<連載> ワクチン接種Q&A

新型コロナのワクチン、アレルギーあっても打てる? 花粉症や鼻炎は?

疑問・質問「コロナとワクチン」(3)国内でのアナフィラキシーの発生頻度は? 原因はなに?

2021.04.30

 新型コロナウイルスのワクチンで、接種直後に気をつけたいのが激しいアレルギー反応のアナフィラキシーです。国内ではいま、どんな頻度で起きているのでしょうか。過去にアレルギーを経験した人や、花粉症や鼻炎の人は、どんな注意が必要でしょうか。

アナフィラキシーの症状例
アナフィラキシーが疑われる症状例(埼玉県のパンフレットから)

アナフィラキシーの頻度は100万回中37件

Q1: 「食物でアナフィラキシーの起きた私は、ワクチンによるアナフィラキシーがとても心配です」(50代後半男性)、「医薬品で過去に何度も点滴が必要になる副作用があり、ワクチン接種が怖いです」(60代前半女性)

A1:  アナフィラキシーは激しいアレルギー反応です。じんましんや皮膚の腫れ、吐き気、息苦しさ、血圧低下、意識がもうろうとするといった複数の症状が出ます。国内の新型コロナウイルスのワクチン接種では、4月22日現在、100万回当たり37件の頻度でアナフィラキシーが発生しています。多くは接種後30分以内に症状が出始めます。過去にアナフィラキシーの体験がある人などは、接種後に会場で30分間、経過観察をすることになっています。会場にはアドレナリンなど治療薬が準備してあります。

 アナフィラキシーは、症状が出始めてからなるべく早く治療しないと命に危険の及ぶ反応ですが、すぐに対処すれば大事に至らずに回復します。これまでに新型コロナウイルスワクチン接種後のアナフィラキシーで亡くなった人はいません。

 国内では4月22日までに251万7045回の接種が行われ、アナフィラキシーの発生が疑われるとの報告が580件ありました。専門家が報告を検討した結果、15件はアナフィラキシーではないと分類され、471件は情報が不足していて判断できないとされ、残り94件がアナフィラキシーと認定されました。

 計算すると100万回当たり37件になります。米国では、994万回接種が終わった時点で100万回当たり4.7件、英国では1740万回接種が終わった時点で100万回当たり15.4件(アナフィラキシーに似た症状も含まれる)です。日本はまだ接種数が少ないため、もっと接種が進まないと、英米に比べてアナフィラキシーの発生頻度が高いかどうかは判断できません。

日本国内のアナフィラキシー報告状況
厚生労働省の検討部会資料をもとに作成

 アナフィラキシーがワクチンのどの成分に対して起こるのかはまだわかっていません。現在、国内で接種が行われているワクチンには、ポリエチレングリコール(PEG)が含まれており、厚生労働省は、過去にPEGに対して重いアレルギー反応を起こしたことがある人は接種しない方がいいとしています。

 PEGは、保湿剤として化粧品に使われているほか、薬などの添加物、ヘアケア商品などにも使われています。PEG以外のワクチンの成分は医薬品医療機器総合機構の新型コロナワクチン(コミナティ)の情報ページ(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/672212_631341DA1025_1_03#HDR_ContraIndications)に詳しく書いてあります。アレルギー反応が心配な方は、かかりつけ医やアレルギー専門医に事前に相談して下さい。

ワクチン成分以外のアレルギーなら接種は可能

Q2: 「花粉症や鼻炎があってもワクチンが打てますか?」(70代後半男性)

A2: 厚生労働省は、新型コロナウイルスの成分以外のものに対するアレルギーのある人や、花粉症や鼻炎、気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎のある人でも、接種は可能だとしています。

 ただし、米国では、アナフィラキシーの起きた人の80%はアレルギーの経験があり、とくに24%はアナフィラキシーの経験があったとされています。ですので、アレルギー反応を体験したことのある場合には、接種前に自分の体調や持病などについて記入する「予診票」に記入するだけでなく、会場で接種前に医療従事者に詳しく伝えて下さい。

 重いアレルギーの経験のある人は、接種後、一般の人より2倍長い、30分間、会場で体調を観察することになっています。心配な方は、事前に、かかりつけの医師やアレルギー専門医に相談して下さい。新型コロナワクチンの副反応やアナフィラキシーについては、連載「ワクチンを知ろう」の5回目「ワクチン副反応は2回目接種後が強め? アナフィラキシーの頻度は?」でも詳しく説明しています。参考にしてください。

 新型コロナウイルスやコロナワクチンに関するReライフ読者会議メンバーの疑問や質問に、新型コロナ関連の著書がある科学ジャーナリストの大岩ゆりさんが、専門家・研究者らに取材・解説します。次回は「ワクチン接種のメリットとデメリット」です。

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  • 大岩 ゆり
  • 大岩 ゆり(おおいわ・ゆり)

    科学医療ジャーナリスト・翻訳家

    朝日新聞社科学医療部専門記者(医療担当)などとして医療と生命科学を中心に取材・執筆し、2020年4月からフリーランスに。同社在籍中には英オックスフォード大学客員研究員や京都大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師を兼任。主な著書に『最後の砦となれ~新型コロナから災害医療へ』、主な訳書にエリック・カンデル著『芸術・無意識・脳』(共訳)がある。

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