事を心がけることが必要です。

 腸を活発に動かすためには「短鎖脂肪酸」が必要です。短鎖脂肪酸とは大腸内の善玉菌によって作られる酢酸や酪酸などのことです。食物繊維やオリゴ糖に、ビフィズス菌などが作用し発酵することで作られます。大腸内を適度な酸性に保ち、悪玉菌の増殖を抑えます。短鎖脂肪酸はエネルギーを生じ、大腸を活発に動かすためのガソリンのようなものです。腸を刺激して「ぜん動運動」を活発にすることから、便秘解消に効果があります。

 しかし、大腸内のビフィズス菌は加齢とともに減っていくことがわかっています。一方、発酵食品に含まれるビフィズス菌は長い時間腸にとどまることができません。できるだけ毎日とることが大切です。

生活のリズムが大切

 これからの季節は熱中症も心配ですし、何より便秘予防のためにも十分な水分をとることが必要です。在宅する時間が長くなるなかで、できるだけ普段の日常生活に近い様に起床時間や食生活、トイレに行くタイミングなど工夫して生活のリズムを大切にして、巣ごもり便秘を予防、解消してください。

(談)

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書籍「大腸活のすすめ~腸は自分で変えられる」

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     消化器病専門医として長年、大学病院で患者と向き合ってきた松井輝明さん(帝京平成大学教授)が、近年注目を集める「腸内フローラ」の基本的な情報や、全身の健康との密接な相関関係など最新研究をわかりやすく紹介。「2週間で腸は変えられる」と話す松井さんが考案した大腸を元気にする食事、運動のポイント「大腸活十カ条」も必見です。

  • 松井輝明
  • 松井 輝明(まつい・てるあき)

    帝京平成大学教授・医学博士

    日本大学医学部卒業。医学博士。日本大学板橋病院消化器外来医長、日本大学医学部准教授を経て現在、帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科 健康科学研究科 健康栄養学専攻長 教授。日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、消化器一般、機能性食品の臨床応用を専門に研究。著書に「大腸活のすすめ~腸は自分で変えられる」(朝日新聞出版)など。

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